5月号
出会いと学びの旅から Vol.17
コペンハーゲンの老人の町
コペンハーゲンでは「社会福祉施設巡り」という専用の定期観光バスが出ていましたが、それには乗らず、ホテルから近いところにある「老人の町」を歩いて訪ねました。広い構内を歩くと、正面の入り口からずっと奥の建物まで一直線の広い道が続き、両側にはいくつものベンチが点々と並んでいます。そしてそこには杖を小脇に抱え、黙々と押し黙って陽春の木漏れ日に浸っている多くの老人たちの姿がありました。広い道の真ん中を歩いていると、左右両側のベンチの老人たちの視線がじっと私に注がれるのを感じました。東洋人が歩いているのに何気なく視線を向けたのでしょう。ここの老人たちは朝起きると夜寝るまで特に何もすることもなく、天気が良ければ外に出て時間を潰しているようでした。アメリカの施設を訪れたとき、一人の老人が「人間何もすることがないほど苦痛なことはない。毎朝目が覚めるたびに、今日一日をどうして潰そうかと毎朝床の中で考える。だから朝になるのがとても嫌だった。」と話していました。NHKの番組「世界の家族」というシリーズの中の一編でこのコペンハーゲンの老人の町を紹介していました。この番組でふたりの老人夫婦の生活を描いていましたが、同じ部屋に生活していながら夫婦の間には一日中交わす会話はほとんどありません。毎日の行事のように部屋の窓の下には運ばれていく仲間の老人の棺をこの夫婦はカーテンの影からじっと見つめます。それは演出でも芝居でもなく、私が見た老人の姿でした。年金や社会保障の充実で生活は保障されてはいますが、一日中何もすることがないという空虚感はどうしたらいいのでしょうか。慣れてしまえばそれまで、というものの、割り切れないものを感じました。ヨーロッパでもアメリカでも老人だけのコミュニティが次々と建設されていましたが、こうした老人だけの生活集団にはいろんな批判や意見もあるようです。この町を訪れて、老いるということ、生きがいということなどいろいろ考えさせられました。
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