5月号

美しきかな ひょうごの文化財 | 優れた造形美で「白鳳文化の傑作」 |
第五回 刀田山鶴林寺
銅造聖観音立像(どうぞうしょうかんのんりゅうぞう)
鶴林寺の起源は585年、播磨の地に身を寄せていた高麗僧・恵便のために聖徳太子が造り、教えを受けた「木の丸殿」とされる。その後、天永3年(1112)、鳥羽天皇の勅願所として刀田山「鶴林寺」の扁額を下賜された。この年に建てられた「太子堂」、応永4年(1397)に建てられた「本堂」は、いずれも昭和27年(1952)、国宝に指定されている。
建築物、絵画、彫刻など多くの重要文化財を有し、中でも1300年ほど前に作られたとされる高さ約83センチのブロンズ像「銅造聖観音立像(どうぞうしょうかんのんりゅうぞう)」は「白鳳文化の傑作」。人々を救うため33の姿に変身する観音菩薩の中で本来の姿である聖観音の像は数多く存在するが、これほどの優れた造形美は他に類を見ず、国宝級の美術品といっても過言ではないだろう。当時の技術とは思えないほど滑らかで、天衣は流れるように、冠には花弁の装飾をあしらい繊細に表現されている。ドイツ、アメリカ、ベルギーをはじめ海外からの評価も高い。
この像は、金の装飾とメッキが施され、かつて全身が金色に輝いていた。伝説によると、「純金にちがいない」と盗み出し、火にかけた泥棒がいた。一向に熔けないことに腹を立て、金槌で聖観音像の腰を叩くと「あいたた!」と声を発した。驚いた泥棒は犯した罪業を悟り、聖観音像を寺に返して謝った。それ以来「あいたた観音さま」と呼ばれ、叩かれて曲がった腰は元には戻らず、少し腰をひねって立っておられる。その姿が図らずも独特の曲線美を生み出している。

高さ約83センチのブロンズ像「聖観音立像」。滑らかな表面に繊細な装飾が施されている。少し左に腰をひねった立ち姿が特徴的で「あいたた観音さま」と呼ばれ親しまれている
刀田山鶴林寺
加古川市加古川町北在家424
TEL.079‐454‐7053
入山料 500円
宝物館拝観料 500円
拝観時間 9:00~17:00(入山16:30まで)