7月号

HYOGO×TDRI(台湾デザイン研究院) | ひょうご国×台湾
新しい価値の創造
公益財団法人神戸ファッション協会と財団法人台湾デザイン研究院(TDRI)の連携プロジェクトが始まったのは2024年。兵庫県が誇る産業や技術、素材の多様性を、台湾(海外)の新たな視点や技術と融合させ、新しい価値創造に繋げていくことが目的。台湾と日本のデザイン交流をさらに深めることにも期待が寄せられる。まずは同年8月に台湾のクリエーターが丹波焼、淡路瓦、淡路の線香、神戸レザー、豊岡鞄など兵庫の産地や職人を訪ね、その普遍的な価値と新しい可能性を探ることからスタート。伝統の技を目にすることで得たインスピレーションをもとに、各産地の職人たちと意見を交換しながら、共創プロジェクトを進めていった。実際のモノづくりではフレッシュな発想を持つ国立台湾師範大学の大学生も参加。さらに台湾の製造業が盛んな「彰化」とも連携。約半年の期間を経て、彰化産の素材や技術と兵庫の工芸を融合させた作品が誕生した。
完成作品は、4月26日から4月30日、大阪・関西万博会場内のギャラリーWESTで展示。万博がめざす「未来への文化共創」の一環として、「HYOGO×TDRIものづくりとデザインの融合―暮らしを彩る、兵庫と台湾彰化の共創」をテーマに、コラボレーション作品を披露した。淡路瓦工房「タツミ」と共創した台湾の工業デザイナー周育潤さんと国立台湾師範大学の学生達も来場。「コンクリートマンションが増え、瓦を持つ家が少なくなった今、伝統的な家屋の屋根の役割を現代の暮らしに取り入れることで、”家“とのつながりを再解釈した」と作品への想いを熱く語った。また豊岡鞄専門企業「モリタ」とコラボレーションした台湾のクラフトユニット本質創作室の李雅靖さんは「自分でも使いたい」と完成したバッグを手にとりながら、展示作品としてではなく、実用化への自信を見せた。作品の一部は8月に台北市で実施される「2025台湾文化博覧会(台湾クリエイティブエキスポ)」に参加し、バイヤーにアピール。販売ルートの構築を図るほか、10月に彰化県内で開催される「2025台湾設計展(台湾デザインエキスポ)」にも出品。世界への発信を推進していく。

2024年8月、TDRIのクリエーターが来日。兵庫の産地を巡るツアーを実施

丹波焼の「伝市窯」で土の特性を観察

「タツミ」で淡路瓦の作業を見学

豊岡鞄の「モリタ」で鞄の取っ手の質の高さを実感

大阪・関西万博会場「ギャラリーWEST」で6人のクリエーターによるコラボ作品8点を展示

周育潤さんと国立台湾師範大学学生の文唯聿さん、郭玟慧さん

台湾のキュレーション企業「未來式」の汪麗琴さんと神戸の革工房「KIICHI」の片山喜市郎さん

「本質創作室」の李雅靖さん
About TDRI
2004年に設立された台湾デザインセンターを前身とするTDRI。2020年に政府系デザイン振興機構に昇格して多くの国家的プロジェクトに参画。海外各地との連携にも積極的に取り組んでいる。
About 彰化
彰化は台湾の都市の名前。台中の西南に位置し、東に八卦山、西に鹿港と面する。兵庫同様、港町として栄えた彰化は製造業が根付く地域。またどちらも農業との結びつきが深いなど共通点が多い。