7月号

美しきかな ひょうごの文化財 | 煌びやかに輝く、八角三層の建物 |
第七回 移情閣 (孫文記念館)
大正4年(1915)、神戸の実業家・呉錦堂の別荘「松海別荘」に付設して「移情閣」が建てられた。内側は木製の軸組み、外側には当時手掛けていたセメント業を象徴するコンクリートブロックを用いた八角三層の建物。4094個の構造ブロックと窓上飾りや蛇腹など924個の化粧ブロック、計5018個で外壁が構成され、中国風の内部は各階とも床は板張り、壁面下部は腰板張り、1階天井に龍、2階天井に鳳凰の装飾が施されている。
明石海峡大橋架橋に伴い平成6年(1994)に開始された移築解体工事では幾つかの新たな発見があった。その一つ、カーテンボックスの裏から発見された古い壁紙は、江戸時代に欧州から伝わり、明治から大正にかけて一世を風靡し鹿鳴館や国会議事堂でも使われた「金唐紙」と判明。当時の技法を用いて忠実に再現され、各階の壁面上部を煌びやかに飾っている。1階、2階の暖炉の花柄タイルはイギリスで修復作業が行われた。開始から6年、舞子公園内で復原が完成し、建築史上貴重な木骨コンクリートブロック造の建物として平成13年(2001)11月、国の重要文化財に指定された。
孫文の支援者であった呉錦堂は大正2年(1913)の孫文来神時に松海別荘に招き、華僑や各界の有力者たちと共に歓談した。移情閣は昭和58年(1983)、管理する神戸華僑総会から兵庫県に寄贈され、翌年「孫中山記念館」開館。平成17年(2005)に「孫文記念館」と改称され、明石海峡と大橋を借景に近代の日中関係と大正ロマンに思いを馳せる場として現在に至っている。

外壁には5018個のコンクリートブロックが使われている

本来の製法で忠実に再現された「金唐紙」

八角の建物だが、一見、六角に見えることから
「舞子の六角堂」と呼ばれ市民に親しまれている
移情閣(孫文記念館)
神戸市垂水区東舞子町2051 舞子公園内
TEL.078‐783‐7172
開館10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日 月曜(祝日の場合は翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料 大人300円 高校生以下無料