12月号
Movie and CARS|ルノー・エスパス
『パリタクシー』 フランス 2022年
登場車両:ルノー・エスパス
RENAULT ESPACE
文・株式会社マースト 代表取締役社長 湊 善行
シャルル46歳(ダニー・ブーン)はパリでタクシーの運転手をしている。1日に12時間の勤務、休みは週に1日だけ、年間12万キロを走る。タクシー(ルノー・エスパス)のリース代や燃料代などの経費は自己負担、借金の返済もままならない。免停寸前のシャルル、免停にでもなろうものなら家族(妻と娘)に会わせる顔がない。そんな彼にパリを横断する長距離の依頼が舞いこむ。依頼人はマドレーヌ92歳(マンドリン・ケラー)、住み慣れた家を離れて特別養護施設に向かうためにタクシーを呼んだのだ。仕事では不愛想なシャルルだが、マドレーヌの思い出話に耳を傾け、話し相手になることで次第に二人は打ち解けていく。マドレーヌが92年もの人生を過ごしてきたパリ、シャルルは思い出の地への寄り道を快く引き受けてタクシーを走らせる。過去の話を聞きながら、素敵な思い出の地を巡り、セーヌ川の橋の上で語り合い、ベンチで休んでアイスクリームを食べながら、徐々に笑顔を見せ始めるシャルル。パリの名所の美しさと運転席目線の映像、寛ぐ二人とパリの風景から空気が伝わってくる。夕暮れが迫り楽しい二人のドライブはもうすぐ終わる。施設から到着が遅いとクレームの電話が入るのだが、「急いで行きます」と言いながらも、シャルルは美味しいディナーをマドレーヌに提案し、二人はゆっくりと食事と会話を楽しんだ。短い時間であったがシャルルはマドレーヌから人生で大切なことを教えてもらった。1日中一緒に過ごした二人、互いに隠すことなく伝えあい、励まし、人生の機微を話しあった。シャルルは、たった一人で施設に向かうマドレーヌが可哀そうでもあり愛おしく思い、施設の前で別れを惜しむのだった。施設に送り届けたシャルルは、ドア越しに「また会いに来るから」と伝えた。1週間後、シャルルは妻と施設を尋ねるが、なんとマドレーヌは前日に心臓発作で亡くなっていた。マドレーヌが1週間過ごした部屋で泣き崩れるシャルル。素敵なドライブを思い出しながら涙が止まらなかった。後日、シャルルは妻と娘を連れてマドレーヌの墓地に出掛けた。帰りに公証人からマドレーヌからシャルル宛の手紙を受け取る。「素敵なドライブだったわ。あなたは今の世界から飛び出すことが必要よ。必ず家族3人でね!そして好きなカメラも忘れずに。シャルル、ありがとう。」手紙を読みながら泣き崩れるシャルルと家族。最後に「住み慣れた古屋を売ったら少しお金が入ったの、私には不要だけど、あなたには必要よ!」封筒の中に101万ユーロ(日本円で1億6,000万円)の小切手が入っていた。感動のラストシーン、笑いと涙、パリの美しい街並みをドライブする気分で楽しめる。それに素敵な大人のドラマ付きの91分。