1月号
キーワードは「スロー&ファスト」
株式会社中田工務店 常務取締役
神戸芸術工科大学 非常勤講師
中田 義成 さん
休暇はゆっくりと休み、働くときはスピード感をもって働ける「スロー」&「ファスト」ライフが実現できる街が神戸だと中田義成さんは話す。
開港の頃、神戸は海が近く、船でやって来てすぐ住める街でした。当時の建築の多くは今も現存するコロニアルスタイルです。コロニアルとは「植民地の」という意味で、例えばインドなどにもみられ、日本では神戸のほか長崎や横浜にもありました。日当たりの良い南斜面に家を建て、南側に窓とバルコニーを配した建築で、植民地でよく見かける様式なんです。外国人たちが南斜面に居座って生活を楽しんでいたわけです。
しかし、そこでのんびりしていたかというと、そうじゃなかったと思うんですよね。彼らは北野などに住んで居留地で働く「職住近接」でしたので、すぐ働きに行ける。そしてすぐ船に乗って出かけられる。どんなに良いところでも、このような生活は内陸では成立しないんですよ。すぐ仕事に行けて、そしてゆったり過ごせるのが神戸だったのですね。
昨今、環境負荷が少なく、精神的にのんびりしたスローライフが唱えられていますが、「時間たっぷり」の生活ではありません。「忙中閑あり」で、暇な状況にある人は暇であることに気付きにくいと思います。忙しい人だからこそ、ゆっくり過ごす時間が不可欠なのです。スローに過ごすためには時間が必要です。そのためにはファストに動ける効率の良さが必要です。神戸には空港も新幹線もあって交通至便ですし、美術館や音楽ホール、フィットネスジムなどの施設もあるし、医療機関も多い。それがコンパクトにまとまっているんですね。文化度も高いですし。横浜も便利ですが、人が多過ぎてストレスがあります。その点、神戸は適度な規模です。
スローを楽しむという面でも、神戸は非常に恵まれています。北に行けばカニが、南に行けばタコが美味しいですし(笑)。淡路島や篠山、城崎など味わい深い街へもすぐ行けます。海水浴もスキーも日帰りで行けるし、ミュージアムや映画館など都会的な楽しみもあります。ちょっと郊外に行けば農業体験なども楽しめるし、気軽に登れる山もあるし、アクティビティのメニューが多いのです。
神戸を離れると、その良さがわかります。実際に神戸に滞在した時には、これ以上望むものはないと感じますね。