2016年
1月号
北野にある小泉さんのオフィス。奥はシェアオフィスになっていて、クリエイターや建築家などが集っている。

神戸移住のススメ

カテゴリ:住環境, 神戸

蔦のからまる白い建物、古い外国人向けアパートメント、眺めの良い坂の上の一軒家…。
独自の視点で面白さのある物件情報を紹介する「Real Kobe Estate/神戸R不動産」を運営する小泉さんは、さまざまな土地、住まいに移り住んだ後、神戸に住むこと、神戸で働くことを選択しました。

神戸外から移り住んでもらおう

 関西の大学を卒業後、カリフォルニア大学で都市計画の修士号を取得した小泉さんは、帰国後、森ビルに就職、東京や大阪で不動産開発の仕事に従事した。その間、プライベートでは約10年間で25回の引っ越しを重ねたという。「もっとおもしろい場所があるんじゃないか」と、暮らし方に刺激を求めていた。「様々な場をつくる仕事の傍らで、自分が実験台になっていた」、そんな20代を過ごした。
 リーマンショック後に退職し、独立を考えた小泉さんは、東京またはシンガポールへの移住を計画したことも。しかし「今はそういう時代ではない」と感じたという。「東日本大震災もあって、人の価値観はここ数年で大きく変わりました。人は経済成長ではなく、幸福感を求める時代になってきたと思います」と、小泉さん。
 その頃、現在の奥さんと出会い、奥さんが好きな神戸、自分自身も昔から気になっていた神戸に移住しようと考える。同時に、仕事も神戸でやろうと決意。「外から人が来てくれなければ街は廃れてしまう。さまざまな場所で暮らした経験のある自分が、神戸に移り住んでもらえるような事業を立ち上げたい」―と。

暮らしやすい場所へ

 神戸では、「眺めの良い場所に住みたい」と希望し、北野の坂の上にあるマンションに家族とともに移り住んだ。外国人が多く住むマンションで、オーナーや地域のコミュニティの受け入れも寛容で、とても居心地が良かった。「オープンマインドなところは、ロスのマンションを思い出しました」。
 小泉さんは神戸の住みやすさの理由のひとつに、気候の良さも挙げる。「神戸は晴天の日が多いといわれますし、山に反射して太陽の光が明るい。気候はお金では買えないものですから、とても大切です」。20代の刺激を求めて住まいを転々とした頃とは真逆の生活。家族と自分が暮らしやすい場所を求めて、神戸に行き着いた。

新しい視点で不動産を紹介する「神戸R不動産」

 神戸では次々に新しいマンションが建ち、完売も相次いでいる。しかしその一方で、住み手がいなくなってしまった空き家や、古い空きビルが増えているのも事実。
 もともと、古くおもむきのある住まいや、駅から少し遠くても眺めの良い家などが好きな小泉さんは「多少古かったりしても本当に住みたい物件を探している人はきっとたくさんいるはず」と、「Real Kobe Estate/R不動産」という事業を立ち上げた。「東京R不動産」提携のもと、新しい視点で不動産を発見し、紹介していくサイトを運営する。
 手がける物件は、小泉さんとスタッフが探す。基準は“グッと胸に迫るシズル感のある物件”。立ち上げた当初は、事務所から歩いて探せる範囲の物権に限って扱っていたが、現在では兵庫県内全域に広がる。
 坂の上の印象的な建物、緑に囲まれた一軒家、素朴なマンションなど、見出された物件には『アイビーハウス』『森の隠れ家』『歌敷山ノスタルジー』など、担当者によって魅力的なタイトルがつけられ、さらなる住まいのストーリーが生まれる。

「北野ORGANIC FOOD ARTISAN DISTRICT PROJECT」

 最近では、食に携わる人々を北野エリアに集める計画を立てている小泉さん。ここ数年、ブランディングコンサルタントや建築家といった人々が神戸、北野に移住・移転し、ビジネスの拠点としている例が多いことから、特に「食」に関するビジネスを展開する人々を北野に誘致しようという計画だ。店舗展開などを考える食の企業家と、農家、デザイナー、写真家、イラストレーターなどの異業種が交流し、近くに集まることで、何かが生まれ、それが「生活と仕事が一体化した」より豊かな生活につながっていくのではないかと小泉さんは考える。
 小泉さんの事務所も北野の一角にある。仕事を通じて知り合った神戸の農家が、新鮮な野菜を週3回ほど届けてくれる。事務所では異業種が集ってパーティーをしたり。生活と仕事が交じり合った空間がある。

北野にある小泉さんのオフィス。奥はシェアオフィスになっていて、クリエイターや建築家などが集っている。


ポップなキッチン


過去の住人による内装も楽しい


明るい光が射し込む


共有部分


アパートメント外観


『坂の上からパノラマ』灘区/窓から神戸市街地が大パノラマに


周辺は六甲山に近い自然豊かな地域


北野町の物件からの眺め。住宅街の背後に山が迫り、駅から徒歩数分ながら空気が良く、緑が豊かなのが、山手の住宅地の特色。


『アイビーハウス』灘区/アトリエとして建てられた建物には蔦がからまる


リビングとホール


この物件に関わるうちに自分が気に入ってしまったスタッフが移り住んでしまった、魅惑の建物




『あこがれの平屋生活』東灘区/庭つき一軒家の物件


『望海団地』からのこの眺め!


かなり急な坂を上って行き着く


『望海団地』垂水区の物件/その名の通り海を一望するマンション


「物件の隠れた魅力を掘りおこす」神戸R不動産のサイトを運営


北野にある小泉さんのオフィス


オフィスでくつろぐ


農家から届けられる新鮮な作物


「山と閑静な仕事場と食を大事にする事業者のための移住・移転検討ペーパー」



小泉寛明 Hiroaki Koizumi
<有限会社Lusie代表取締役>

1973年兵庫県生まれ。関西学院大学経済学部卒。
カリフォルニア大学アーバイン校ソーシャルエコロジー学部都市計画修士号。
1999年森ビル株式会社に入社、六本木ヒルズの立ち上げ業務に従事。
2010年神戸にてLusie Inc.の代表取締役に就任。

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

  • 電気で駆けぬける、クーペ・スタイルのSUW|Kobe BMW
  • フランク・ロイド・ライトの建築思想を現代の住まいに|ORGANIC HOUSE
〈2016年1月号〉
<特集>神戸に住んでみませんか?
神戸移住のススメ
都市の規模を追い求めるのではなく神戸ブランドにどう磨きをかけるか
温暖でおだやかな神戸の気候
キーワードは「スロー&ファスト」
心の中に祖国を抱きつつ、世界に目を向けよう [神戸ってこんなところ ①]
ママになっても「神戸エレガンス」 [神戸ってこんなところ ②]
神戸の食を通じて、神戸の魅力を世界に発信!
ポートランドから学ぶ、街の将来ビジョン
家族のために神戸へ そして新たな繋がりが
三宮から車で30分で、こんなにも自然豊かな淡河
大人になってもいろいろなことに挑戦できる田舎暮らし
「行ってみたい!」と思ってもらえる街・神戸のために [神戸ってこんなところ ③]…
企業経営をデザインする(4)|〝住〟で比類なきメイド・イン・神戸ブランド
昔も今も変わらない、風格ある街並み「山芦屋」
前衛芸術を育んだ芦屋の気風
山芦屋は「建築博物館」の様相を呈した
谷崎潤一郎が愛した老舗
芦屋川沿いのお店を訪ねて
連載コラム「第二のプレイボール」|Vol.11「スタープレイヤーが心技体をアドバ…
Report KOBE|向山毅さん「ハンガリー国騎士十字勲章」を受章
Power of music(音楽の力) 第1回
The Rotary Club of Kobe West 国際ロータリー第268…
風さやか「絆の風」 2016年も愛と夢の架け橋に
神戸のカクシボタン 第二十五回「小さなお友達と迎える新年」
草葉達也の神戸物語
神戸鉄人伝 第73回 詩人・エッセイスト・美術家 三浦 照子(みうら てるこ)さ…
兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第二十三回
触媒のうた(59) ―宮崎修二朗翁の話をもとに―
素材の鮮度と手作りにこだわった中国料理|神戸壺中天(こちゅうてん)