2017年
6月号
ヨットのダイニングを意識した店内

神戸のカクシボタン 第四十二回 楽園もとめて街道をゆく

カテゴリ:グルメ, 神戸

 自宅のある大阪と仕事場がある神戸を行き来する毎日。そんな私にとって中間に位置する甲子園口は互いの文化が交錯する居心地の良い場所と言える。JR甲子園口駅から徒歩10分の場所に京阪神の食通が足を運ぶお店がある。1991年に上甲子園で創業した「ル・パラディ」は、老舗のワインバーである。店名は、読んで字のごとく「楽園」を意味し、2001年に現在の場所へ移転した。閑静な住宅街にひっそりと佇む店舗。扉を開け趣ある階段を上がるとヨットのダイニングを意識した独創的な景色が広がる。
 カウンター越しで接客するのは三代目店主である前田次郎さん。お笑いタレントをしていた実績からか立ち姿と何気ない気遣いが心地よい。芸能界を引退後は、北新地で料理修業を開始。ホテルの店舗で料理人として実績も積んだ。傍らチーズプロフェッショナル、シニアソムリエの資格を取得。2015年に常連として通った「ル・パラディ」を引き継ぎ店主となった。
 従来からある名物メニューのカツサンドは、すき焼きに使用する高級黒毛和牛をミルフィーユ状に重ね揚げ柔らかくジューシーな味が堪能できる。前田さん考案の付き出し「一輪のチーズ」は、バラが模してあり目と舌を楽しませてくれる。代を重ね進化する温故知新の隠れ家。今日も多くの客が楽園を目指し、足早に夜道を歩く。

定番メニューがカウンターで競演


ヨットのダイニングを意識した店内


三代目店主の前田次郎さん


■ル・パラディ

西宮市甲子園口4-19-12 Tel.0798-64-1822

■岡力(おか りき)コラムニスト

ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)

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〈2017年6月号〉
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