2017年
6月号
スクールモットーは「Mastery for Service」。 「人間教育に力を入れたい」と安田部長

対談/進化する名門私立中学校 第7回 関西学院中学部

カテゴリ:教育・スポーツ, 西宮・宝塚

世界に目を向け、身近な人も大切にできる人間性を育む

関西学院中学部 部長
安田 栄三

日能研関西本部 代表
小松原 健裕

名門私立中学校に多くの塾生を合格させている日能研関西代表の小松原健裕さんと関西名門校校長の対談。
第7回目は、関西学院中学部 部長の安田 栄三さんにご登場いただきました。

創設者ランバス先生は関西学院の誇り

小松原 広い敷地に緑も多く、大学生がすぐそばにいるので将来をイメージしやすい環境ですね。
安田 先輩からクラブ活動や勉学で刺激を受け、あんなふうになりたいと憧れ、関西学院が好きになってくれるのでしょうか。約9割の生徒が関西学院大に進学します。約1割は、医学、薬学、建築などの学部に進むために他の大学に進学します。
小松原 神戸発祥のミッションスクールのひとつですが、創立の経緯は。
安田 創立者で宣教師のウォルター・ラッセル・ランバスは上海で生まれ、祖国アメリカで医学と神学を極めました。1886年、日本へやって来て、89年、原田の森に木造2階建て校舎1棟を建造し、関西学院と名付けました。ランバス先生はじめ総勢5人の先生と、19人の生徒でのスタートだったそうです。キリスト教精神に基づき、ひとつの学問に特化することなく全人教育を目指す熱い思いをもっておられました。
 日本に4年ほど滞在し数々の教会や学校の創立に関わった後、世界各国で伝道活動を続け、特にアフリカで医療伝道に情熱を傾けられました。ランバス先生は、私たち教員、学生、生徒たち、関西学院の誇りです。

三日月から満月へと近づき太陽の光を受けて自ら輝く

小松原 「KWANSEI」と表記することは印象的ですが、創立当初からですか。校章の三日月にはどういう意味があるのですか。
安田 当時の革新的な気風に合わせて漢音読みで、「クワンセイ」としたそうです。三日月は創立から5年後、教員のアイデア「K.G.」と学生のアイデア「新月」(弦月・三日月)を合わせて校章に取り入れたそうです。太陽の光を受けて月が輝くように、神様の輝きを受けて自ら輝き続けるという自覚と、三日月が満月に近づいていくように鍛錬しなくてはいけない、という意味があります。
小松原 スクールモットーとしている「Mastery for Service」の意味は。
安田 第4代院長のベーツ先生が学生に提唱した言葉で、訳すと「奉仕のための練達」。隣人、社会、世界に仕えるために自らを鍛えるという意味で、小中高大共通のスクールモットーになっています。
小松原 ヴォーリズ設計の素晴らしい校舎は、生徒たちが本物に触れる機会になっていますね。
安田 ベーツ院長と時期を同じくして、ヴォーリズさんも日本に来られました。伝道活動と共に、たくさん造られた建物の代表的なひとつが関学です。赤い瓦屋根、クリーム色の壁、キリスト教の教えを表すミッションスタイルは関西学院の誇りで、それ以後の新しい建物でも崩すことなく守っています。

男女共学になっても教育方針や内容は変わらず

小松原 関西学院中学部が2012年、共学に至った理由は。
安田 新設された初等部を卒業した女子を中学部が受け入れることになり、校舎や体育館を新設し、クラス数も4から6に増やしました。現在、女子生徒は全体の3割程度です。落ち着いてしっかり勉強する女子、クラス委員や生徒会、英語の弁論大会にも積極的に参加する女子の様子に男子も刺激を受けているようです。男女が尊重し合い生活することには学校内でも大きな意味があり、共学になって良かったと思っています。
小松原 伝統的に男子校というイメージが強かったので、関西学院らしさが維持できるのかなという心配は個人的にちょっとありました。例えば、私の母校甲陽学院中学との伝統の甲関戦はどうなる?無人島キャンプに女子も行けるのかな?等々(笑)。
安田 甲関戦は「もう無理かな」と思ったのですが、甲陽さんから「70年以上の伝統を絶やすわけにはいきません!」と言っていただき感激しました。キャンプについても心配の声もあったのですが、行ってみると女子も勢いあって元気で、へこたれない(笑)。いろいろな場面で関西学院が今までやってきたプログラムを女子が入ったからと緩めることはしていませんが、全く違和感はありませんね。
小松原 そうですね。ずっと関西学院がやってこられたことを共学になったからといって変えたり、やめたりしなかったことが保護者にとっては良かったのでしょうね。男子からの人気も相変わらず高いです。関西学院中高出身のお父さん方が、娘も同じように中高時代を関西学院で過ごさせたいという希望をもっておられるようです。
安田 娘さんをもつ卒業生には喜んでいただきました(笑)。関西学院は男子校でもバンカライメージではなく、しなやかに逞しくというのがモットーですから、すんなり女子も馴染めたのではないかと思います。

社会に出ても生涯役立つ学びの姿勢を身に付ける

小松原 関西学院中学部の基本的な教育方針は。
安田 本校は受験校ではありませんので、社会に出て通用する人材を育てることを目指しています。まずキリスト教精神に基づき、中学部では何があっても毎日20分間の礼拝を欠かすことはなく、週1回は聖書の時間をとります。大きな特徴は読書の授業です。聖書の言葉「真理はあなたたちを自由にする」に沿って、社会に出てから役に立つ学び方「問う・調べる・伝える」を身に付ける時間です。中学の図書館だけでも約6万冊の蔵書があり、生徒たちからの要望にもすぐに応えるようにしています。総仕上げとして、3年生11月の長崎を中心とする修学旅行をテーマにして、1万字超のレポートを提出します。長崎では被爆者の方と街を巡りながらお話を聞きます。生徒たちは真剣に耳を傾け、被爆者の思いを受け継げる人間になってほしいという思いをしっかり受け止めてくれています。3年生の終わり、一人ひとりがレポートの内容をプレゼンテーションします。プレゼン力はこれからの社会でなくてはならないものだと考えています。
小松原 今の子どもたちは何でもインターネットで調べて終わりにする傾向があります。本で調べたり、書物を真剣に読んでまとめたりする力を中学生で身に付けておくことは大切だと思います。そして関西学院といえば、生きた英語教育ですね。
安田 週6時間を英語の授業に充て、ネイティブ教員3名と日本人教員とがチームを組み、受験勉強にとどまらず、使える英語が身に付くように工夫をしています。

どんなことにも真面目に、こつこつと取り組む関学生

小松原 心身とも鍛える教育を実践されている印象があります。特に無人島キャンプが有名ですね。
安田 週4日、7時間目を設け、15分間走ります。教員も言うだけではダメですから一緒です(笑)。無人島キャンプは、関西学院が岡山県の沖に所有する青島で、2年生夏休みに4泊5日で行います。4~5人のグループに大学生のリーダーが付き、寝食を共にします。プログラムのひとつに1キロの遠泳がありますが、学校の温水プールで練習しますのでほとんどの生徒が完泳し、大きな自信を付けています。もちろん教員も指導、支援します。暑い中、子どもたちが一生懸命に頑張る姿を見ることが教員やリーダーのやりがいになっています。
小松原 無人島キャンプなんて個人ではできないし、学校単位でも安全を考えるとなかなか踏み出せません。それをできるのが関西学院ですね。クラブ活動はどうですか。
安田 コーチとして大学生が来て顧問と相談しながら指導してくれています。本校の入試は学力だけで評価しますから、きちんと勉強してきた素直な子どもたちが入ってきます。素直な子どもたちは指導者と環境が整えば、スポーツも文化活動もどんどん伸びます。野球部は昨年県大会優勝、サッカー部は近畿大会へ、水泳は全国大会へ進出しています。
小松原 確かに、きちんと勉強できる子は、受験だけでなくどんなことにも真面目に取り組みますね。関西学院中学の入試は、文章をしっかり理解する力、正確な計算力、身近なものに関する知識が要求されます。小学生には難しいですが、こつこつ真面目に勉強すれば、点数が取れる問題を出していただいていると思います。
安田 あまりひねった問題は出しません。長い文章を誠実に読もうとする態度は、他人に対する態度と同じだと思っています。
小松原 どんな大人になって社会に出て行ってほしいですか。
安田 学院全体が世界に通用する人材を育てるという目標をもっています。もちろんそれも大切ですが、中学生には「隣に座っている子を大切にできずに、世界など語れない」といつも話しています。他人の痛みが分かる、他人のための泥をかぶれる、社会で必要なのはそんな人間性です。世界を視野に入れながら、身近な人を大切にする大人に育ってほしいと思っています。
小松原 目標を掲げるだけでなく、具体的に活動し続けているのが関西学院の魅力。変わらない姿勢が人気の理由だと思います。
安田 ありがとうございます。今後も関西学院中学部は、ぶれることなくしっかりと人間を育てる学舎であり続けます。

スクールモットーは「Mastery for Service」。
「人間教育に力を入れたい」と安田部長


学院創立者・W.R. ランバス


第4代院長・C.J.L.ベーツ


2012年から共学に。クラスも4クラスから6クラスとなった


キリスト教を基盤とした人格形成を実践


50年以上続く中学部伝統の授業「読書科」


泥んこになってボールを追いかける「メチャビー」


青島キャンプでは海の中を1㎞泳ぐ


奉仕するためには健康な身体が欠かせないとの考えから「体育」には力を入れる


安田 栄三(やすだ えいぞう)

関西学院中学部 部長
西宮生まれ。関西学院中学部・高等部・大学経済学部卒業。松陰中学校・高等学校で社会科教諭として勤務後、母校の関西学院中学部に移り、社会科教諭として勤務。
長年にわたり野球部の顧問を務めるほか、生徒指導部長などを歴任。2006年から現職

小松原 健裕(こまつばら たけひろ)

株式会社 日能研関西 代表
甲陽学院高校、慶応義塾大学と中高大を私学で学ぶ。同大学法学部卒業後、日本IBMに入社。主に金融機関システムの提案に携わる。事業承継のため日能研関西に入社。授業担当科目は算数。京都本部長、副代表を経て、代表に就任。日能研関西本部業務全般に加え、日能研グループとの連携、私学教育の振興にも携わる

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