2017年
6月号
毎年開催される「チャイルド・ケモ・ハウス チャリティーウォーク」

病院と家の中間的施設チャイルド・ケモ・ハウス

カテゴリ:医療関係, 神戸

小児がんをはじめ、難治性疾患の子どもたちが自分の家にいるように安心して過ごせる施設「チャイルド・ケモ・ハウス」。2013年の開設までの経緯や患者さんや家族への思いなど、小児科医でもある楠木重範さんにお聞きした。

公益財団法人 チャイルド・ケモ・サポート基金 理事長 楠木 重範 さん

患者さんと家族、医療者、みんなの“理想の施設”を

 私が阪大医学部附属病院の小児科に入局したころ、医学の進歩により小児がんは7割が完治する時代になっていました。ところが、あまり知られていない。適切な治療がされていなかったり、親御さんにきちんと説明ができていなかったり…、私はもっと「スマートな治療」に取り組みたいと考えていました。ちょうどそのころ、子どもさんのがん治療に関わった親御さんとお話するうちに、家族の立場から見ても療養環境には改善が必要だと分かってきました。医療者、患者さんとその家族、どちらにとっても良い医療をしたいという思いが強くなりブログで発信したところ、多くの方に共感をいただきました。医療関係者だけでなく、院内学級の先生や建築家など、いろいろな視点から理想的な施設を考える研究会を立ち上げました。
 約1年の研究期間を経て2006年、NPO法人チャイルド・ケモ・ハウスを設立し、「理想の施設を造ってみよう」と活動を始めました。いくつか候補地はあったのですがなかなか条件が合わず、神戸市さんからここポートアイランドを紹介いただきました。インターネットやイベントなどで広く情報発信を続け、2013年4月、やっと開業に至りました。昨年は、兵庫県立子ども病院も移転オープンしました。がん治療拠点病院があり、近隣に中間施設があるという理想的な環境に近づけるのではないかと期待しているところです。

医療者がそばにいる安心と、家族そろって過ごせる環境

 小児がんなどの難治性疾患の患者さんにとって、治療を受ける大病院か自宅、この両極端の選択肢しかないというのは問題です。例えば、回復期にある子どもは家に帰りたいですね。でも、点滴などの処置が必要な場合は自宅での療養は家族にとっては不安です。そこで、チャイルド・ケモ・ハウスは、患者さんそれぞれが治療を受ける病院と連携できることを前提としての中間的施設です。
 施設内は大きな窓や天窓から外の光が十分に入ってくるように設計されています。全19室には、家にいるときと同じように料理できるキッチンやトイレ、お風呂はもちろん、外からお父さんが「ただいま」と帰って来る入口やきょうだいも滞在できるスペースを備えた部屋もあります。私たち医療者が「がんを治してあげたい」とどれだけ努力しても、家族や親御さんの愛情に勝るものではありません。医師や看護師がすぐ近くにいて安心できる環境で、家族が一緒に家にいるように過ごせるのが最高です。私たちは、子どもと家族を肉体的にも精神的にも、全てを支えることができる医療をこの施設で実現しようとしています。

がんになっても自分は自分。
できることもたくさんある

 私は中学生で3年間のがん闘病生活を送りましたので、入院の退屈さだけはよく分かっています。子どもなりに悩んだこともありましたが、がんになっても自分は自分、何ら変わるわけではありません。家族や周りの人が変わってしまうのは辛いことだと思います。がんになったのは誰の責任でもないのですが、特にお母さんは自分を責めて暗くなりがちです。誰もそんなふうには思っていないことを伝えることで負担を軽くしてあげられます。子どもにとっては病気でできないことがたくさんあるのは辛いこと。「普通にできることもある」と言葉で伝えるのは難しいですから、例えば普段と同じ服を着て、プレイルームでちょっと走ったり、他の子たちと普通に遊んだり、そんなことが大切なのです。

一人でも多くの患者さんと家族をサポート

 この施設建物は多くの方からの寄付によって建てられました。入院利用に限らず、いろいろな方法で利用いただき、一人でも多くの患者さんやその家族に還元していくことで、皆さんのご支援にお返しができると考えています。がんになると患者さんとその家族は社会から孤立してしまったと感じるものです。院内学級や日帰りイベントの実施など、医療ではカバーできない分野でのサポートをもっと広げていくことが役割の一つです。
 そして6月10日には、今年で5回目となる「チャイルド・ケモ・ハウス チャリティーウォーク」を開催します。がんと闘う子どもや家族に思いをはせながら、おそろいのTシャツを着て初夏の神戸をみんなで歩く、楽しいチャリティーイベントです。スペースシアターを出発し、マルシェが開催されているゴールのKIITOを目指します。皆さんのご参加と温かいご支援をよろしくお願いいたします。

神戸市中央区に2013年開設した「チャイルド・ケモ・ハウス」


壁面には、クスッと笑ってしまうイタズラがかくれていることも


家族揃って家で過ごすことが子どもの笑顔につながる


大きな天窓から光が入る、広々としたプレイルーム


医師と看護師がすぐ近くにいることでより安心な環境に


毎年開催される「チャイルド・ケモ・ハウス チャリティーウォーク」


参加費は大人2,000円。当日着用するオリジナルTシャツがセットに


中学2年生のときに、小児がんの一種「悪性リンパ腫」を発症。合計約3年の闘病生活の後、治癒する。1999年小児科医になり、大阪大学医学部附属病院小児科に入局。2006年医療者、患者家族などと「がんになっても笑顔で育つ」を目標にNPO法人チャイルド・ケモ・ハウスを設立。平成18年11月~平成24年6月 NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス設立 理事長就任


チャイルド・ケモ・ハウス

〒650-0046 兵庫県神戸市中央区湊島中町8丁目5-3
事務局運営時間(平日10:00〜18:00)
TEL.078-303-5315
fax.078-303-5325
E-mail:info@kemohouse.jp

〈2017年6月号〉
一番摘み海苔(のり)の香り「須磨海苔」|神戸の“美味しい”くらし
街なか養蜂でつくる「世界に一つだけのハチミツ」|神戸の“美味しい”くらし
花々の香りに包まれて、美味しいハーブ料理を
造り手たちの情熱をナチュラルチーズと共に
連載 輝く女性④ ウォーキングの魅力と感動を多くの人に 健やかな精神とカラダづく…
神戸の美味しいくらしを訪ねて ー扉ー
旬と技、格別の美味を味わう
食を愛する庖斎による酒菜と兵庫県産の厳選された銘酒
美しい眺望と、絵画的なイタリアン
おいしいお菓子が日常的にある“神戸”らしさ
そのひとくちの感動は想像をこえる
神戸の “美味しい” くらし ー扉ー
農家はまず「何をしたいか」を考える|神戸の“美味しい”くらし
淡河の暮らしも含めての農業|神戸の“美味しい”くらし
西区の麦畑からできるパン|神戸の“美味しい”くらし
牧場のめぐみから生まれた極上チーズ「フロマージュ・フレ」|神戸の“美味しい”くら…
西区でゆったり飼育される「六甲牛」
“特別なもの”との出会い ベール・ド・フージェールの家具 11
連載 神戸秘話 ⑥ 多彩な人物がさまざまな業界で活躍
対談/進化する名門私立中学校 第7回 関西学院中学部
ガゼボショップが提案する“上質なくらし”⑫
“新”神戸レディススパのステキな過ごし方 ~Vol.3 女子会 編~
連載 ミツバチの話 ⑪
病院と家の中間的施設チャイルド・ケモ・ハウス
美が宿る建築に 彩られた夙川|連載 神様に愛された地、夙川 ⑤
「絆」が創出した名建築 浦太郎邸|連載 神様に愛された地、夙川 ⑤
神戸を駆けぬける歓び New BMW 5series debut!
Power of music(音楽の力) 第18回
第12回 神戸洋藝菓子ボックサン
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第七十三回
神戸のカクシボタン 第四十二回 楽園もとめて街道をゆく
生田祭 斎行
大不幸のあとには見違える神戸が、きっと(文・淀川 長治)|神戸っ子アーカイブ V…
第19回 北前船寄港地フォーラムin淡路島
見えない言葉 植松 奎二(美術家)
神戸鉄人伝 第90回 書道家 岡本 正志(おかもと ただし)さん
兵庫ゆかりの伝説浮世絵 第四十回
連載エッセイ/喫茶店の書斎から⑬ 書き込みから
津名ハイツ リニューアルオープン|耳よりKOBE