3月号
ウガンダにゴリラを訪ねて Vol.5
【アフリカ出発からBwindiまで】③
文・中村 しのぶ
なかむらクリニック(小児科)
アフリカのバードウォッチングは退屈どころか見ること聞くこと全てが興味深くあっという間に時間が過ぎていきました。夕食にビクトリア湖で採れる30センチくらいの魚テラピアの丸揚げをいただき運転手のMusokeはイスラム教徒で一夫多妻制であると聞きました。国内の60%がキリスト教、イスラム教が16%、伝統宗教18%で、NGOなどが受胎制限教育をしているそうですが彼の家族は多いほうが豊かになる?という主張を聞きながらカンパラの夜は更けていきました。
次の朝、エンテベ空港に戻りセスナでウガンダを西に横切りクィーンエリザベス国立公園へ向かいます。ここはウガンダで2番目に大きな国立公園で95種類の哺乳類と547種の鳥類が記録されています。
空港には出発時間の1時間前に到着、セスナに乗り込みました。先に乗っていた2人と私たち3人の乗客です。その時パイロットがもう他の乗客の予定はないので出発します、と。管制塔とやり取りしている気配無し。えーっ!?ちょっと待って!他の飛行機が着陸態勢に入ってたらぶつかるじゃない!ここではよくても行く先のカセセでは他のところから飛んできた飛行機が着陸しようとしてるかもしれないでしょ!大丈夫、東京じゃないから、と軽くあしらわれ離陸。
セスナからの緑のジャングル、蛇行する川、乾いたサバンナ、すぐそこに触れそうにアフリカの大地です。エジプト文明の源、ナイル川(白ナイル)も、ここウガンダビクトリア湖で始まりスーダンで青ナイルと合流し地中海に注ぎます。札幌、鹿児島間の4倍の長さのその流れに幾多の歴史、ドラマを運んだのでしょうか。
空にも空港にも見渡す限り他の飛行機の姿はなく激突の恐怖はすぐに霧散です。
余りにもあっけなく簡単に着陸、私でも操縦出来るんじゃない?と思ってしまいました。
カセセでのメインイベントはカジンガチャンネルのボートトリップです。途中木登りライオンで有名なサバンナを通りますがこの日は残念ながらライオンには会えませんでした。象の隊列、一斉に頭をもたげて澄んだ瞳で私たちを見る羚羊(レイヨウ、カモシカの仲間)、バッファロー、道端でバリバリと木の枝を折りながら葉を食べている象もいました。あちこちで太い木の股が裂けて枝が枯れて横たわっているのを見ますがそれは象の仕業でした。
ボート乗り場近くのロッジで昼食後クルージングです。昼食のテラスではテーブルの上にまで原色の小鳥がたくさん飛んできてパンくずを要求し、まるで極楽絵図です。
YouTubeでカバが領域を侵され、怒ってものすごいスピードでボートを追いかけ(あの体で時速40㎞で泳げるそうです)ほとんど追いつくシーンを見ていたので少し心配していましたが、想像より大きいボートで一安心。陸を離れるなり水際にはバッファローの水浴び、さまざまな色鮮やかな鳥たちが何種類も木の枝、岸の泥の上、バッファローの背中を歩いたり羽ばたいたり泳いだり。カバが何頭も眼だけ水面から出してじーっと見ています。お母さんの肩に顎をのせている赤ちゃんカバもいます。1頭の巨大なカバの前を1mくらいの小さなワニが横切りました。その瞬間カバは目を三角に吊り上げ鼻息で水しぶきを上げワニに突進です。濡れて光沢のあるにび色のまあるい巨体が何個も並んで浮かんでいる2、30m横では村人たちは漁をしたり洗濯をしています。まさしく人間と動物の共存です。水から2、300m離れた丘の上に村の家が見えますが、カバは夜は陸の草を食べに上がってくるそうで、年間何人もがカバに襲われて亡くなっているそうです。日本の動物園のカバは大きな口を開けてえさをもらい、そのあと歯も磨いてもらっている話は信じてもらえませんでした。歯医者さんのロゴにもなるかわいく愛嬌ある日本のカバですが、ライオンの頭を咥えて振り回すこともあり現地では凶暴な野獣のひとつです。一方、ブッシュミートとして人気もあり密漁は絶えないし、自分の畑にフェンスを越えて侵入したカバは殺してよい地域もあるらしく、夜にフェンスを下げてカバを呼び込み殺すこともあるそうです。
(次回へ続く)