2018年
3月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第八十一回

カテゴリ:医療関係

西宮市医師会市民フォーラム
「見直しませんか? 生活習慣~守ろうあなたの腎臓」について

西宮市医師会公衆衛生委員会 副委員長
よしおかクリニック泌尿器科 院長
吉岡 優 先生

─西宮市医師会市民フォーラムとはどのようなものですか。

吉岡 西宮市医師会は市民の皆様の健康を支えていく上で西宮市民にとってより身近な存在でありたいという思いから、毎年秋に西宮市医師会市民フォーラムを開催し、昨年で17回目を迎えました。西宮市医師会は赤ちゃんから高齢者まですべての人々の健康をサポートすると同時に、いま何が必要とされているかを市民とともに考え、行政とも協力し、未来につながるよりよい生活を目指していますが、フォーラムで得た情報を是非ご自身でお役立ていただくとともに、家族や友人や知人にもお知らせして情報を共有してもらえればと考えています。

─昨年のテーマは何ですか。

吉岡 「見直しませんか?生活習慣~守ろうあなたの腎臓」でした。平成29年10月より西宮市国民健康保険・慢性腎臓病(CKD)予防連携事業が開始されることにともない、CKDを啓蒙するとともに、その治療・重症化予防に役立てていただきたいという思いからテーマを決定しました。

─そもそもCKDとはどのような病気ですか。

吉岡 腎臓は血液から老廃物を取り出し尿として排泄し、体の水分量やミネラルバランスを整える大切な役割を担っています。一方で腎臓は働き者で、なかなか疲れたといわない沈黙の臓器です。そのため、知らない間に機能が低下している可能性があります。CKDは腎臓本来の働きが徐々に悪くなってくる状態で、「蛋白尿などの尿の異常がある」ことと、「eGFRが60未満」であることが3ヵ月以上続く場合にCKDと診断されます(図1)。この状態を放置していると腎臓の働きが完全に止まってしまったり、脳卒中や虚血性心疾患などの重い病気を引き起こしたりすることがわかってきました。生活習慣病はCKDの発症の要因のひとつであるとされていますが、CKDが進行すると生活習慣病が悪化するので、負のスパイラルになってしまいます。

─西宮市国民健康保険によるCKD予防連携事業とはどのようなものですか。

吉岡 日本では成人の8人に1人はCKDであるといわれ、患者数は1,330万人にものぼり、まさに新たな国民病です。また、人工透析患者数も全国的に増えていて、2014年末には320,448人となり、前年度に比べて約6,000人も増加しているんです。1人の患者に年間約500万円の医療費が必要となる腎臓への対策は、医療費の面からも喫緊の課題となっています。西宮市国民健康保険課が平成27年度の西宮市の特定健康診査の結果について年齢調整をおこなったところ、CKDの指標となるクレアチニンの有所見者の割合が県や国と比較して有意に高く、腎臓の機能低下の原因となる高尿酸血症、高脂血症の割合も高い状況でした。その結果を受けて、西宮市医師会、近隣の高度専門医療機関、西宮市等の関係機関が連携し、CKD予防連携事業をおこなうこととなったのです。この事業では必要なCKD患者を専門医に確実に受診させる仕組みを構築して早期治療及び重症化の予防を図り、新規の人工透析患者が減少することを目指しています。

─昨年のフォーラムはどのようなものでしたか。

吉岡 9月30日に西宮市フレンテホールで開催しました。会場では212名が聴講され盛況で、フォーラム後のアンケート結果では返答のあった方ほぼ全員から「良かった」との回答をいただきました。内容は生活習慣と腎臓を主題として、生活習慣病予防の観点から「総論」「CKD」「食事」について、3名の講演をおこないました。

─講演の内容について教えてください。

吉岡 まず、中島クリニック 院長の中島敏雄先生が「身近な生活習慣を見直してみよう」という演題で身近な生活習慣について非常にわかりやすくお話しされました。最適な睡眠時間、運動、体重、食事、アルコール、コーヒー、たばこ、サプリメントについて、文献的にエビデンスを導き出してくれました。続いて私が「ご存知ですか?今話題のCKD」と題し、腎臓の基礎知識や、CKDがどんな病気なのか、進展を阻止するにはどうすれば良いかなどについて講演しました。最後に武庫川女子大学栄養科学研究所の鞍田三貴先生が、「食を見直して あなたの腎臓を守りましょう」という演題で、腎臓と食事について質問形式でわかりやすく解説してくださいました。

─腎臓を守るためにはどうすれよいですか。

吉岡 まず過労を避け規則正しい生活を送り、夜更かしは避けましょう。過度な脱水は腎臓の機能を低下させますので、適度な水分補給も必要です。たばこは禁物、体重管理や適度な運動も心がけましょう。尿検査で蛋白尿を指摘された、靴がきつくなった、靴下のあとがくっきり残り消えにくい、朝まぶたが腫れぼったいなどのむくみ症状がある、血圧が135/85㎜Hg以上になった、疲れやすい、顔色が悪いなどの貧血症状がある、尿が泡たちなかなか消えないなどは、腎臓が弱っているサインですので、早めに泌尿器科や内科などの診察を受けてください。

図1)慢性腎臓病(CKD)とは

第17回西宮市医師会市民フォーラムでは、CKDの啓蒙と治療・重症悪化予防を期して「見直しませんか?生活習慣~守ろうあなたの腎臓」がテーマに採り上げられた

腎臓の基礎知識や、CKDがどのような病気なのか、その進展の阻止などについて講演した吉岡先生

西宮市医師会公衆衛生委員会 副委員長
よしおかクリニック泌尿器科 院長
吉岡 優 先生

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