2018年
3月号

Power of music(音楽の力) 第27回

カテゴリ:文化・芸術・音楽, 神戸

変わらないもの
『大河の如く、烈火の如く』

上松 明代

 2016年1月から神戸っ子に音楽の連載記事を開始して早2年。この2年間だけでも社会情勢や流行は凄まじいスピードで変化した。音楽業界も、そして私を取り巻く環境でさえも。
 現在、私たちが聴くクラシック音楽は、9世紀頃から始まる。では9世紀より以前は音楽が存在しなかったのかというとそうではない。音楽が楽譜という形で記録され始めた時期が9世紀頃であり、私たちはその記録を反芻、再現しているのだ。
 実際、私たちが日常的に親しみを持って聴ける音楽は、後期バロック時代、17世紀からのもの。ぐっと近づいたが、それでも400年前の音楽を聴いているわけだ。日本は江戸時代初期。この時代の芸術家をあげると、『風神雷神図』を描いた俵屋宗達。国宝であり、今も私たちを魅了する。
 改革が必要なこともある。しかし時代や概念は変われども、変わらないものも沢山ある。思いやりの心や、愛、そして言葉で言い尽くせないくらい見事で素晴らしい芸術、音楽。それは大河の如くこれからも脈々と続いていくであろう。先に記した後期バロック時代に活躍したドイツの大作曲家、ヨハン・セバスチャン・バッハはこんな名言を残した。
《風は見えずとも風車は回っている。音楽は見えなくても心に響いてくる、囁きかける。》
 思いやりや感謝の意、そして愛は見えなくても私たちの心に響いてくる。音楽という時間芸術は決して手にとって、その型を見ることは出来ない。だが、それ以上に私たちの心を揺らし、体はビートを感じ、胸を打つ。
 最後に。この連載は今月で終了ですが、今後も私のオフィシャルサイトにて音楽エッセイの連載は続行です。またFacebookでは、様々なジャンルの【音楽独自展開論】を連載しています。どうぞこちらも是非ご覧下さい(友達リクエストお待ちしております)。YouTubeではほぼ毎週、【音楽ショートショート】と題したオリジナル曲を更新中です。
 音楽への想いは烈火の如く。
 ありがとうございました。

上松明代(フルート奏者・作曲家)

武蔵野音楽大学卒業。ハンガリー国立リスト音楽院で2年間学ぶ。「時代を読み」「社会を知り」「テクノロジーを取り入れること」を念頭に、作曲・編曲を始め、ショートムービー制作も実験的に行う。六甲在住。趣味は読書、銭湯、現代アート。YouTubeにてオリジナル曲など公開中。オフィス Tempo.F 代表。
オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com

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