11月号
阪神間モダニズム邸宅の傑作 旧乾邸
明治から昭和の始めにかけて、近代化による公害に悩む大都市の富裕層は、自然豊かな阪神間に移住。競うように邸宅を建て、家族を連れて移り住んだ。ここから、阪神間モダニズムと呼ばれる、洗練された生活文化が花開くことになる。旧乾邸はこの流れの中で、乾汽船株式会社の設立者であった乾新治氏の自宅として、旧住吉村の山麓部に建築された。昭和11年(1936)頃のことで、名建築として知られた渡邊節氏による設計であった。
1200坪の土地は素焼きのタイルの塀に囲まれ、敷地の中央部には、赤い瓦の大きな屋根とやわらかな風合いの洋館の母屋がある。和洋建築が見事に融合され、重厚さの中に繊細なデザインを取り込んだ旧乾邸は、渡邊氏の代表作ともいわれる。かつて母屋の西側には、日本の伝統建築による素朴な和館があったが、現在は残されていない。また、六甲山南麓の地形をうまく活かして造られた庭園は、前庭、洋式庭園、和式庭園、茶庭(現存しない)から成るが、母屋である洋館3階のサンルームからは、洋式庭園を通して神戸の街並み、さらにははるかな海を望むことができる。
阪神間モダニズムの邸宅の中でも、とりわけ存在感があり、建物も含めた敷地全体が建築当時の風格をそのまま伝える旧乾邸は、非常に貴重な建築物である。門や塀も含めた敷地全体が神戸市指定有形文化財に指定され、庭園も神戸市指定名勝となっている。
一般公開は11月26日(木)~11月29日(日)の公開が予定されている(要予約)。
旧乾邸
神戸市東灘区住吉山手5-1-30
TEL.078-322-5165
(神戸市市民参画推進局 文化交流部)
特別観覧予約方法
・受付番号:078-842-0610(特別観覧受付係)
・受付期間:平成27年11月19日(木曜)~11月27日(金曜)
・受付時間:10:00~15:00 ※土、日、祝日を除きます