2015年
11月号
川沿いの桜や松の並木が美しい夙川

阪神間モダニズムを育んだ3つの川 夙川、芦屋川、住吉川

カテゴリ:住環境

 良好な住環境で人気が高い阪神間。中でも夙川、芦屋川、住吉川の3つの川が流れるエリアはステータスが高い。大阪と神戸という大都市の間にありながら清らかな水が流れ、鮎もみられるそうだ。また、野鳥たちがさえずり、桜や松の並木もまた美しい景観を生み出している。ゆえに、川沿いは風致地区が設けられている。
 そしてこの3つの川は、阪神間モダニズム揺籃の地でもある。モダニズムの基盤となった郊外住宅地の開発の契機は、鉄道の開通であろう。明治7年(1874)、官営鉄道(今のJR)大阪~神戸間が日本で2番目に開通して住吉に駅が設けられ、まず住吉川沿いが発展していく。明治末期になると有力な財界人などが土地を求め、豪邸が建てられていった。その後も経済的に成功した者やステータスの高い者たちがここに屋敷や別荘を構え、上流階級のコミュニティが生まれ、お屋敷街が形成されていった。
 その流れが加速したのは、阪神や阪急、つまり私鉄の開業だ。いわゆる「汽車」であった官営鉄道と比べ高速かつ頻発で便利・快適な「電車」という都市間交通が生まれたことで、夙川や芦屋川周辺にも郊外住宅地は発展していく。
 これら郊外住宅地の住人の多くは大阪からやって来た。当時の大阪はわが国の工業を牽引して日本一の経済規模を誇り「東洋のマンチェスター」とよばれるほど隆盛を誇っていた。一方、煤煙や水質汚染などの公害が問題化し、人々は良好な環境を求めていた。阪神間はその頃、白砂青松、陽光降り注ぐ健康的な地であり、六甲の伏流水は質量ともに良好。またとない条件が揃った「理想郷」だった。
 でも、なぜ川沿いが選ばれたのだろう。これは仮説だが、地形との関係かもしれない。雨によって降り注いだ水は長い時をかけて六甲の花崗岩を浸食。やがて川となってその砂礫を山から運び、扇状地を形成する。また、砂礫が川の両岸に堆積して天井川となり、小高い丘ができる。高燥な土地や川沿いの高台は爽快だ。しかも今のように周囲にビルなどない時代は視界を遮るものがなく、阪神間ならではの美しい景色を望むには最高の場所だったに違いない。
 そして人は本能的に潤いを求めるもの。ゆえに3つのせせらぎが選ばれるのも合点がいく。夙川、芦屋川、住吉川一帯が得難い魅力をもつのは、今も昔も変わらないのではないだろうか。

川沿いの桜や松の並木が美しい夙川


大都市、神戸と大阪の間にありながら清流が流れ、野鳥を見ることができる。写真は夙川


両岸に阪神間モダニズム建築の邸宅が立ち並ぶ芦屋川


蛍も生息する清流、住吉川

〈2015年11月号〉
神戸の粋な店 伊藤グリル
ALL NEW JAGUAR XF
特集 ー扉 阪神間モダニズムと住まい
日本の生活を大きく変えたマイルストーン
阪神間モダニズムを育んだ3つの川 夙川、芦屋川、住吉川
茅渟の海を望む地 山芦屋の歴史と価値
山芦屋は「建築博物館」
山芦屋に佇む、村野藤吾の名建築 中山悦治邸
緑あふれる住宅地 夙川の起点となった香櫨園
ネオ・ゴシック様式の聖堂 カトリック夙川教会
随所に施された何気ない「上質」 旧山本家住宅
生活をアートに変えるエスプリ 浦太郎邸
「日本一の長者村」 財界人たちが邸宅を構えた住吉村
阪神間モダニズム邸宅の傑作 旧乾邸
阪神間モダニズムの一角を 形成した〝住吉〟
日本経済を動かした、地域コミュニティ「観音林倶楽部」
日本の発展に尽くした実業家 平生釟三郎
「阪神間モダニズム」ゆかりの美術館をめぐる ―扉―
大谷竹次郎の邸宅庭園と美術コレクションを公開 西宮市大谷記念美術館
文豪の世界と地域文化を継承する 芦屋市谷崎潤一郎記念館
安井武雄の建築思想が息づく私邸跡 公益財団法人山口文化会館 滴翠美術館
俳人・高浜虚子の作品と出会う 虚子記念文学館
国宝・重要文化財を含む貴重なコレクション 白鶴美術館
村山龍平が後世に遺そうとした古美術 香雪美術館
女流画家の夢がつまった小さな美術館 世良美術館
秋の神戸観光 半日で行って帰れる 紅葉スポット!「神戸市立須磨離宮公園」
秋の神戸観光 世界の森の紅葉を楽しもう 「神戸市立森林植物園」
秋の神戸観光 高山ならではの紅葉の美しさ 六甲高山植物園 他
街全体が歴史によって刻まれた 建築・住居学の実物大教科書
国際都市神戸にふさわしい環境
地域の人たちの温かさと 豊かな自然に囲まれて
国際ロータリー第2680地区 神戸西ロータリークラブ 心の「四季節」便り
連載コラム 「第二のプレイボール」Vol.9
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第五十五回
神戸のカクシボタン 第二十三回
草葉達也の神戸物語
神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第71回
第二十一回 兵庫ゆかりの伝説浮世絵
触媒のうた 57
有馬歳時記 有馬 “ニューオープン” へてから 有馬温泉店