2015年
11月号

女流画家の夢がつまった小さな美術館 世良美術館

カテゴリ:文化・芸術・音楽

 世良美術館は、画家・世良臣絵の個人美術館である。明治44年(1911)、東京に生まれた世良は、「女が一人でも生きていけるように」という父の考えにより3歳からピアノを習い、6歳で東洋英和女学校の寄宿舎に入れられた。卒業後はピアノ指導者となり、結婚後に神戸に移り住んでいる。
 その後、30歳より本格的に画家として活動を開始。昭和41年(1966)にフランスへと遊学したことを皮切りに、ギリシャやポルトガルなどヨーロッパ各地へ遊学。帰国ごとに、ヨーロッパ滞在中に描き上げた写生作品の個展を開催するという作家活動を続けた。
 そして80歳になった平成4年(1992)、念願の「世良美術館」を開館。神戸市建築文化賞はじめ、多数の賞を受賞した美術館は、ヨーロッパに多い小さな個人美術館を参考に「女性がホッと深呼吸できる空間」をコンセプトに設計された。白を基調とした館内は、塔の部分にある螺旋階段を伝って、地下1階から2階までの展示室を行き来することができる。展示室には、世良の水彩、油彩、ガラス絵作品や、師である小磯良平氏のデッサン作品、また陶芸家の濱田庄司の作品を常設展示する。このほか、文化の薫り高い「御影」にふさわしい社交の場となるよう、サロンコンサートや音楽リサイタル、個展、水彩画教室などを毎週のように開催している。
 創設者の夢がつまった陽光溢れる館内で、ゆったりとした時間を過したい。

採光をふんだんに取り入れる館内。優しくゆったりとした時間が流れる


「霧流るヒースの花咲く丘・ブルターニュ」世良臣絵、油彩 1988年


1階は世良の作品が並ぶ。油絵、水彩画、ガラス画など多彩な才能を発揮した


住吉にアトリエを構えた小磯良平の肖像画シリーズ「世良臣絵像デッサン」


御影の閑静な住宅街に佇む。
これまで神戸市建築文化賞をはじめ多くの賞を受賞した



2階スペースでは、水彩画教室を開催している。御影エリアのサロンのような存在になっている


世良美術館

神戸市東灘区御影2-5-21
TEL.078-822-6456
■開館 10:00~17:00
    (1月・2月は~16:00)
    入館は30分前まで
■休館 月曜日、火曜日(月曜日が祝日の場合も閉館)
    年末年始、コンサート開催日
     ※臨時休館がございます
   ※お手数ですが事前に休館日カレンダーを参照下さい!
■料金 一般500円 シニア400円
    小中高大生300円、未就学児は無料

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〈2015年11月号〉
神戸の粋な店 伊藤グリル
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特集 ー扉 阪神間モダニズムと住まい
日本の生活を大きく変えたマイルストーン
阪神間モダニズムを育んだ3つの川 夙川、芦屋川、住吉川
茅渟の海を望む地 山芦屋の歴史と価値
山芦屋は「建築博物館」
山芦屋に佇む、村野藤吾の名建築 中山悦治邸
緑あふれる住宅地 夙川の起点となった香櫨園
ネオ・ゴシック様式の聖堂 カトリック夙川教会
随所に施された何気ない「上質」 旧山本家住宅
生活をアートに変えるエスプリ 浦太郎邸
「日本一の長者村」 財界人たちが邸宅を構えた住吉村
阪神間モダニズム邸宅の傑作 旧乾邸
阪神間モダニズムの一角を 形成した〝住吉〟
日本経済を動かした、地域コミュニティ「観音林倶楽部」
日本の発展に尽くした実業家 平生釟三郎
「阪神間モダニズム」ゆかりの美術館をめぐる ―扉―
大谷竹次郎の邸宅庭園と美術コレクションを公開 西宮市大谷記念美術館
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俳人・高浜虚子の作品と出会う 虚子記念文学館
国宝・重要文化財を含む貴重なコレクション 白鶴美術館
村山龍平が後世に遺そうとした古美術 香雪美術館
女流画家の夢がつまった小さな美術館 世良美術館
秋の神戸観光 半日で行って帰れる 紅葉スポット!「神戸市立須磨離宮公園」
秋の神戸観光 世界の森の紅葉を楽しもう 「神戸市立森林植物園」
秋の神戸観光 高山ならではの紅葉の美しさ 六甲高山植物園 他
街全体が歴史によって刻まれた 建築・住居学の実物大教科書
国際都市神戸にふさわしい環境
地域の人たちの温かさと 豊かな自然に囲まれて
国際ロータリー第2680地区 神戸西ロータリークラブ 心の「四季節」便り
連載コラム 「第二のプレイボール」Vol.9
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第五十五回
神戸のカクシボタン 第二十三回
草葉達也の神戸物語
神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第71回
第二十一回 兵庫ゆかりの伝説浮世絵
触媒のうた 57
有馬歳時記 有馬 “ニューオープン” へてから 有馬温泉店