2015年
11月号
名建築家と謳われた渡邊節の設計により、乾汽船会社社長の邸宅として建てられた

阪神間モダニズム邸宅の傑作 旧乾邸

カテゴリ:建築, 神戸

 明治から昭和の始めにかけて、近代化による公害に悩む大都市の富裕層は、自然豊かな阪神間に移住。競うように邸宅を建て、家族を連れて移り住んだ。ここから、阪神間モダニズムと呼ばれる、洗練された生活文化が花開くことになる。旧乾邸はこの流れの中で、乾汽船株式会社の設立者であった乾新治氏の自宅として、旧住吉村の山麓部に建築された。昭和11年(1936)頃のことで、名建築として知られた渡邊節氏による設計であった。
 1200坪の土地は素焼きのタイルの塀に囲まれ、敷地の中央部には、赤い瓦の大きな屋根とやわらかな風合いの洋館の母屋がある。和洋建築が見事に融合され、重厚さの中に繊細なデザインを取り込んだ旧乾邸は、渡邊氏の代表作ともいわれる。かつて母屋の西側には、日本の伝統建築による素朴な和館があったが、現在は残されていない。また、六甲山南麓の地形をうまく活かして造られた庭園は、前庭、洋式庭園、和式庭園、茶庭(現存しない)から成るが、母屋である洋館3階のサンルームからは、洋式庭園を通して神戸の街並み、さらにははるかな海を望むことができる。
 阪神間モダニズムの邸宅の中でも、とりわけ存在感があり、建物も含めた敷地全体が建築当時の風格をそのまま伝える旧乾邸は、非常に貴重な建築物である。門や塀も含めた敷地全体が神戸市指定有形文化財に指定され、庭園も神戸市指定名勝となっている。
 一般公開は11月26日(木)~11月29日(日)の公開が予定されている(要予約)。

名建築家と謳われた渡邊節の設計により、乾汽船会社社長の邸宅として建てられた

名建築家と謳われた渡邊節の設計により、乾汽船会社社長の邸宅として建てられた


車寄せに続く玄関アプローチの壁には、貴重な黄竜山石が使用されている

車寄せに続く玄関アプローチの壁には、貴重な黄竜山石が使用されている


ゲストルーム。南側の窓から差し込む陽光が、豪華な内装を浮き立たせる

ゲストルーム。南側の窓から差し込む陽光が、豪華な内装を浮き立たせる


ゲストルーム正面中央の暖炉。上部には、丸柱とチーク材による優美な装飾がある

ゲストルーム正面中央の暖炉。上部には、丸柱とチーク材による優美な装飾がある


玄関ホール。英国のあらゆる建築様式の粋を集め、吹き抜け天井は迫力がある

玄関ホール。英国のあらゆる建築様式の粋を集め、吹き抜け天井は迫力がある


ゲストルーム天井の装飾は、英国中世のマナー・ハウス様式

ゲストルーム天井の装飾は、英国中世のマナー・ハウス様式


サンルームの3階からは、洋式庭園の先に、神戸の街と海を見通すことができる

サンルームの3階からは、洋式庭園の先に、神戸の街と海を見通すことができる


玄関アプローチの天井には、直径10cmほどの採光のための装飾を見ることができる

玄関アプローチの天井には、直径10cmほどの採光のための装飾を見ることができる


階段の手すりの重厚な意匠は、英国のジャコビアン様式

階段の手すりの重厚な意匠は、英国のジャコビアン様式


和式庭園。趣のある石燈籠や景石が置かれ、季節の移ろいを感じることができる木々が植えられている

和式庭園。趣のある石燈籠や景石が置かれ、季節の移ろいを感じることができる木々が植えられている


1200坪の敷地を囲む、素焼きのタイルを貼った塀

1200坪の敷地を囲む、素焼きのタイルを貼った塀


20151104108

旧乾邸

神戸市東灘区住吉山手5-1-30
TEL.078-322-5165
(神戸市市民参画推進局 文化交流部)

特別観覧予約方法
・受付番号:078-842-0610(特別観覧受付係)
・受付期間:平成27年11月19日(木曜)~11月27日(金曜)
・受付時間:10:00~15:00 ※土、日、祝日を除きます

〈2015年11月号〉
神戸の粋な店 伊藤グリル
ALL NEW JAGUAR XF
特集 ー扉 阪神間モダニズムと住まい
日本の生活を大きく変えたマイルストーン
阪神間モダニズムを育んだ3つの川 夙川、芦屋川、住吉川
茅渟の海を望む地 山芦屋の歴史と価値
山芦屋は「建築博物館」
山芦屋に佇む、村野藤吾の名建築 中山悦治邸
緑あふれる住宅地 夙川の起点となった香櫨園
ネオ・ゴシック様式の聖堂 カトリック夙川教会
随所に施された何気ない「上質」 旧山本家住宅
生活をアートに変えるエスプリ 浦太郎邸
「日本一の長者村」 財界人たちが邸宅を構えた住吉村
阪神間モダニズム邸宅の傑作 旧乾邸
阪神間モダニズムの一角を 形成した〝住吉〟
日本経済を動かした、地域コミュニティ「観音林倶楽部」
日本の発展に尽くした実業家 平生釟三郎
「阪神間モダニズム」ゆかりの美術館をめぐる ―扉―
大谷竹次郎の邸宅庭園と美術コレクションを公開 西宮市大谷記念美術館
文豪の世界と地域文化を継承する 芦屋市谷崎潤一郎記念館
安井武雄の建築思想が息づく私邸跡 公益財団法人山口文化会館 滴翠美術館
俳人・高浜虚子の作品と出会う 虚子記念文学館
国宝・重要文化財を含む貴重なコレクション 白鶴美術館
村山龍平が後世に遺そうとした古美術 香雪美術館
女流画家の夢がつまった小さな美術館 世良美術館
秋の神戸観光 半日で行って帰れる 紅葉スポット!「神戸市立須磨離宮公園」
秋の神戸観光 世界の森の紅葉を楽しもう 「神戸市立森林植物園」
秋の神戸観光 高山ならではの紅葉の美しさ 六甲高山植物園 他
街全体が歴史によって刻まれた 建築・住居学の実物大教科書
国際都市神戸にふさわしい環境
地域の人たちの温かさと 豊かな自然に囲まれて
国際ロータリー第2680地区 神戸西ロータリークラブ 心の「四季節」便り
連載コラム 「第二のプレイボール」Vol.9
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第五十五回
神戸のカクシボタン 第二十三回
草葉達也の神戸物語
神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第71回
第二十一回 兵庫ゆかりの伝説浮世絵
触媒のうた 57
有馬歳時記 有馬 “ニューオープン” へてから 有馬温泉店