2015年
11月号

日本の生活を大きく変えたマイルストーン

カテゴリ:文化・芸術・音楽

 阪神間モダニズムとは一般的に、明治末期から戦前にかけて阪神間を中心に発展した近代的な芸術や文化、生活様式のことをさす。和洋の文化が融合し、快適かつセンスあふれるそのライフスタイルは、日本の生活を大きく変えたマイルストーンと言っても過言ではないだろう。
 明治維新を迎え殖産興業政策を進めた日本では工業化が進むとともに、さまざまな産業が産声を上げた。その中心地だった大阪では富が集積した一方、公害による環境の悪化も進行していった。一方、神戸は開港とともに西洋文化が流入、新たな産業も生まれ活気に満ちていた。
 そんな大阪と神戸の間、西宮~芦屋~灘にかけての一帯は、六甲の南斜面に陽光降り注ぎ、白砂青松の浜が広がり、豊かな自然と清澄な空気・水に恵まれていた。
 ゆえにそこが憧憬の地となるのは当然であった。開発の大きな契機になったのは鉄道の開業だ。
 明治のはじめに官営鉄道(今のJR)が開業して住吉に駅ができたが、明治末期なるとその周辺に富豪たちが別荘や邸宅を構え、コミュニティを醸成していく。さらに明治38年(1905)に阪神、続いて大正9年(1920)に阪急が開通すると、電鉄会社や土地開発会社が開発を進めるようになり、郊外住宅地やレジャー施設が生まれ、学校や医療機関、ホテルなどの都市機能も整備されていった。富裕層たちは環境の悪い大阪から、健康的で緑が多く、そして便利な郊外の理想郷へと移っていったのである。
 阪神間モダニズムの担い手は財界人、企業家、文化人、医師など上流階級の人々やその家族が中心だった。中でも大阪から移住してきた船場の商人たちは、洗練された上方文化に神戸のハイカラな洋風文化を融合させた。接客部分を洋風に、生活空間を和風にした和洋館はその象徴といえるだろう。洋食を味わい、テニスやダンスに興じるかと思えば、茶の湯をたしなみ骨董を蒐集するなど、和洋問わずハイセンスな趣味や生活を愉しんでいたようだ。
 芸術文化の花も開く。画壇では小出楢重や小磯良平、文学では谷崎潤一郎や富田砕花、音楽では貴志康一、ファッションデザイナーの田中千代など、ビッグネームは枚挙に暇がない。
 阪神間モダニズムの影響はその後の全国の都市計画や生活様式、芸術文化に多大な影響を与えた。阪神間にはその遺産も数多く残っているだけでなく、今なお環境や文化、ライフスタイルのみならず、高いステイタスを引き継いでいる。

〈2015年11月号〉
神戸の粋な店 伊藤グリル
ALL NEW JAGUAR XF
特集 ー扉 阪神間モダニズムと住まい
日本の生活を大きく変えたマイルストーン
阪神間モダニズムを育んだ3つの川 夙川、芦屋川、住吉川
茅渟の海を望む地 山芦屋の歴史と価値
山芦屋は「建築博物館」
山芦屋に佇む、村野藤吾の名建築 中山悦治邸
緑あふれる住宅地 夙川の起点となった香櫨園
ネオ・ゴシック様式の聖堂 カトリック夙川教会
随所に施された何気ない「上質」 旧山本家住宅
生活をアートに変えるエスプリ 浦太郎邸
「日本一の長者村」 財界人たちが邸宅を構えた住吉村
阪神間モダニズム邸宅の傑作 旧乾邸
阪神間モダニズムの一角を 形成した〝住吉〟
日本経済を動かした、地域コミュニティ「観音林倶楽部」
日本の発展に尽くした実業家 平生釟三郎
「阪神間モダニズム」ゆかりの美術館をめぐる ―扉―
大谷竹次郎の邸宅庭園と美術コレクションを公開 西宮市大谷記念美術館
文豪の世界と地域文化を継承する 芦屋市谷崎潤一郎記念館
安井武雄の建築思想が息づく私邸跡 公益財団法人山口文化会館 滴翠美術館
俳人・高浜虚子の作品と出会う 虚子記念文学館
国宝・重要文化財を含む貴重なコレクション 白鶴美術館
村山龍平が後世に遺そうとした古美術 香雪美術館
女流画家の夢がつまった小さな美術館 世良美術館
秋の神戸観光 半日で行って帰れる 紅葉スポット!「神戸市立須磨離宮公園」
秋の神戸観光 世界の森の紅葉を楽しもう 「神戸市立森林植物園」
秋の神戸観光 高山ならではの紅葉の美しさ 六甲高山植物園 他
街全体が歴史によって刻まれた 建築・住居学の実物大教科書
国際都市神戸にふさわしい環境
地域の人たちの温かさと 豊かな自然に囲まれて
国際ロータリー第2680地区 神戸西ロータリークラブ 心の「四季節」便り
連載コラム 「第二のプレイボール」Vol.9
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第五十五回
神戸のカクシボタン 第二十三回
草葉達也の神戸物語
神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第71回
第二十一回 兵庫ゆかりの伝説浮世絵
触媒のうた 57
有馬歳時記 有馬 “ニューオープン” へてから 有馬温泉店