2018年
7月号
1985年に編成された「モダンタイムス・ビッグバンド」。当時のメンバーは今も現役で活躍中

聴いていて心が温かくなる。そんな音楽を続けています|音楽の似合う街、神戸

カテゴリ:文化人, 神戸, 音楽・舞踏

モダンタイムス・ビッグバンド ピアニスト
高橋 眞治 さん

ジャズ発祥の地・神戸を代表するアマチュア・ジャズ・バンド「モダンタイムス・ビッグバンド」。
33年間にわたり、アメリカの古き良き時代のサウンドを追求し続けています。
結成当時からのメンバーの一人、高橋眞治さんにバンドのことやジャズのことなどお聞きしました。

―モダンタイムス・ビッグバンドはどういう経緯で発足したのですか。

 日下雄介さんと私は、あちこちで顔を合わせる音楽仲間でした。私が、元町のライブハウスでソロピアノを弾いたときに、一人ではつまらないから日下さんに「サックス吹いてよ」と頼んだんです。そうしたら他のプレーヤーも集まってきて、6人で「じゃあ、みんなでやろうか」ということになり小規模編成で演奏したのが始まりです。当初のメンバーは今もみんな元気ですよ、もう年寄りですけどね(笑)。

―その後、1985年にビッグバンドを編成したのですね。

 だんだんメンバーが集まってきたので「モダンタイムス・ビッグバンド」を立ち上げました。演奏するのはずっと、カウント・べイシー、デューク・エリントン、少し時代をさかのぼってベニー・グッドマン、トミー・ドーシーなどに代表されるビッグバンドジャズです。1935年にラジオ放送が開始され、音楽が一気に幅広く広まったアメリカの一番いい時代の音楽です。

―神戸のジャズは、どんなジャズですか。

 流行にとらわれることなく、自分たちの音楽を演奏しよう!というのが神戸のジャズですね。私たちもそうですが、もうひとつ前の時代のデキシーランドジャズがその先駆けだと思います。日本では戦時中、一旦ジャズが演奏されなくなり、戦後、進駐軍キャンプから再燃します。神戸ではそんな中、関西学院大学の学生たちが日本初のアマチュアバンド「デキシーランド・ハートウォーマーズ」を1953年に結成します。当時「西の帝劇」と呼ばれた新開地「聚楽館」にジャズの神様〝サッチモ〟ことルイ・アームストロングが公演で訪れたときに、自主製作の音源を持って楽屋に押しかけ、サッチモが「オーワンダフル!」と言ったとか(笑)。その後も「ハートウォーマーズ」は、関西の学生を中心にニューオーリンズのオリジナルジャズスタイルを続けます。その頃のメンバーの一人に先日亡くなった小曽根実がいました。彼らの意思は「ハートウォーマーズ」「リバーサイド・ランブラーズ」「ロイヤル・フラッシュ・ジャズバンド」へと受け継がれ、時代に流されずデキシーという自分たちのスタイルを守っています。その後に続いた私たちも、スイングジャズ、モダンジャズという自分たちのスタイルを守っています。

―33年間、続けてこられたわけは?

 来るものは拒まず、去る者は追わず。自由なのがいいのでしょうね、いい加減ともいえるかな(笑)。メンバーがそれぞれ少編成のバンドをもっていて、いろいろなところで演奏したり、いろいろなことに挑戦したり、集まって来たらビッグバンドで演奏したり、そういう形態を取っています。本来、音楽は自由なものですからね。現在メンバーは20人ほどでしょうか、私たちのような年寄りもいれば、若い人たちも入ってきてくれています。通常、ソロはベテランと決まっているものですが、曲選びではみんなにソロをもたせる構成を心がけています。私が作った曲も100以上あるのですが、バンド用にアレンジするときには一人でも多くのメンバーにソロが回るようにしています。ステージに立ちたい、立つからにはソロを取りたい。みんな、そんなふうに思っていますからね。その時は失敗しても、それがいい経験になります。

―昔に比べると神戸の音楽環境も変わってきたのでしょうね。

 私たちが音楽を始めたころは、ミュージシャンで生活ができるような時代でした。今はプロもアマチュアも演奏する場所が少なくなってきました。音楽をやりたいという気持ちを支援できるといいのですが、なかなか難しいのでしょう。私たちは常にウェルカム。アンサンブルすることでパワーが大きくなります。

―これからもずっと続けていけたらいいですね。

 何としてもバンドを存続させたいという思いはないですが、これからも、耳に入りやすくて聴いていて心が温かくなる、そんな音楽を続けていきたいと思っています。

1985年に編成された「モダンタイムス・ビッグバンド」。当時のメンバーは今も現役で活躍中

自由に活動を続けて33年。曲選びでは、みんなにソロをもたせる構成を心がけているという

Profile
モダンタイムス・ビッグバンドの創設者の一人。学生時代からBill Evans、Red Garland、Sonny Clark等のModern Jazz Pianist に傾倒。以降数十年間、関西の数々の名門Jazzクラブ、ラウンジ等のハウスピアニストを務める。㈲高橋建築事務所の代表であり、本職である高層ビルや公共建築の設計のかたわら、いくつかの Jazz Spotの内装設計も手掛ける


月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

  • 電気で駆けぬける、クーペ・スタイルのSUW|Kobe BMW
  • フランク・ロイド・ライトの建築思想を現代の住まいに|ORGANIC HOUSE
〈2018年7月号〉
メルセデス・ベンツで旅するドイツ in KOBE Vol.12
かけがえのない生命(いのち)をジュエリーで表現 『ギメルの四季』Vol.10
Bienvenido! Andrés Iniesta! イニエスタ ようこそ神戸…
KOBE White Dinner 2018
好きなことをやって生き、みんなに愛された 父・小曽根実|音楽の似合う街、神戸
上質な生演奏とともにゆったり過ごす昼下がり|音楽の似合う街、神戸
神戸から日本全国へ!小関ミオが音楽を届けに行きます|音楽の似合う街、神戸
聴く人を魅了する〝森本ケンタの世界〟|音楽の似合う街、神戸
カッコいい曲に散りばめた「大切な人を守る」という思い|音楽の似合う街、神戸
輝く女性Ⅱ Vol.2 株式会社 LiSA LiSA 代表取締役社長 貴田 加野…
音楽の種子、蘇生する歌。|尾崎裕哉コンサート情報
炭焼・釜飯・軍鶏鍋 「ゆた坊」三宮店|神戸の粋な店
連載 神戸秘話 ⑲ 大愛をもって使命に立つ 東野洋子さん 米谷収さん 米谷ふみ子…
ファンタジー・ディレクター 小山 進の考えたこと Vol.4
聴いていて心が温かくなる。そんな音楽を続けています|音楽の似合う街、神戸
対談/個性を育む私立中学の教育 第2回 淳心学院中学校
KOBE DANDY NIKKE 1896 を着る|服部 敬二|NIKKE 18…
ウガンダにゴリラを訪ねて Vol.9
ベール・ド・フージェールの美しきアンティーク家具
神戸のカクシボタン 第五十五回 こだわりの逸品で世界へ挑戦! パイプ作家 堂本良…
神戸新開地 喜楽館|7月11日(水)いよいよオープン!
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第八十五回
harmony(はーもにぃ) Vol.5 ユーモアを臨床の場に
縁の下の力持ち 第1回 神戸大学医学部附属病院 検査部
連載コラム 「続・第二のプレイボール」|Vol.3
神戸空港から行くながさきの旅|日本遺産「日本磁器のふるさと 肥前」の陶郷をめぐる…
第11回 ディスカバー淡河ハイク&スポーツフェスタ|有馬ロイヤルゴルフクラブ
神の賜物『淡路島の鱧』の季節到来
神戸鉄人伝 第103回 声楽家 安藝 榮子(あき えいこ)さん
世界の民芸猫ざんまい 第二回
連載エッセイ/喫茶店の書斎から ㉖ 幻の詩集
有馬涼風川座敷 7月27日(金)~8月26日(日)開催|有馬歳時記