2018年
7月号
石田さん(右)とKAZZさん

カッコいい曲に散りばめた「大切な人を守る」という思い|音楽の似合う街、神戸

カテゴリ:文化人, 神戸, 音楽・舞踏

singer songwriter
石田 裕之 さん

神戸を拠点に活動する石田裕之さん。
被災地・神戸から防災・減災を歌で楽しく伝える活動を始めました。
石田さんの音楽活動の原点や今後の予定などお聞きしました。

―音楽との出会いは?

 中学生のころ、BzやWANDS、ミスチルに憧れ、バンドで歌いたいと思ったのが原点です。倉庫から父のギター引っ張り出してきて弾いていました。高校に入ってから本格的に始め、パソコンを使って自分でCDやオリジナル曲を作ることも始めました。

―卒業後は音楽の道には進まなかったのですね。

 担任の先生から「つぶしが効くように大学に行っておいたほうがいい」と言われ、深く考えずに神戸大学法学部に入ったものの、自分が来るべきところじゃなかったと(笑)。オリジナル曲を作ったり、ライブ演奏をしたりと学外で活動をして、「音楽でやっていける」という手応えをつかみ、両親を説得しました。

―反対されたでしょうね。

 4年間で大学は卒業すること、今後は親を一切頼らない、バイトしながらなどと考えず音楽一本で食べていくこと、というのが条件でした。

―厳しいですね。

 無収入の状態ですから、飛び込み営業をして必死でした。社会に出てこのパッションをずっと維持し続けることができるのかと親としては心配だったのでしょうね。そのお陰で、自分の中で覚悟が決まったと今では感謝しています。

―それから十数年、パッションを維持してきたのですね。

 神戸を拠点にして、自分の力でやっていくと決めていましたので、個人事業主としてどうしたら活動を広げていけるかを創意工夫する面白さもあって続けてこられたと思っています。ありがたいことに、人とのつながりが広がり、少しずつ仕事も増えてきました。

―震災を伝えようという思いはいつから?

 震災当時は中学2年生で、とても怖かった記憶があります。直接の被害は受けなかったのですが、先生からの提案で募金活動や仮設住宅訪問などを経験しました。それが震災を伝えようという原点になったと思います。そして東日本大震災がそこから一歩踏み出すきっかけになりました。

―ボランティアに行かれたのですね。

 震災2カ月後に宮城県石巻へ行きました。「作業の後、避難所で慰問演奏をしませんか」と提案いただき、お受けしたものの、歌で喜んでもらえるのか?何を歌ったらいいのか?結論が出ないままヒット曲がいっぱい入った歌集を持って行き、「聴きたい曲をリクエストしてください。よかったら一緒に歌ってください」と話しました。初めは皆さん躊躇しておられたのですが、最後の「上を向いて歩こう」では隣同士が肩を組み、体を揺らしながら大合唱。「ちょっとだけ気分が晴れました」と言っていただきました。今までで一番、「音楽やっていて良かった」と思えた瞬間でした。

―考えが変わった?

 ボランティアは自分がやりたいことをやってあげるのではなくて、立ち直るためのお手伝いでなくてはいけない、音楽でこんなに喜んでもらえるなら心の面で関われることがいっぱいあると気づきました。そして「また来てね」と言われ、考える前に「また来ます!」と答えていました。

―防災・減災を伝えようという思いに向かったのは?

 東北で聞かせていただく教訓には学ぶところがたくさんあるのだから、神戸で共有して広めなくてはいけない。でも、自分には体系立てた知識も発信力もない。そこで、兵庫県が実施している半年間の講習と実地訓練を受け、防災士の資格を取りました。のちに、同じく防災を音楽で伝えたいと大学院に入った、KAZZさんを紹介していただきました。

―同じことを考えていた?

ご自身も神戸で被災し、語り部として伝えてきていましたが、「だからどうするか」を話す時期にきていると感じていたそうです。そのために、もっと防災のことを知って、音楽を通して伝えられたらいいなと考えていた時に、兵庫県立大学の防災大学院ができることを知ったそうです。

―防災を音楽でどう伝えるのでしょうか。

 「ぼうさいジャンケンポン」という歌を作り神戸市教育委員会の協力で全小学校に配布していただきました。子どもたちは楽しんでくれています。でも防災の歌を作っても若い人たちに身近には感じてもらえない、届かない人たちがたくさんいる。悩んでいたときに、KAZZさんから「一緒にやろう」と誘っていただきました。今までとは違うところにも伝えられる。このチャンスを生かすために、堅苦しい防災ソングを作るのではなく、まずはカッコいい曲を作っていろいろな人たちに聞いて受け入れてもらい、メジャーデビューを目指す。自分たちが有名になったら、防災のことも聞く耳を持ってくれると考えました。

―どんな活動を?

 「Bloom Works」を結成しCDを作り、全国ツアーを回っています。ただし、曲の中には必ず、「大切な人を守る」というメッセージを散りばめ、時には防災用語も盛り込んでいます。来年4月には、参加することで自分の身を守る行動につながる音楽フェスを開催予定です。それに向けて一人でも多くの人に知ってもらおうと活動中です。

石田さん(右)とKAZZさん

防災も環境も福祉も、音楽でつなぎたい

Profile
1980年、神戸市生まれ。兵庫高校、神戸大学法学部卒。2003年よりシンガーソングライターとしてプロ活動を開始。音楽活動のほか、神戸学院大学「地域学」非常勤講師、篠山市観光大使、防災士、ひょうご防災リーダー、第一回環境社会検定合格「エコピープル」、テレビタレント、ラジオDJなど幅広く活躍中

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