2018年
7月号

神戸鉄人伝 第103回 声楽家 安藝 榮子(あき えいこ)さん

カテゴリ:絵画

剪画・文
とみさわかよの

声楽家
安藝 榮子 (あき えいこ)さん

 ホールに響く柔らかで温かい歌声。歌詞が明快に耳に飛び込んできて、言葉が心を揺さぶります。阪神・淡路大震災で被災したことを忘れず、世界の被災地を支援するためのチャリティーコンサートを精力的に続けておられるソプラノ歌手、安藝榮子さん。「この秋、様々なジャンルの皆さんとのコンサートを計画中。お楽しみに!」とおっしゃる安藝さんに、お話をうかがいました。

―声楽の道に進まれたきっかけは何だったのでしょう?

 高校のコーラス部の先輩に、テノールの西垣俊朗さんがいらしたんです。おおいに影響を受け、音大に進みたいと思うようになりました。ピアノは小学校2年生から習っていましたが、声楽の勉強は高校2年生から。高校の音楽の先生にソルフェージュを特訓していただき、アルト歌手・井原直子さんの師である平田勝先生に紹介してもらいました。大阪音楽大学へ進学して、以来ずっとこの世界です。

―卒業後はやはり海外へ?

 大学院二回生の時、第6回イタリア声楽コンコルソでミラノ大賞をいただきました。でも海外留学はせずに教員になり、学校の夏季休暇などを利用してウィーンやミラノへ講習を受けに行きました。ソリストとして学びに行くと言うより、教える立場にある以上自分を磨くことを続けようと思ってのことです。才能ある歌手が、指導者として一流とは限りません。歌ってみせることも大事ですが、理屈もわかっていないと指導はできないものです。

―教えるためには理屈も必要だと。

 なぜここは「f(フォルテ=強く)」で歌うのか?という問いに、「fって書いてあるでしょ」と答える先生を見て、自分で理論を勉強しないとダメだ、と痛感しました。ヨーロッパの先生は、フレーズやアクセントを踏まえて理路整然と説明してくれます。私もきちんと教えられる先生でありたい、少なくとも「一緒に考えよう、研究しよう」という姿勢でいたいと思って、ずっと勉強を続けています。

―現在、音楽を学んだ方はどんなお仕事を?

 音大を卒業しても仕事が無い、と思い込んでいる学生もいますが、音楽の仕事は教員やピアノ講師だけではありません。大阪音楽大学には電子楽器で商業音楽などを作る「ミュージッククリエイション」、イベント企画や演奏者をサポートする仕事を学ぶ「ミュージックコミュニケーション」などの専攻があります。ぜひいろいろな分野に挑戦して欲しいですね。

―さて、話題の「体幹トレーニング」による発声は、カルチャー教室でも人気とうかがいました。

 人間、息を吸い込むのは肺。肺のある場所、鎖骨から肋骨に守られているエリアは広がりませんが、肋骨の下の腹部は広がりますよね。その可動域を有効に使って横隔膜を動かすために、腹直筋、腹斜筋、そしてインナーマッスルである腹横筋を鍛えることが必要になるわけです。声楽家はアスリートに近いところがあって、私もマッサージに行くと「どんな運動をされています?」と尋ねられます。

―年配の方の指導もされているそうですが、声は年齢とともに出なくなるのでは?

 そんなことはありません。体幹は「体管」でもあります。体の中心に「管」を感じてそこに空気を通す感覚、言わば身体を管楽器に見立てた感覚で声を出す。周囲の空気を震わせるために喉で力むのではなく、背筋の底から頭頂に向けて、先程のインナーマッスルに支えられた声が出せれば十分です。この発声法で、私の生徒は90歳でドイツ歌曲やオペラアリアを歌っていますよ。

―これからの活動について教えてください。

 9月8日に東灘区のうはらホールで「チャリティーコンサート・安藝榮子と仲間たち〜ひょうごの女流アーティストVol・1」を開催予定です。兵庫県下で活躍中の女流演奏家や作家とのコラボレーション!それぞれのお仕事と個性をお楽しみいただければ嬉しいです。
(2018年4月25日取材)

「学生時代は、バスガイドのアルバイトをしていました」と安藝さん。「京都や奈良のガイド本で勉強して、大勢のお客様を案内しました。おかげで度胸もつきました」

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

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