8月号
魅力のウォーターフロント 神戸ハーバーランド20周年
「海につながる文化都心の創造」をテーマに、1992年にまちびらきがおこなわれた神戸ハーバーランド。それからちょうど20年。神戸っ子自慢のウォーターフロントはどのように発展してきたのだろうか。神戸ハーバーランドのキーマンたちに、過去、現在、そして未来のハーバーランドについて語り合っていただいた。
貨物駅の跡地から海辺の文化都心へ
─神戸ハーバーランドが誕生した経緯について教えてください。
松下 ちょうど30年前の1982年、国鉄(当時)の湊川貨物駅の機能が終わり、そのヤードの跡地や三菱倉庫の臨海部の土地を活用し、神戸都心の西の核として、新しいまちづくりをしようということで、地元のみなさんや学識経験者、国などさまざまな関係者とこの地域にどういう施設を設けたらいいのかを考える施設立地検討委員会を1985年からはじめました。
翌年2月に最終報告を提出しましたが、これがちょうどいま立地している施設の原型となっています。その後、完成後に住民・商業者・あるいは権利者のみなさんとまちをどう運営するかを検討する運営協議会という組織がつくられ、その運営協議会の実務を担ってきたのが現在の神戸ハーバーランド株式会社(旧ハーバーランド情報センター)です。
運営協議会では地域の中での問題対応や、防災対策、駐車場や交通の管理、商業施設のプロモーションなど、それぞれの部会を結成して議論し、実現しています。20年間続けてきた運営協議会は、この6月に国土交通大臣のまちづくり功労者表彰を受賞しました。20周年を迎えるにあたって、大変名誉ある事だと思います。
─まちづくりの準備段階で、企業ともかなりやりとりをされたのですね。
松下 計画を実現するために、企業各社にそれぞれのゾーンで、事業コンペで提案をいただいて、さまざまな施設が立地しました。もちろん、20年経っていますから、時代時代に合わせて変わってきつつありますけれど、今も「海につながる文化都心の創造」という大きなテーマに変わりはありません。
─三菱倉庫も開発に深く関わっていますね。
宮崎 三菱倉庫の神戸支店はもともと兵庫や和田岬にありましたが、そこに三菱重工が神戸造船所を設けることになり、その代替地がまさにこのハーバーランドの高浜地区で、移ってきてちょうど今年で105年になります。その後新港やポートアイランド・六甲アイランドの開発で、物流の拠点が変わってきた中で、神戸市としても副都心がほしいという話がありました。商業施設やオフィスに若干経験がありましたので、神戸市との共同事業に入っていきました。
社内で神戸支店は「西の本店」と言われていて、私が入社した35年前は利益の6割を稼いでいました。そういう意味でも三菱倉庫は神戸市民に育てられた会社だと私自身思っています。ですから神戸市民に恩返ししたいと、いまモザイクの観覧車に文字や神戸市の風景画像を出していますが、神戸マラソンや清盛などのPRにも、神戸市に無料で使っていただいています。
─コンチェルトは今や高浜岸壁の女王ですが、パソナグループも当初からハーバーランドに関わってきたのですね。
南部 1995年の震災以降です。人材関係の会社ですので、震災復興では雇用の創出が第一義のミッションと考え、当時日本初のエンターテインメント型デパートメントストアの神戸ハーバー・サーカスをつくりました。地上5階地下2階の円形の建物でしたが、開業から閉店まで8年間、店内にトラム(電気自動車)を走らせ続けました。一坪ショップでは当初出店申込みが300倍にもなりましたが、30余店舗震災でお店を失った人たちのために提供しました。最終的に最大1500人の雇用を創出したと自負しています。
─専門分野外でしたから、ご苦労もあったでしょう。
南部 そうですね。人材ビジネスに特化していたので、デベロッパーという仕事ははじめてでしたが、契約満了まで8年間、周辺の皆様のお力添えもあり、ある程度結果を出せたと思います。
─それがいまのコンチェルトに結びついているのですね。
南部 はい。神戸ハーバー・サーカスがオープンした翌年の1997年からコンチェルトに関わってきました。
─DN建物管理はどのような会社ですか。
吹田 DNのDはダイヤモンド、つまり三菱倉庫で、Nは日本生命です。ハーバーランドは三菱倉庫が単独で開発した施設と、三菱倉庫と日本生命で開発した施設がありますが、その共同で持っている施設をマネジメントする会社として、三菱倉庫と日本生命が2:1で出資してできた会社です。管理しているのはダイヤニッセイビル、旧阪急百貨店、Ha-Re館、キャナルガーデンなどで、結婚式場のアニヴェルセルも間接的に含まれます。業務は主にオーナー代行で、ビル管理そのものだけでなく、イベントや植栽などの環境整備も私どもで計画しておこなっています。キャナルガーデンにはクリスマスになると大きなツリーがお目見えしますが、それも私どもで企画管理しています。
安心して寛げる非日常の環境を
─この20年間で商業施設も変わってきましたが、これからの展望をお聞かせください。
松下 オープン当時からアーバンリゾート都市が一番相応しいと考え、六甲山と神戸港という神戸の立地を大切に、都市生活をしながらリゾートを感じてもらうことを目指してきました。時代の流れでさまざまな変遷があり、阪急百貨店の後にはイオンモールに、ホテルニューオータニの後にはホテルクラウンパレス神戸に入っていただきますが、これからもそのような考えに基づいてやっていただきたいですね。
そしてできれば若い人だけでなく、ファミリーやシニアまで幅広く、海の雰囲気や神戸らしさを味わっていただく。都会ではあるけどホッとしていただける町になればいいですね。映画のロケも多いですし。20周年を機に、都市型リゾートとして神戸のフィッシャーマンズワーフを大々的にスタートさせ、ウォーターフロントで神戸らしい景色を見ながら神戸特産の美味しいものを味わえるようにもしたいですね。
宮崎 お台場や横浜など、全国にはウォーターフロントがいくつかありますが、意外と海が遠いのですね。ある程度の規模で海が近いのは、ハーバーランドだけなんですよ。今回新たに参入していただくイオンの岡田社長は、これまでの一般的な郊外型でなく都心に近い準郊外型で広域からも集客したいと言う思い入れがあります。ですから私どもも、時間消費型の施設をつくっていきたいと思っています。そして安心してファミリーで楽しめるようにしたいですね。
─平日の集客もひとつの課題だと思いますが、賑わせる方法はありますか。
南部 コンチェルトとしては、ひとつは他種企業様と提携させて頂き、平日のお客様を増やす工夫をしております。これで或る程度コンスタントにおいで頂いておりますし、何より、余裕のある平日を利用し船の魅力を知って頂いています。また、特にアジアからの外国人のお客様も重要です。昨年は東日本大震災で減りましたが、一昨年は神戸市で約52万人のインバウンドの うち、約半分がハーバーランドに来られています。これは大きな強みです。インバウンドは将来的にも期待できる大きなファクターです。
松下 明石海峡大橋や阪神なんば線の開通、そして今年は清盛のおかげで、お客様は広域的に広がっています。平日は平日だからこそ来やすいメンバー、例えばお子様連れでのお友達同士、シニアのみなさんが安心して来られるような環境を、みんなで工夫して作っていくことも必要だと思います。
─ハーバーランドの魅力は景観とアクセスですが、三宮との差別化をどのように打ち出していきますか。
吹田 やはりウォーターフロントというのが一番の違いです。私は以前海外での仕事が多く、その合間に欧米のウォーターフロントを訪ねましたが、ウォーターフロントには「非日常的」という要素があります。アメリカではウォーターフロントは観光スポットでありながら、地元住民たちも行って買い物をします。そういう意味ではわれわれが管理している施設とモザイクとの関連性を高めていく必要があると思います。そしてもう一つ、「神戸らしさ」を打ち出すことも大切です。ビーフや洋服だけではなく、神戸ブランドや神戸のハイカラさをを強く押し出すことができればいいのではないかと思います。
リソースを活用し進化して次の10年へ
─エリア内には神戸新聞やラジオ関西、こべっこランドや産業振興ビルもあります。エリア内でともに情報発信していくことも大切ですね。
松下 運営協議会の中で情報を共有して、20年を機会にさらに良いコミュニケーションで幅広く、タイミング良く発信できるようにしていきたいですね。
また、三宮にはない魅力として、大倉山公園から図書館~体育館~文化ホール~湊川神社~松方ホールを経て海へという文化軸があることで、その中に神戸新聞やラジオ関西がありますので、これを大切にすることで、都心の西の核として高い文化性を維持していきたいと思います。交通の便でも鉄道のみならずバスターミナルがあり、シティループバスや水陸乗用車も乗り入れていますし、駐車場など車にも十分対応しています。5千台分近くある駐車場も有効に活用できるようなシステムも考えていきたいですね。
南部 岸壁をどう上手に活用するかというところも、ひとつのポイントだと思うのです。毎月第一日曜日は、ハーバーマーケットやライブイベントが賑やかに開かれますが、もうひとつ、私が副会長をしている神戸ウェディング会議が提唱する「プロポーズの日」でもあります。7時59分にモザイクも観覧車も照明を落とし、ポートタワーも砂時計のバージョンになって、1分間のプロポーズのための仕掛けをするのです。神戸ウェディングを推進するための試みですが、PRとして3か月ごとに岸壁でイベントをしています。モザイクは、観客で鈴なりの状態です。良いタイミングで、船が入ってきてそして出て行く。岸壁でイベントをすると、神戸って素晴らしいと皆さんおっしゃいますね。ハーバーランドは「神戸らしい舞台である岸壁」という財産を持っているのです。
宮崎 フィッシャーマンズワーフも常設のものはなかなか難しいのですが、岸壁を利用して週末に実現できればいいなと思っています。イオンモールですが、神戸三田などこれまでのイオンモールと全く違うものをつくるとの指示を受けて現場のスタッフが動いています。神戸市民はプライドが高いので、オンリーワンにならないといけませんので、関西初出店のブランドを誘致するなど神戸市民のみなさまに応えられるような施設にしたいと思います。また、来春にはモザイクガーデン跡に、子どもに人気のアンパンマンのテーマパーク「アンパンマンこどもミュージアム&モール」が西日本で初めてオープンします。神戸市民のみなさんをはじめ、各地から多くの方々に来ていただき、ハーバーランド全体の活性化につながる施設になると思っています。
吹田 キャナルガーデンも外構から工事がスタートしています。今までキャナルガーデンには表を向いて店が少なかったのですがキャナルガーデンに面したお店やショーウィンドウ、ビルの間のブリッジもできる予定で、工事が完成する来年の春には大いに賑わうようになると期待しております。
─8月のハーバーランドの日には、20周年記念イベントをされるでしょうか。
松下 4年前から地域のみなさんと手づくりでイベントをしてきましたが、20年の今年からはよりたくさんの方々に来ていただけるよう8月第一日曜日の8月5日をハーバーランドの日として、商業施設のみなさんにも協力をいただいてイベントをおこない、20周年記念事業のスタートといたします。記念事業ではみなさんと話し合いながら、清盛ドラマ館がありますので源平綱引き合戦とか、エリアを花いっぱいにしてフラワーコンテストを開催するとか、臨海部をめぐるジョギングコースを設けるとかさまざまなアイデアを実現したいと思っておりますし、良いものであれば今後も継続していきたいですね。
また、建築家の安藤忠雄さんにも記念講演をしていただきたいとも思っています。そして最後は、来年春にイオンモールがオープンしますので、イオンとタイアップしてウェルカムイベントをおこなって盛り上げていきたいですね。いずれにせよこの20年を機に、地域のみなさんとともにいろいろなことを実行していきたいと思います。実行することによって「もう一度行ってみよう」「これからも行ってみよう」と思っていただけるハーバーランドになるようにがんばっていきたいと思います。