2012年
8月号

[海船港(ウミ フネ ミナト)]ライン河クルーズ⑧  モーゼル河の山城を訪ねる

カテゴリ:観光

文・写真 上川庄二郎

【モーゼル河畔の名城・コッヘム帝国城】
 今回のライン河クルーズで、唯一訪ねる機会のあったコッヘム城について記しててみよう。
この城は、日本で言えば、琵琶湖畔にたたずむ彦根城か、木曽川を見下ろすようにして建つ犬山城を彷彿とさせる。
 現地でもらった資料から引用させていただくと、「コッヘム帝国城(ライチェスブルク城が正式名)は、典型的な山城で高位置にあるため、守備隊にとっては攻撃者に対して有利でした。四個の城門・城壁濠がその安全を保ってくれました。最後の逃げ場は強大な天守閣で、壁の厚さが3.6mもあり、千年の間、古城の歴史を見詰めてきました。
 コッヘム城は、ライン地方のプファルツ伯爵の居城でした。その後、シュタウフェン家出身の皇帝の帝国城となり、最終的には選帝侯でもあったトリア大司教の所有となりました。
 1689年、コッヘム帝国城はライン河やモーゼル河のほとんどの古城と同じような運命をたどり、フランス軍によって破壊されてしまいました。その後廃虚は再興されました。その際に、ゴシック様式の古城は新ゴシック様式で再建されました。1978年以来、古城はコッヘム町民の所有となりました」。
 30分ほどぶどう畑の坂道を歩いて城にたどり着いた。城内を探訪するとしよう。
【食堂】
「この部屋の贅沢な木彫り装飾には驚かれるでしょう。壁・ドア・家具などに木彫が施されています。大きなブッフェー戸棚(4.5×5.0m)は、格別はっきりと刻み込まれていて、そこにデルフト焼き陶器がたくさん飾られています。焼き模様入りの角材天井梁も美しく、ワッペン用の鷲のデザインが描かれています。ルネッサンス様式の釣合いの取れた良い感じがこの部屋にあります。
 暖炉は鋳造の鉄板で、それに十字架を貼り付けたシーンと、誠実と慈悲深い愛情(フィデスとカリタス)のシンボル像が焼き付けられています。壁は装飾オーナメントで、金箔が貼られていました。壁にかかっている絵画は、18世紀のイタリア画です」。
【ゴシック部屋】
 「この部屋がゴシック部屋と呼ばれるのは、ゴシック様式天井造りからきています。ケメナーテといわれる小間は婦人の部屋でした。この言葉は、ラテン語の“カミナータ”からくるもので、暖炉で暖房できた部屋と言う意味です。
 ここの暖房は、デルフト焼きのタイルが張られています。家具は17世紀と18世紀のオリジナルで、当時は寄木細工(イーブル=テクニック(BOULLE-Technik)と呼ばれる。寄木細工のバロック式小箪笥・くるみの根元から作ったオランダ産のセクレタリ(机)があり、肖像画は17世紀と18世紀のものです」。
【ロマネエスク部屋】
 「ロマネエスク部屋も、天井建築構造の十字形ドームと、ドア上の筒型穹窿(きゅうりゅう=半球形)からそう呼ばれています。高い壁板張りは、17世紀の長持ちから取った厚板(星座と使徒の木彫り模様)をはめ込んでいます。
 暖炉の後ろ壁は、デルフト焼きのタイルが張られています。天井のシンボル像は、枢機卿(カーディナル)の四徳(勇敢、賢明、正義、節制)を表示しています。
 家具は、16世紀の支柱付き箪笥です。
 城から逃げ出して町に行ける秘密のドアがあります」。
【城門上の廊下】
 「この廊下は、天守閣の回りの建物と岩場の縁に建てられた建物とをつないでいます。やはり、ここも天井は屋根の形にマッチして美しく造られています。
 ランプは半身女像の小シャンデリアで、中世時代には魔除けのシンボルでした。
 横木の張りには、格言〝美しいものは、利用するよう無思慮に強いてはならない〟が焼き付けられています。
 廻り階段を降りれば狩猟の間へ行けます」。
【狩猟の間】
 「この地域の猟銃が狩猟の〝勝利品〟(トロフィー)として壁に掛けられています。この部屋にも美しい装飾的な張りがあります。また特別華美な16世紀の支柱付き箪笥も置かれています。
 窓には、窓ガラスの初期の〝ブッツェンシャイベン〟といわれる円盤ガラスがはめられています。窓には城主の着色ワッペンも付けられました。
 〝シュッレプカンネン〟と称される錫の取っ手付きの壷は、中世騎士の一日分のワインが盛られていました(昔ドイツでは一年間に一人当たり平均160ℓのワインを飲んだといわれる。今日ではただの24ℓだけです)。
 部屋を出る際には、豪華に飾られた扉に注目してください」。
【騎士の間】
 「場内で一番広い部屋で、太い円柱が天井を支えています。柱頭も立派な木彫りです。大暖炉の正面には、上部に紋章の獅子が座っています。この部屋には二枚の大きな絵画を展示していますが、一枚はティツィアン画家派の作品で、『ダナエ(アルグス王の娘=ギリシャ神話)』と、もう一枚はペーター・パウル・ルーベンス画家派の『ザビーナの女達の略奪』(オリジナルはマドリッドのプラド博物館にあります)。
 美しい日本製の骨董品の花瓶が数個あり、家内家具は19世紀上流社会の居住スタイルの印象を与えています」。
【武具の間】
 「素晴らしい木彫り手擦りの階段は見ものです。
 ファッサード(家の真正面)のデザインを真似た扉を付けた大箪笥は、城内で最も高価な家具で、16世紀のルネッサンス様式時代の寄木細工が豊富に使われています。
 甲冑は、模造品ですが16世紀に流行したものとよく合ってます。一人の騎士の武具、武器や馬も含めて、当時、乳牛約45頭分に値しました。壁にある武具は騎士に供する兵士の武器です。短い戦闘用鉞や斧、長柄の矛は槍先に鉞(まさかり)を組み合わせたもの等々です」。
【バルコニー】
 「バルコニーから眺めると、何故、ここに千年前に古城を建てたかがよく分かります。中世時代には、ドイツとフランスを結ぶ主要路であった河を支配するためでした。
コッヘム城は関税城でした。ここでモーゼル河を鎖で封鎖し、上から巻き上げ機械と綱を使って、鎖を上げたり沈めたりできました(このような記述を読むと、瀬戸内の水軍と相通ずるものを感じる)。
 古城は、河より100mも高いところにあります(この情景を見ていると、木曽川を見下ろす犬山城の方がよりぴったりかもしれない)」。
【城中庭】
 「中庭で、今まで部屋から部屋へ行った順にもう一度確認できます。七部屋を見学しました。その他の部屋は空き部屋になっていて、家具が入っていません。
 城門の東側には礼拝堂、その隣は騎士の館で、ここには城主の客たちが宿泊しました。
 城の井戸は、深さが50mあります」。
【円塔】
 「円塔(魔女の塔という)は、第三門と第四門の間の見張りの塔でした。1689年の城塞破壊の時も持ち堪えました。この円筒は、前の城とは違い、壁を上塗りしています。
 理由は、昔の城塞は上塗りされていたからです。城郭専門家は、上塗りの残りの色彩で分かります。昔のコッヘム城は色彩豊であったらしい。現在のコッヘム城も当時の着色を偲ぶ感じがします。
 再建者は、天守閣の西側に4m×8m大の色モザイクを作らせました。危険から守ってくれる守護神クリストッフェルスの像をモザイクに表現しました。
 コッヘム城が建てられた岩地盤を見ますと、ライン地方の板岩(スレート)の山脈の部分でもあるドイツ中部山地の構造がよく分かります。
 板岩は約40度の角度で傾いて褶曲しています。正面は非常に砕けやすくなっています。板岩地盤補強はいつもやらなければなりません。これが古城維持を非常に高くつくものにしています。
 以上で、城内見学は終わりです」。

 次回は最終回です。これまでのライン河クルーズの連載を振り返り、改めて瀬戸内海を考え、見直される瀬戸内海クルーズとそのウイークリー・クルーズの実現に向けての期待について述べてみたいと思う。

かみかわ しょうじろう

 1935年生まれ。
 神戸大学卒。神戸市に入り、消防局長を最後に定年退職。その後、関西学院大学、大阪産業大学非常勤講師を経て、現在、フリーライター。

〈2012年8月号〉
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