2012年
8月号
ウイトコが製作した衣装を着るジュニアスケーター

フィギュアスケートをコスチュームで応援

カテゴリ:経済人

ウイトコ㈱はフィギュアスケートのコスチュームでは日本有数のメーカー。
作り始めたきっかけや、生産工場を置くベトナムについて中田社長にお話いただいた。

フィギュアスケートのコスチュームを作り始めたきっかけ

私の長女が9年前から約5年間、ポートアイランドのスケートリンクでプロのコーチについてフィギュアの練習をしていました。当時の練習用ウェアはアメリカのネットショップで購入するしかなく、普通のトレーニングウェアとパンツで練習するのが一般的でした。氷の上で転ぶと寒くて冷たいんです。幸い、弊社はスキー・スノーボード用手袋の素材や縫製のノウハウを持っていますので、試しに作って長女に着せてみました。「転んでも水が浸み込まない」「暑くても内に熱がこもらない」と好評で、他のスケーターの皆さんからもご要望をいただくようになりました。これはビジネスチャンスになると考え、大手メーカーさんにもお話したのですが、「参入するには市場が小さ過ぎる」とのこと。そこで、「マリーナアイス(marina ice)」を商標登録して、自社ブランドで始めるに至りました。ニット製が一般的だったスケーター用の手袋も何とかならないかと、ウェアと同じような防水・はっ水素材と弊社の手袋縫製のノウハウで作ってみたところ好評で、今ではベストセラーになっています。

素材の知識と縫製技術が役立つ

弊社はスキー・スノーボード用の手袋に使っているゴアテックスやはっ水皮革などの高機能生地に精通しています。例えば、練習用のウェアは、外からの水はほぼ完全にはじきますが、汗は中から外へ出し、裏側は起毛になっていますので肌触りが良いのが特徴です。競技用のコスチュームも高機能生地を使い、スケーターの生の声を聞きながら工夫を凝らしていますので、世界を舞台に活躍する日本選手の皆さんにも愛用いただいています。また、メジャーな大会で選手が演技を終わった後に投げ込まれる花束を集めるジュニアスケーターたちの衣装も、代々作らせていただいています。
ニッチな分野ですので今のところ国内にライバルメーカーはなく、従って国内の需要を満たすのが精一杯です。しかし、将来は更に生産力を増強して需要の多い北米へも販路を広げていきたいと考えています。

貿易商社から始まり、今はメーカーに徹する

在日ポーランド大使「ウイトコスキー(WITKOWSKI)」が在任中に日本女性と結婚し、退任後も日本に残り、1887(明治20)年に横浜と神戸に貿易会社を設立したのがウイトコ㈱の始まりです。私の祖父が戦前から神戸の総支配人として勤め、戦後引き継ぎました。1989(平成元)年に現在の組織にしたのは、私の父で、会長の中田悌二郎です。父から好きな分野の勉強するように言われていた私は京大農学部に進みました。卒業後、会社勤めをしたのですが、父と同じ仕事がしてみたいという思いが募りウイトコに入社し現在に至っています。私は16代目の社長だそうです。
弊社は貿易商社として発展してきましたが、厳しいビジネスの世界で生き残るのは困難と判断し、現在はメーカーに徹しています。スキー・スノーボード用手袋はOEM(相手先ブランド名製造)で、国内はもちろん、北米、ヨーロッパの大手メーカーさんにお取り引きいただいています。

付加価値の高いものが作れる国・ベトナム

人件費の高騰に伴い、工場を韓国、台湾、中国と移してきました。その後、タイ、マレーシア、インドネシア、中国東北部などを調査した結果、ベトナムに設立を決定しました。その際、大変お世話になったマキシンの渡邊社長のご尊父さまの矢倉正之さんに、ベトナムでの有力なパートナをご紹介いただきました。これはとても有り難いことで、ベトナム工場は大正解だったと思っています。
ベトナム人は勤勉で手先が器用ですから、縫製作業には向いています。コスト面の安さばかりが注目されますが、ベトナムという国は安いものを大量に作るというより、付加価値の高い製品を作るのに適した国です。対日感情は危惧するところでしたが、むしろアジアの中の先進国・日本を目標としてくれているようです。
工場はハイフォン市という人口が約170万人、昔からハノイの玄関口で、外国人も多い港町にあります。神戸とよく似た町です。1993(平成5)年設立当初から約7年間は駐在員を置いていましたが、現在は現地社員に任せることができるようになり、私と社員が交代で出張する体制になっています。現地で、約250人のベトナム人従業員が朝早くから夕方遅くまで一生懸命働いてくれている様子を見ると、彼らの家族も含め千人は超える人たちへの責任の重大さを痛感しています。
今、日本の企業はベトナムに注目していますが、コストの安いものを作るのではなく、良いものをじっくり腰を据えて作るという認識を持って欲しいと思っています。そして工業だけではなく農業もしっかり守っていって欲しいとも思いますね。

ウイトコが製作した衣装を着るジュニアスケーター


スノーボードに欠かせない手袋も数多く生産している

縫製、検品を行うベトナム工場。ベトナムには手先の器用な人が非常に多い


(左3点)一流メーカーのスキー・スノーボード用手袋もウイトコで作られている
(右)転倒してもダメージが少ないスケート用パンツ

中田 晴久さん

ウイトコ株式会社 代表取締役社長 
1979年3月京都大学農学部農林経済学科卒業。同年、株式会社小松製作所入社、1982年1月株式会社小松製作所退社。1982年1月渡独、1982年4月FirmaOberle&Co.入社。1984年1月FirmaOberle&Co.退社 と同時に帰国。1984年1月ウイトコ株式会社入社、1989年3月ウイトコ株式会社取締役就任。1993年4月ベトナム・ハイフォン市に縫製工場設立、2000年7月ウイトコ株式会社 代表取締役社長就任、現在に至る。

〈2012年8月号〉
ぶらり私のKOBE散歩 Vol.3
フロントアート
ボイジャー・オブ・ザ・シーズ神戸に
特集 ー扉「アジアへの視線」
ベトナムに 上下水道を
環境ビジネスで 夢をかたちに地域貢献
アジアの海産物を珍味に
装置産業の未来を拓く
危険物で世界ネットワークを
フィギュアスケートをコスチュームで応援
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兵庫のロータリーを率いて
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