2012年
12月号
手間ひまを惜しまず、ゆっくりと時間をかけてつくるのがツマガリのこだわり

ケーキハウスの若い星

カテゴリ:グルメ, スイーツ・パン

ケーキハウス ツマガリ 取締役 津曲 泰弘さん

1994年兵庫県西宮北高等学校卒業。1996年日本菓子専門学校卒業、フランス菓子16区入社。2002年ケーキハウスツマガリ入社。200年西日本コンテスト味と技のピエスモンテ部門優勝。農林水産大臣賞。2007年全国洋菓子技術コンテスト連合会技術委員長賞。2009年ベルギー研修、ドイツ研修。2012年ジャパンケーキショーピエスアーティスティック部門銀賞。

モットーは「美味しい」
普段から、父の言うことを素直に吸収できるかどうかがすごく大事だと思っています。確かに二代目としての重責を感じ、小さい頃から親の手伝いをしてお菓子をつくってきましたが、最近になって、二代目であることに使命を感じ、使命があること自体が幸せだと感じながら仕事をしています。親子であるということで、父が私に愛情と熱意をもって一所懸命教えてくれます。私もそれに目をそむけずに正面から受け止められるか気をつけています。
中学・高校と柔道をやっていました。相手を倒すには相手のことを考えず、むしろやっている瞬間、鍛えてきた心技体すべてを集中し「無」になったような状態、素直な心というか、そういうふうにならないと体が反応しません。同じように、父が何か言いたい時、今までなかなか入ってこなかったのですが、それは父の真剣さのレベルに自分が達していなかったからです。最近になってようやく、より集中して素直になった時に、お菓子の味の深みが理解できて、父が納得するお菓子をつくれるようになってきました。
素材と向き合う時も同じです。「こうしてやろう」とよこしまな心が出てくると、どんどん素材の良さが消えておかしくなっていく。素直な心になれば素材が勝手に教えてくれ、それをそのまま表現し際立たせるだけのことで、「作る」より「引き出す」「迎え入れる」感じになってくるのです。
父から伝えられた言葉はいろいろありますが、毎日同じ言葉を言ってまして…それは「美味しいか美味しくないか」です。「美味しいものをつくれ」「美味しいものしかつくるな」…。父は「美味しい」と「うまい」ばかりで、それが言葉のほとんどです(笑)。本質的に美味いかどうかが大切なのです。

口溶けの良いクーベルチュールのツマガリチョコレートはこの冬一番のオススメギフト


フルーツやナッツの旨みが豊かなシュトーレン。粉雪のような粉糖も上質なオーガニックシュガーを使用している


オリジナル素材にこだわる
親子ですので、味の好みは似ていると思います。それは母親のつくった同じごはんを食べて育っていますから(笑)。DNA的なものもあるかもしれませんし。
ツマガリでは原材料にこだわっています。アーモンドと砂糖を練ってペースト状にしたマジパンを自社でできるところは全国でも少ないです。マジパンをつくる前の段階でアーモンドパウダーもつくっていますし、アーモンド以外のナッツ類、胡桃やヘーゼルナッツなども自家挽きしています。コーヒーと同じで挽きたてのほうが風味が良く、素材の持つ水分が乾燥する前に使いますので、よりしっとりとしたお菓子になります。
バターは明治乳業さんと専用のバターをつくっています。乳酸菌をブルガリアから取り寄せてバターを試作し、味をみるためにサンプルのクッキーを何枚も焼いて、ツマガリに合う乳酸菌を見つけました。
牛乳は岩手県のしあわせ牧場から直接仕入れています。そこの牛は自然放牧で、飲んでスッと体に入っていく自然の味がします。ほかの素材をスッキリ仕上げ美味いと思わせる、鏡になるような牛乳です。その牛乳を使ってケーキを使っていますので、そこは自慢です。

手間ひまを惜しまず、ゆっくりと時間をかけてつくるのがツマガリのこだわり


酒造会社と共同開発した「純米大吟醸酒ケーキ」


地域の皆さんとともに
ツマガリは地域との関係を大切にしています。西宮市や西宮の商工会と一緒にお仕事させていただく機会も多く、多くのお客様がいらっしゃるお菓子の園遊会は永年続いています。最初は父と地域の方ではじめたのですが、最近になって僕たちの代が中心となっています。また、若手が集まりパティシエ会という会も立ち上げて、お菓子教室の開催や、日本酒の会社と共同でお菓子を開発するなどの活動をしています。父が大好き大吟醸の極上白鷹をふんだんに使ったケーキです。
よく、お店をもっと大きくしないのか、もっと出店しないのかと言われます。しかし、焼菓子も新鮮な商品をすぐ出したいので、すぐに配送できる大阪と神戸までにしております。生菓子は、絶対に本店だけです。素材の新鮮さを追求したいがためです。
今作っている量というのは50コートというサイズのボウルが基準で、この量でつくると美味しいのですよ。だからこの規模でこの売上げという考えなのです。ですから、規模が大きくなることでお菓子が美味しくなる確信があるなら考えます。とにかく「美味しいものがつくれるかどうか」が最優先です。
これからもお客様の期待を裏切らないために、美味しさにより磨きをかけ続けなければいけない、これが第一です。ほかには出来ない美味しいお菓子だと自負していますので、それを守り抜くことは辛いことではなく、楽しく誇りを持ってできることです。そんなに多くを望んではいませんがプラスになるなら新しいことにも取り組んで行きたいですね。
ちょっとロマンなんですが、お菓子だからできる楽しいこともやってみたいですね。例えば本格的なお菓子の家をつくって、子どもたちに夢をもっと与えたい。そんなことができたら面白いですね。

ケーキハウス ツマガリ

TEL.0120-221-071
兵庫県西宮市甲陽園本庄町6-38
営業時間 8:30〜19:30(水曜定休)

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

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