2012年
12月号

楠寺 瑠璃光庵の蕎麦御膳

カテゴリ:グルメ, 文化・芸術・音楽

「料理は修業」心で味わう本物の精進料理

 大倉山の楠寺瑠璃光庵こと廣嚴寺が、もっと気軽に精進料理に親しんでほしいと展待をおこなっている。展待とはもともと修行の休日などに雲水(修行僧)に食事などを供養することで、料理でもてなすという意だ。
 禅宗では座禅や読経と同様、普段の作業である作務も重要な修行とされてきた。料理も作務の一つゆえ、「修行の一環として師から料理を学びますから、禅宗のお坊さんなら誰でも料理ができるのです」と住職の千葉悠晃さん自ら料理を手がける。調理場での真剣なまなざしと無駄のない動きに、「料理は悟ることだよ。拵えることではない」という北大路魯山人の言葉を思い出す。
 膳は基本的に5つの碗で構成され、八寸として手打ち蕎麦がプラスされる。この碗は持鉢といい、雲水が一切の食事をこれでいただく碗。一の碗、古代米の雑穀飯は滋味深く、二の碗の天ぷらはカラリと揚げられ野菜やきのこの旨味、ごま油の余韻が絶妙だ。三の碗の胡麻豆腐は住職自ら額に汗し黒ごまを擂り上げた完全手づくり。舌に吸い付くような食感と豊かな風味。四の碗のおでんはじんわり出汁が染み、五の碗の白和えは具の持つ味や食感が生きている。
 そして特筆すべきは手打ち蕎麦。北海道産の新蕎麦を二八よりやや蕎麦粉を多めに。もちろん、打つのは和尚だ。そば茶を少し加えて風味を増した麺は、田舎蕎麦風に少し太めで、芳味に力がある。となると汁が肝心になるが、その力を受け止めるに十分な旨味があり、驚愕を禁じ得ない味だ。聞けば1日がかりで水で出汁をとり、かえしは2ヶ月も眠らせたものだという。「麺も汁もポイントは水です。ここの地下水を使っているのですが、六甲の伏流水なので水質が良いのです」と和尚。
 シンプルで騙しが効かない料理ゆえ、水のみならず調味料にも心を砕く。蕎麦は東の、煮物は西の醤油を使用、素材に合った味付けにセンスが光る。
 食材を無駄にしないのも精進料理の特徴だ。椎茸は蕎麦で出汁をとり、おでんの出汁、そして具になっている。米のとぎ汁すら無駄にせず、おでんを炊くのに使っている。
 精進とはそもそも心の作用を意味する。命あるものをいただくありがたさや、手間ひまかけた仕事への感謝が、料理をさらに味わい深くするだろう。美味とは、心でいただくものである。

献 立

梅之持鉢三膳 1,000円
竹之持鉢五膳 1,500円
松之持鉢五膳 2,000円(抹茶・菓子付)
※要予約 ※法事での提供も可 ※お座敷利用の際は別途1名につき500円

楠木正成公ゆかりの古刹ゆえ、楠寺とよばれている廣嚴寺。風雅な庭を望むお座敷でも味わえる



手際よく蕎麦を打つ住職。
毎年大晦日には手打ち蕎麦の振る舞いも料理は季節によって変わる。
蕎麦は温蕎麦に変更も可


除夜の鐘(12月31日)
新年への願いを込めた、鐘の音が鳴り響きます。鐘の後は、和尚特製の「年越そば」がふるまわれます。

楠寺瑠璃光庵(廣嚴寺)

神戸市中央区楠町7-3-2
TEL.078-341-1894
地下鉄大倉山下車すぐ