2012年
12月号

神戸市医師会公開講座 くらしと健康 63

カテゴリ:医療関係

生命を救い、医療を支える「善意」の献血

─なぜ献血が必要なのでしょう。
置塩 血液は人間の生命維持に不可欠なものです。けがや病気、手術などの時に血液の成分が足りなくなると、それを補うために輸血が必要となります。血液を人工的には作れませんので、その血液を集めるには献血しか方法がありません。献血血液は全血では約3週間、成分輸血の血小板では4日間しか保存出来ないため、新鮮な血液を絶えず確保しなければなりません。そのため日々一定の血液を善意によりいただく献血は大変重要な事業です。
─献血にはどのような種類があるのでしょうか。また、献血可能な条件も教えてください。
置塩 全血献血と成分献血があり、全血献血は400ccと200ccの2種類があり、約9割が400cc献血です。成分献血は血しょう成分や血小板といった血液の一部だけを採取し、残りは体内へ戻すもので献血者にとって比較的負担が軽いものです。400cc全血ですと男性17歳以上、女性18歳以上で体重は男女とも50 kg以上でないと献血できません。また病気治療中、妊娠中、貧血のある方等は献血出来ません。ほかにも細かい基準があります。
─献血をすることにより健康を害することはないのでしょうか。
置塩 人間の血液量は男性では体重の約8%、女性は約7%くらいです。体重50 kgの男性ですと全身の血液量は約4000ccですので、献血量400ccは全体の約10%になります。人体は15%位までは急激に血液が失われても影響がないといわれています。安全を最優先に献血が行われていますので過剰に心配することはありませんが、一般の医療と同様に一定のリスクは避けられません。一時的な気分不良などの症状や、針を刺すことによる皮下出血や神経損傷もごくまれに起こります。
─献血で集められた血液はどのように活用されるのでしょうか。また、安全なのでしょうか。
置塩 献血血液によって新たな病気が起こることがないよう厳正な基準によりチェックし、約6%は不適血液として廃棄されているようです。基準をクリアした安全な血液は輸血に使用されるほか、血しょう中の特定のタンパク質を抽出・精製して血液製剤を作り血液病等の治療にも使用されます。
―本来の治療以外にも使われるのですか。
置塩 使われることがあります。使用期限を過ぎた血液や廃棄すべき残余血液のほか、適合している血液も含めた献血血液を利用して研究開発をすることが出来るようになっています。もちろん献血希望者よりインフォームド・コンセント(説明と同意)を得たうえでの利用ですが、倫理問題・個人情報に関わるヒト遺伝子解析などにも利用可能であることが厚生労働省の「献血血液の研究開発での使用に関する指針について」からわかります。善意の献血者は、病気の方に血液を提供する目的で来られ、研究材料としての利用は考えておられません。輸血や血液製剤以外に、ヒトゲノム・遺伝子解析も含む色々な研究に使われることを知れば、献血することをためらう人もいるでしょう。十分理解された上で同意出来るのか疑問もあります。神戸市医師会はこうした献血血液の目的外利用について厳しくチェックする必要があると考えています。
─献血をしたいと思ったら、どこに行けばよいですか。
置塩 神戸市内には三宮のミント神戸とセンタープラザ、そして新長田の鉄人28号モニュメント前の3か所に常設の献血ルームがあります。また献血バスが随時各地に出向き受け付けています。
─今後、献血はどうなっていくのでしょうか。
置塩 少子高齢社会が進み、輸血を必要とする人が増え、献血する側の若い人は減ってきます。また製剤用血液は一部輸入に頼っていますので、より安全のためには、もっと成分献血を増やす必要もあります。若者を中心に市民への献血のお願いを医師会からもするようになるでしょう。そのためには目的外使用の不安をなくし、安心して献血に行けるように、その結果すべての世代で献血率が上がるような環境づくりが必要であると考えています。

置塩 隆 先生

神戸市医師会副会長
置塩医院院長