2017年
6月号
6月号
見えない言葉 植松 奎二(美術家)
僕が実際に作品をつくる場合、ideaを考える場合は、まずA4の紙にドローイングを描くことから始めます。
まず言葉があってideaを考えるのでなく、頭の中にある定かでなく輪郭をとらえられないものを描いていく時と、急に確かなイメージが涌いてドローイングを描く時があります。その時、言葉は全然関係ないです。ですが、言葉はすごく重要です。「concept note」や「言葉ともの」と書いたファイルを作って、気になる言葉やコメントを書きとめています。
今回の展覧会では、「concept note」に書いてある「見えないプロジェクト」(Invisible Project)の項目の一つが少しかたちになって発表できるのが嬉しいです。これは十何年前から考えていたもので、アイデァドローイングとInstallation からなるものです。作家活動をはじめた1969年から2017年までに描いたアイデァドローイングの中から、実際にはつくらなかったものも含めて1年1点選んだ49点のドローイングと新作のInstallation に加え、以前から考えていた「彫刻としてのドローイング、ドローイングとしての彫刻」を発表します。まだ見たこともない、つくらなかった作品による“見えない回顧展”みたいなものです。
これからも、気になる言葉を超えた言葉、言葉にならない表現、「見えない言葉」を超えた作品をつくり続けていきたいです。
植松 奎二(うえまつ けいじ)
神戸市生まれ。1975年渡独。現在はデュッセルドルフと日本にアトリエを構え活動。四次元世界の構造、重力、見えない力の関係や働きを視覚化することを制作の基盤とし、石・木・布によるインスタレーション、金属の矩形や円錐形を組み合わせた作品を制作。