1月号
温暖でおだやかな神戸の気候
気象予報士 南 利幸 さん
京都、大阪と比較すると神戸は夏が涼しく、冬は温かい。神戸が暮らしやすい気候に恵まれているか、気象予報士の南利幸さんに聞いてみた。
神戸は気候の面でも海の影響を大きく受けています。神戸市街地の気候の特徴として、まず温暖であるということが挙げられます。瀬戸内海は海水温度が比較的高いですから、冬でもそれほど寒くありません。関東ですと南岸低気圧が通過すると20~30㎝ほど雪が積もることがありますが、神戸では雪が積もることがほとんどありません。海が近いところは、常に海風が吹きます。晴れていておだやかでも必ず浜風が吹くのです。神戸では特に西風、淡路や明石海峡の方から吹いてきます。ですから空気が流れ、汚染物質の滞留やヒートアイランドが解消しやすい環境にあります。
六甲山の影響も大きいですね。もし六甲山がなかったら、冬場、神戸には北風が吹きつけるでしょう。また、六甲山の斜面に住宅地が広がっていますが、南斜面は温かいのです。山の中腹は山腹温暖帯とよばれ、対流により温かい空気が上に来て若干気温が高いので、住宅街はさほど寒くなく、過ごしやすいと思います。また、日照時間も長く、関東と比べて乾燥しすぎることもありません。
大阪や京都と比較すると、特に夏の気温は差があります。全国47の都道府県庁所在地の中で8月の最高気温が最も高いのは京都、大阪と熊本です。一方の神戸の順位は22番目なんですね。神戸は30℃を少し過ぎると気温上昇が止まり、大阪や京都のように35℃を超えることはそう多くありません。京都は海から遠く盆地なので、海風が入らず熱が溜まりやすいのです。大阪は都市の規模が大きく、コンクリートが多いのでそれが熱を持ち、海からの冷たい空気が暖まってしまいます。神戸は海からの風だけでなく、山が近いという地形の影響もあって、気温上昇が抑えられています。
神戸市は広いので、市内でも気候の差があり、特に六甲山の北と南では結構な気温差があります。北区などは内陸で、六甲山で発生した雲が南風に乗って流れていったり、兵庫県中央部の入道雲の発生しやすいところから雲が流れてきたりして、夏は特に天気が変わりやすくやや雨が多いです。
現在は天気予報の精度も上がってきており、それをスマホで簡単に確認できる時代になりました。しかし、外に出て空を眺める機会が減ってきていると思います。気象の変化を自分の肌で感じ、自分の眼で確認することは大切なことです。特に災害時は行政の情報を待つなど人に頼りがちですが、その前に自分で身の危険を感じて行動することが命を守るかもしれません。ぜひ普段から気候や気象に関心を持ってください。