1月号
企業経営をデザインする(4)|〝住〟で比類なきメイド・イン・神戸ブランド
和田興産株式会社 代表取締役社長 高島 武郎 さん
神戸で14年連続1位の分譲マンション供給戸数を誇る、「地元に根ざした不動産ディベロッパー」の和田興産。行政や住民と共に進める街づくりについて高島武郎社長にお聞きした。
リブ・モア・神戸
―地元銀行で兵庫県や神戸市のプロジェクトを担当するなど豊富な経験をお持ちの高島社長ですが、人口減少が進む今の神戸についてどうお考えですか。
高島 神戸の活性化には、基本的に人口増加がなければいけません。ところが、神戸市の人口は、早ければ来年の2月にも全国6位になるようです。仕方のないことですが、神戸に住みたいという思いを持ってもらえる街づくりが必要ですね。街づくりの基本は人が「住み、働き、憩い、学ぶ」です。もう一つ必要なのが住民が集うコミュニティの場です。今の街づくりには、そういった視点が欠けているのではないかと思います。
―和田興産と街づくりの関わりは。
高島 和田興産は明治32年(1899)創業、昭和41年(1966)に会社設立ですから、創業117年、設立50周年を迎えました。衣食住の中で、「衣食」については神戸には多くのブランドがありますが、「住」について、神戸を代表するブランドはまだありません。当社は地域に根ざした企業ですから、街づくりに関わり、地元に貢献していかなくてはいけません。“住まい”を通じて街並みや人の流れを変えていこうとしています。平成3年(1991)から開始した分譲マンションブランド「ワコーレ」シリーズは、昨年8月末で413棟、1万5554戸を供給しています。それらの実績が、ブランド価値を高めるとともに、さらに「リブ・モア・神戸」をキャッチフレーズにして神戸にたくさんの人に住んでもらい、賑わいを作っていきたいと思っています。
街づくりの中でベストな方法を見つける
―トアロードや三宮駅周辺など神戸の代表的なエリアにマンションを建設予定ですね。
高島 私どもはこれからも地元で生きていかなくてはならない企業ですから、街全体の構想との兼ね合いを考慮しながら、単にマンションを建設するのではなく、街づくりの中で何がベストなのかを考えながら進めていかなければならないと思っています。
―神戸市には多くの歴史的建造物もあり、保存しようという動きもあります。
高島 一般的に事業は経済合理性を追求するものですから、歴史文化との利害は対立しがちです。しかし、歴史的建造物を取り壊しマンションを建設すればいいかといえば、それは違うと考えています。住民、行政の声を聞きながら、役割分担を明確にして、当社ならではの役割を担っていかなくてはいけません。
―神戸市は市街地再生に取り組んでいます。行政と市民の橋渡し役として、中央区と「地域コミュニティ形成に関する協定」を締結されたそうですが、その内容は。
高島 地域住民の実態調査、防災に関する取り組み、子育て中の母親と子どもが孤立化しないように集合住宅を中心にしたコミュニティ内での友達づくり支援、高齢者の見守り体制への協力、マンションを中心としたソフトづくりなどに関する協定です。管理業者とも連携しながら実現していきたいと思っています。
住居にも多様性が求められる時代
―近年の住宅事情はどう変化してきていますか。
高島 都心回帰により、人の流れが変わってきました。どういうことが起きているかといえば、一つは子育てを終えた世代が郊外の戸建てから中央区のマンションに移ってきています。また、共働き夫婦や、働くシングル女性も増えており、ライフスタイルも多様化しています。当社では、マーケット調査をしながら、マンション1戸ずつにおいて仕様変更を可能にしています。総戸数471戸、当社最大プロジェクトである「ワコーレシティ神戸三宮」では、100バリエーションのプランを提供し、完売しました。“住まい”にも多様性が求められている時代なのでしょうね。
―いろいろなアイデアはどこから生まれるのですか。
高島 当社は、企画会社と位置付けて全社挙げ、あらゆるチャネルの中でできることの意見を持ち寄り、ミーティングなどを行っています。先ほどの「ワコーレシティ神戸三宮」では、顔認証入館管理システムや、365日、24時間ゴミ出し可能なゴミドラム室、ETCカードを使った駐車場システムなどを導入しています。
―地域密着企業ならではの強みは。
高島 当社は主に30戸から50戸程度のコンパクトな物件を供給しています。古くから地域とつながり、地元神戸をマザーマーケットに持っていますから、土地情報の入手がスムーズにいきます。また、仕入から販売まで同じ担当者が一貫して行っていますので、責任を持って適正価格で土地を仕入、お客様に納得していただく価格で販売が可能だと考えています。
ワクワク、ドキドキ感がある街づくりを!
―神戸を住みたい街にするにはどうすればよいとお考えですか。
高島 まず、働く場所を増やすことですね。神戸市が進めている医療産業都市構想の中で実現していけるのではないでしょうか。また、神戸空港の活用も大きなカギになるでしょうね。大学との連携で神戸の強みを発揮することも必要です。何か新しく施設を造るのならば、ワクワクドキドキする非日常性がなくては、人は集まらないと思います。
―今後の和田興産の展望は。
高島 今、当社に欠けているのはノンアセットビジネスです。今回、兵庫県のコンペである「明舞団地リノベーションモデル企画」において、事業会社部門に選定されました。今後、対象2700戸の入居者の皆さんにどう当社を選んでいただくかが課題です。当然、当社が分譲したマンションのリフォームも進めていきたいと思います。他には、マンション管理業務も視野に入れ、あらゆる面で総合的なサービスを提供できる事業展開を進めていきたいと考えています。今後ますます少子高齢化する社会でどのような取組ができるのかが大きな課題です。
―ワクワクできる仕掛けに期待しています!本日はありがとうございました。
高島 武郎(たかしま たけろう)
1971年、関西学院大学経済学部卒業。同年、株式会社神戸銀行(現 株式会社三井住友銀行)入行。2001年、神戸公務法人営業部長。2002年、京阪神興業株式会社常務取締役。2011年、和田興産株式会社顧問。2012年より、同社代表取締役社長