2015年
3月号
3月号
島の宝珠 なるとオレンジ
淡路の夏のデザートといえばなるとオレンジ。すがすがしい芳香と豊かな風味が特徴的。原産地の淡路でしか栽培されておらず、一般のスーパーなどではお目にかかれない代物だ。
名付け親はお殿様といわれている。昔、洲本に陶山与一衛門(すやまよいちえもん)という武士が、とある橙を食べると味がよかったので、種を庭に植えるとやがて超絶な味の実がなり代々大切にしてきた。そして7代目の与一衛門長知がこの実を君主・阿波徳島藩主蜂須賀斉昌(はちすかなりまさ)に献上したところ大いに賞賛し、「鳴門」と命名した。
なるとオレンジは、明治頃から盛んに栽培されるようになり、戦前には淡路の特産として定着、高級果実として東京にも出荷され、港では籠入りのものが土産物として飛ぶように売れた。しかし昭和30年をピークに最盛期の1割にまで落ち込み、夏の淡路の風景は懐かしいものとなってしまった。ところが最近では再びその深い味わいが脚光を浴びつつある。まさに“幻の果実”だ。