6月号
第19回 北前船寄港地フォーラムin淡路島
高田屋嘉兵衛ゆかりの地で開催
5月12日と13日、淡路島で第19回北前船寄港地フォーラムin淡路島が開催された。このフォーラムは江戸時代に大坂から瀬戸内海・日本海を経て蝦夷地へと結んだ北前船の寄港地やゆかりの地の関係者が集い、地域の連携や交流の活性化を目指す観光フォーラムで、2006年から継続的に実施されている。これまでは主に北海道から東北、北陸など日本海側での開催が多かったが、今回は瀬戸内の入口にあたる淡路島が会場になった。寄港地以外では初の開催だが、北前船の廻船問屋として歴史にその名を残す偉大な人物、高田屋嘉兵衛の故郷ということもあり、その偉業を顕彰するイベントともなった。
12日は淡路夢舞台の国際会議場でセレモニーやパネルディスカッションがおこなわれ、北は北海道から南は山口県まで19都道府県から地域の関係者と、航空や鉄道、旅行業界などの企業関係者が集結、満員の会場は熱気に包まれた。
ステージには高田屋嘉兵衛を描いた司馬遼太郎不朽の名作『菜の花の沖』にちなみ菜の花が飾られ、オープニングでは高田屋太鼓が荒波の往く船のように勇壮な演奏を披露した。
パネルディスカッションは2部構成で、第1部では神戸のヒストリアンこと園田女子大名誉教授の田辺眞人先生が「航路としての瀬戸内海」をテーマに基調講演をおこなった。瀬戸内海は太古の時代から波穏やかで安全な航路として船が行き交い、文化の伝播に大きな役割を果たしたという歴史を解説するとともに、海峡と灘が連続する水路としての特徴と、難路や要衝で生まれた伝説にも触れるなど多彩な話題を盛り込み、聴衆の耳目を集めていた。
田辺先生のコーディネートでおこなわれたパネルディスカッションは「観光振興と地域振興~高田屋嘉兵衛のフロンティア精神に学ぶ」がテーマ。神戸新聞パートナーセンター長の三好正文氏は現在、淡路島で高田屋嘉兵衛がいかに愛されているかを伝え、嘉兵衛をNHK大河ドラマの主役にという大胆な提案を披露。淡路島観光協会副会長の木下学氏は、食を通じた淡路島の観光戦略の報告のほか、官民協働が機能している現状や世界を見据えた今後の課題など、地域振興に深い示唆を与えるコメントを寄せた。淡路おみなの会会長の投石文子氏は、嘉兵衛の船「辰悦丸」を復元し北前船の寄港地をめぐった過去のプロジェクトを紹介するとともに、地域の人が地元について学ぶ「地域学」の重要性を力説。駅の魚屋高田屋嘉兵衛の店主で九州・博多で事業を展開する佐々木吉夫氏は自らが惚れ込んだ高田屋嘉兵衛の哲学に迫り、誠実を貫き人を大切にした嘉兵衛の生き様こそ地方創生の根源と熱く語った。
第2部では瀬戸内のクルーズによる観光振興について議論がおこなわれた。その後のレセプションではグラス片手に参加者たちが親交を深めた。
イベントホール前では各地の観光物産PRブースが設けられ、こちらも大いに賑わった。
13日は高田屋顕彰館や鳴門海峡、伊弉諾神宮などをめぐるエクスカーションが開催された。また、11日には前夜祭が開催され、淡路人形浄瑠璃などのプログラムが参加者たちを大いに楽しませた。
今後は7月に岡山、8月に青森、11月に鳥取、さらに来年は中国・大連で開催される予定。夢が広がるイベントだ。