8月号
まごころをこめて|片山 喜市郎 <株式会社喜市 代表取締役>
まごころをこめて
神戸のクラフトマンたち
神戸元町に1917年創業した靴店の4代目として活躍する、革職人・片山喜市郎さん。今年はレクサス主催 「TAKUMI PROJECT」の兵庫県代表に選出され、そのモノづくりへの思いは全国に発信されている。
2010年、神戸元町にオープンした「スタジオキイチ」。オーナーであり、革職人の片山喜市郎さんは、工房も兼ねたその店で、企画、デザイン、製造、販売を行う。コンセプトは、made in Japan。シンプルなデザインに合う素材として使っている播州なめし革は、良質でやわらかく、色のバリエーションが豊富。「加えて職人の皮革に対する熱意がすごい。だからこそ、モノを作って売る人だけでなく、皮職人さんも一緒に認めて欲しい」と話す。店内には様々な色の財布やキーケース、ブックカバーなどが並び、訪れる人はお気に入りのひとつを、時間をかけ、選んでいく。
今年創業100年になる靴店の4代目として生まれた片山さんは、10代の頃には後を継ぐことを決めていた。しかし、大学では好きだった物理を専攻、卒業後はサラリーマン生活を送る。モノづくりに必要な豊かな発想力は、その時々に興味をもった場所に身を置き、精一杯楽しむことによって得ているのかもしれない。トヨタ関連の会社で販売企画などを経験し、流通を学び、3年で退社。次に向かったのは、長田にある靴づくりの学校だった。靴を作りたい。その思いは、一流のデザイナー、パタンナーの指導に刺激を受け、現在に至る。
スタジオキイチの隣には、実家である「マルヤ靴店」がある。革小物を作りながら、常に靴づくりも意識してきた。それが、少しずつ形になりつつあるという。
神戸の女子高生がファミリアのバッグを愛用する文化が続くように、同じく神戸の女子高生に愛される靴。履きやすく、個性がある、神戸らしいと言われるお洒落な靴を考案中。キイチだからできること。そのアイデアは今後、次々に商品となって目にすることになるのかもしれない。「楽しみにしてて」と片山さん。
キイチのマークは「碇」。みなと街、神戸らしくて大好きだから決めた。碇が刻まれた神戸元町発の革製品が今後、神戸をさらに賑わせ、「みんなで元気になれたらいいな」。
株式会社喜市 代表取締役
片山 喜市郎さん
■STUDIO KIICHI
神戸市中央区元町通6-7-3
TEL:078-381-6786