2017年
7月号
右端の建物がシュウエケ邸(中央区山本通)。ハンセルの自邸でもあった

英国と神戸 Vol.1 神戸異人館とA.N.ハンセル

カテゴリ:神戸, 見どころ

 安政5年に結ばれた通商条約によって、明治元年(1868)12月、神戸港が開港。同時に、外国人の住居や通商の場として神戸外国人居留地が設けられ、区画整備が進められていった。
 居留地の発展に尽力した建築家の1人が、イギリス人建築家のA.N.ハンセルであった。ハンセルは、1857年に北フランスでイギリス人牧師の子として生まれた。後に父とともにイギリスへ渡って本国で教育を受け、建築の修業を積んだ後、明治21年(1888)に来日。大阪で英語教師を務め、後に神戸に本拠地を移して、本格的に建築家として活躍するようになる。
 外国人社会の中で人望も厚かったハンセルは、関西の著名な建物を多く手がけている。神戸においては、居留地内のクラブハウスや周辺の雑居地の外国人住宅などを数多く建築している。神戸市中央区の山本通に現存するハンセルの自邸は、現在、「シュウエケ邸」の名前で一般公開されている。
 明治23年(1890)、ハンセルが神戸で最初に手がけた建物が、「神戸クラブ」であった。現在の東遊園地の南にあった神戸クラブは、イギリス人・アメリカ人を中心とした、欧米系外国人のための社交クラブで、クラブハウスは、赤レンガ積みと白花崗岩の対比、中世風のチューダ ー・アーチが美しい大きな建物であった。中にはビリヤードルームやバー、ボウリング場や図書室などがあったが、昭和20年(1945)の空爆で焼失し、神戸クラブは同30年に北野に新築・移転されている。
 ハンセルは明治24年(1891)には、当時、世界で最も権威があった建築家団体のひとつ「R.I.B.A」(英国王室建築士会)会員の名誉ある資格を取得している。 神戸の居留地が、このような栄誉ある人物に手がけられて発展したことは、特筆に価するであろう。

右端の建物がシュウエケ邸(中央区山本通)。ハンセルの自邸でもあった

「白い異人館」と呼ばれ、親しまれた「小林家住宅(旧シャープ住宅)」。昭和53年。現在の「萌黄の館」である

国の重要文化財に指定されている旧ハッサム住宅もハンセルの設計。現在は相楽園に移築されている

かつて神戸居留地にあった神戸クラブ。ハンセルの処女作でもあった

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