2017年
7月号
「世界に通用する紳士たれ」という建学の精神のもと、大正8年(1919)に創立。世界のトップを走れるリーダーを育む

対談/進化する名門私立中学校 第8回 甲南中学校

カテゴリ:教育・スポーツ, 芦屋

社会の役に立ち、最先端で活躍できる人になってほしい

甲南高等学校・中学校 校長
山内 守明

日能研関西本部 代表
小松原 健裕

名門私立中学校に多くの塾生を合格させている日能研関西代表の小松原健裕さんと関西名門中学校長の対談。第8回は、甲南高等学校・中学校校長の山内守明さんにご登場いただきました。

今に受け継がれる建学の精神

小松原 この高台からの眺めは最高ですね。静かな環境なので勉強に集中しやすいでしょうね。生徒たちにとって窓からの眺望は授業の息抜きになりますね(笑)。
山内 生徒たちは坂道を上ってくるのは大変ですが、この自然の中で四季の移り変わりを感じながら中高6年間を過ごせるのは恵まれていると思います。
小松原 甲南には、平生釟三郎先生という偉大な創立者がおられ、建学の精神が今に受け継がれています。単に知識伝承の教育ではなく、「健全なる常識をもった世界に通用する紳士たれ」と人間教育を目指されていたのですね。
山内 日本の教育は明治以来、西洋に追いつけ追い越せを目標とし、知識の詰め込み教育に走っていました。創設者の平生先生は東京海上保険に勤務され、イギリス駐在の際、パブリックスクールの教育を目の当たりにされ、日本の教育が考えることをしないこと、生徒の才能を引き出そうとしないことに気付かれ、人物育成を第一とした教育こそが日本の発展に貢献するとの思いをもたれました。この理念のもと甲南学園が創立されました。その後、半年間にわたってアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの教育を視察され、甲南の教育理念に確信をもたれ、「世界に通用する紳士たれ」という合い言葉のもと、人物重視の教育と社会に貢献できる人物の育成に力を注いでこられました。
 説明会では甲南の建学の理念を簡単にお話ししますが、入学後は平生先生の生き方も含め生徒に詳しく話します。
小松原 保護者や生徒たちにとってすごくいいことだと思います。パンフレットなどでは知り得ないことですから。自分の学校に対する誇りにつながるものだと思います。

甲南独自の方法で、学びのモチベーションを高める

小松原 2014年からフロントランナー・コースとアドバンスト・コースを開設された理由は。
山内 「甲南」というブランドが求められた時代もありましたが、今は「どういう教育をするのか」「どんな進路を開くのか」が問われています。そのニーズに応える甲南独自の学びのモチベーションを高めるプログラムが必要です。学ぶ楽しさを通して人物育成も行いながら社会に役立つ人材を育てようと思っています。
小松原 『フロントランナー』という意外なネーミングに最初は驚きました。どういう意味を込めているのですか。
山内 従来の医進、特進などというものではなく、「社会に出たときに世界のトップを走れる人になりなさい」という思いを伝えようとネーミングしました。単に、医者や研究者になるために理系で勉強をするのではなく、最先端で活躍する人になってほしいという思いを込めています。
小松原 サイエンス・ラボの内容は非常にレベルが高く、大学の研究のようですね。
山内 理科好きだった私が、学問の本質を知ったのは大学を出て教師になったころです。今、中1のプレラボを担当していますが、例えば「元素はビッグバンや恒星の進化の過程でできたんだよ」とか「金は太陽より大きな星が超新星爆発する際に合成されたものなんだよ」と話すと「へー」と子どもたちは驚きます。中2のラボではロケットを飛ばします。この時、単に飛ばすだけではなく角度を測り到達高度を求めます。中3ではウズラの有精卵から胚を取り出します。心臓が動いているのを見て、生徒たちは「うわー」と感動します。理系の子たちは何かひとつのことに興味をもつと、追求してみようというモチベーションが高まりますからね。
小松原 日能研の見学会でも、保護者と子どもたち対象のサイエンス・ラボをやっていただいていますが、とても好評です。ありがとうございます。

一人ひとりが個性を生かし、才能を開花させる人生を

小松原 もうひとつのアドバンスト・コースとは。
山内 高い学力はもちろん、社会に出てからきちんと仕事ができる実践的な能力を付けることを重視しています。まず、レポートを書き、人前でプレゼンできる能力。これは21世紀の社会では当たり前のことです。幸い甲南はOBと近い関係にあり、会社経営者もたくさんおられます。中3ではキャリアについて1年間かけて調べ、その間に様々な職種のOBを招いてワークショップを行います。高1ではOBの企業を訪問させていただいています。生徒は社長さんとの名刺交換にはじまり、経営理念や方針についてうかがい、実際に働く若い社員さんから働きがいについて話していただいています。また、このコースでは希望者を対象とした教科縦断型の「グローバル・スタディ・プログラム」があります。3カ月から1年間の海外留学も行います。留学を終えて帰って来る生徒たちの表情は全く変わっています。海外の大学に進学する生徒も増えてきています。
小松原 現在の甲南中学の取組みは保護者にとってたいへん興味深いものです。勉強が得意な子は進学校で一生懸命勉強することがベストです。甲南に通う生徒は、それぞれが好きなことや才能を伸ばしていけばいいんですからね。
山内 大学進学については、自分の進路を考え自分のベストを探しなさいと指導しています。甲南大学に進むのもひとつの選択肢ですが、みんなが同じ進路に向かう必要もなく、いろいろな人生があっていいと思います。もちろん大学進学だけが進路ではなく、非常にユニークな世界で成功している卒業生もいるんですよ。それぞれの才能が開花するようにサポートするのが私たちの役目です。まだまだ努力の余地はありますが、校長として自信をもって言えるのは、100年に及ぶ長い伝統を引き継ぐ甲南中学校は、今が一番良い学校です。
小松原 子どもたちに将来、充実した人生を歩んでほしいという思いは同じです。そのために日能研関西では『私立中学の魅力』という新しい学校案内を作成しました。これからも私学の魅力を伝えるために協力させてください。

「世界に通用する紳士たれ」という建学の精神のもと、大正8年(1919)に創立。世界のトップを走れるリーダーを育む


甲南の校長室は生徒に開放されており、様々な相談に生徒が訪れる。写真は中学1年生との校長面談の様子


創立者の平生釟三郎は、神戸の財界・教育界、政界に大きく貢献した人物


心の教育の一環、ソフィア記念講演会第1回はMIZUNO会長・水野正人氏を迎えて


理系「フロントランナー・コース」の「サイエンス・ラボ」の授業。中学2年生では、ロケットを飛ばす実験をおこなう


文系「アドバンスト・コース」では、仕事の実践的な能力を身に付けるため、会社経営者のOBの訪問もおこなう


研究者や理系の明確な進路希望をもつ生徒も多く、大学・研究所訪問を積極的に行う


理系の「フロントランナー・コース」では、科学の幅広い分野に触れることで興味の幅を広げる


理科の実験・実習で科学的な見方を身に付け、将来の進路を探る


山内 守明(やまうち もりよし)

 
甲南高等学校・中学校 校長
鳥取県生まれ。1982年、高知大学理学部卒業。大阪大学、奈良教育大学大学院、東京大学等の研究生を経て、1989年より学校法人甲南学園 甲南高等学校・中学校専任教諭(理科)に着任。2016年より現職。創立者・平生釟三郎による建学の理念を受け継ぎ、現代社会を生き抜く力を育むための施策を打ち出し、率先して指導にあたる

小松原 健裕(こまつばら たけひろ)

株式会社 日能研関西 代表
甲陽学院高校、慶応義塾大学と中高大を私学で学ぶ。同大学法学部卒業後、日本IBMに入社。主に金融機関システムの提案に携わる。事業承継のため日能研関西に入社。授業担当科目は算数。京都本部長、副代表を経て、代表に就任。日能研関西本部業務全般に加え、日能研グループとの連携、私学教育の振興にも携わる

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〈2017年7月号〉
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