8月号
思い出は、ヴォーリズ建築と共に
ヘラ・フロインドリーブ 上原さん
H.フロインドリーブ 代表取締役
―現在フロインドリーブ本店は神戸に縁のある建築家ヴォーリズが設計した、旧神戸ユニオン教会を改修されていますがその経緯は。
上原 もともと本店は中山手のハンター坂にあり、須磨の工場から商品を運んでいたんです。それが震災で全壊こそ免れたのですが、少し傾いてしまい、建物が精彩を欠いているように見えたんです。しかも震災後しばらくは交通も不便で、普通なら20分ほどで通える須磨から三宮間が、2時間もかかることがあったのです。それで本店と工場を両方できる場所を探していた時に、主人が廃屋になっていたここの建物を見つけて来たんです。
―2階のカフェは礼拝堂の雰囲気がそのまま残っていますね。
上原 廃屋状態でしたが、建物そのものはほとんど損傷なく、できるだけ使える部分はそのままの状態で使っています。こちらは皆さん気に入っていただいて、いろいろと撮影にも使っていただいているんです。いま公開中の映画「阪急電車」でも最初のシーンに使っていただいて、パンフレットでも紹介していただいているおかげで、映画を観たお客さんも来ていただいています。
―ご自身の結婚式もこちらでされたそうですが。
上原 ここはプロテスタントの教会で子供の頃から通っていたので、当然のことのようにここで挙式しました。1970年5月2日だったのですが、披露宴は当時の神戸クラブ、現在の神戸外国倶楽部でおこないました。お庭のサツキがあまりにもきれいで、後にも先にもあんなきれいなサツキを見たことはなく、とても印象に残っています。
―お店では2次会がかなり人気だとお聞きしましたが。
上原 息子も去年ここで披露宴をしたんですよ。現在も2次会はたくさんやっています。もともとは、どうしてもここの雰囲気がいいとおっしゃったお客さんから相談を受けたのです。土日の夜のみですが、年間50〜70の予約をいただいています。以前は昼もやっていたのですが、ただでさえ土日はお客さんが多くて、トラブルなどもありましたので、現在は貸し切りは17時〜19時でお願いしてるんです。
―こちらに移転してお店としては成功されたと思いますか。
上原 最初ここに移転する話が出た時は私は反対したのです。ただ主人には何かイメージがあったようですね。震災後やむを得ず移転しましたが、結果的には大成功だったと思います。カフェと駐車場もできたことで、遠方からたくさんのお客さんに来ていただけるようになりました。やっぱり縁があったのでしょうね。この建物自体が私たちと同じ歴史を生きてきていますから、ここでならこれからもがんばれると思います。
―神戸で生活してきて感じる、神戸ならではの感性はどういったものでしょうか。
上原 私は子供の頃にドイツから神戸に移ってきました。一時期名古屋に住んでいたこともありますが、人生のほとんどを神戸で過ごしています。昔から神戸の人は、外国人に対してあまり抵抗がなく、自然に接してくださいます。それは外国人にとっては暮らしやすいということなのです。神戸で育ち、神戸で仕事をしてきて、いまも神戸を出たいとは思いませんね。
ヘラ・フロインドリーブ 上原
H.フロインドリーブ 代表取締役
ドイツ人で、敷島製パンの初代技師長を務めたハインリッヒ・フロインドリーブ氏を祖父にもつ。1990年代表取締役社長。95年の阪神・淡路大震災で本店が被害を受け、一時休業状態になる。99年、旧神戸ユニオン教会を改装して本店・工場を移転し、本店とする。
フロインドリーブ
神戸市中央区生田町4-6-15 2F
078-231-6051
営業時間/10:00~19:00(L.O.18:30)
定休日/水曜
駐車場/あり