2012年
12月号
左から魔法のパンツ「サテン・ストレート」「プレミアムウール・セミワイド」「ジーンズプレミアム・ストレート」

「魔法の パンツ」で美しく

カテゴリ:お洒落・ファッション, 婦人服

株式会社 バリュープランニング
代表取締役社長 井元 憲生さん

1994年に神戸で創業したバリュープランニングは翌年に阪神・淡路大震災を経験。その後、開発したミラクルストレッチパンツ「B-Three(ビースリー)」を1999年にリリース。今では全国に200店舗以上を展開し、はき心地の良さと品質の高さで多くのファンを持っている。

ーバリュープランニング創業のきっかけは。
井元  それまでもアパレル業界にいました。40歳を機に、機能性に特化した商品を作りたいという思いで立ち上げました。
―何故、パンツに特化したのですか。
井元  まず考えたのは、機能を重視した商品作りです。アパレル業界で扱われる商品のうち、7~8割が扱っているのはトップスです。トップスはデザインの移り変わりがありますから、色々と変化を付けていけます。しかし、パンツはそれほど変化がなく、ベーシックなものが基本です。違いは、ディテールとクオリティー程度。一般のアパレル業界が追求してきたデザイン的な〝おもしろさ〟で言えば、〝おもしろくない〟ファッション領域なんです。だからこそ、反対に機能を追求するのには適した商品だったのです。それに、神戸を始め、日本全国にアパレル企業が仮に2万社あるとして、2万1社目を作っても意味がない。「パンツに特化など難しい」とも言われましたが、難しいからこそ、誰もやろうとしない。それなら敢えて、パンツの機能性だけを追求しようと思いました。
ーThree(ビースリー)の機能性とは。
井元  ブランド名の由来でもあるのですが、「Fit Better」「Feel Better」「Look Better」3つの「Better」の「B」がポイントです。具体的には、1つ目の「B」は360度よく伸縮するクオリティーの追求、2つ目のBは肌触りの良さの追求、3つ目のBは脚を細く長く見せることの追求です。
ーどんな工夫があるのですか。
井元  クオリティーの工夫で言えば、よく伸びる糸であるポリウレタンを縦・横に入れる2way生地を採用していることです。こうすると縦・横、360度よく伸びる。一般的にストレッチパンツは、縦だけにポリウレタンを入れる1way生地がほとんど。でも、これでは生地が一方向にしか伸びません。であれば、皆が2way生地にすれば良さそうなものですが、これがなかなか手間とコストがかかるんです。縦・横に伸ばすことは可能なのですが、伸びっぱなしにならず元に戻るということが非常に難しいのです。履いていて伸びっ放しの状態になってしまうと、商品として成り立たない。だから、なかなか2wayを採用しようと思えないのです。開発当初、私たちもデータが全くない手さぐりの状態から始め、試行錯誤しながら研究しました。こうして誕生したのが、縦・横に伸びてほぼ100%元に戻るストレッチ生地。このストレッチ生地が、長年お客さまから支持される理由だと思っています。もちろん今でもどんどん進化していますから、研究開発の連続です。
ーお客さまからはどういう反応がありますか。
井元  ビースリーは実際に履いていただければ、その履き心地の良さは分かっていただけます。しかもきれいに見えて、お手入れもラク。ですからお客さまがリピーターになってくださる場合が多いのです。「これはいい!」と思えばお友達にもご紹介いただけ、そこから裾野がどんどん広がっています。

左から魔法のパンツ「サテン・ストレート」「プレミアムウール・セミワイド」「ジーンズプレミアム・ストレート」


ビースリーショップ


(左)ヒップボディ (右)シリンダーパッケージ くるくると丸められたパンツが筒型のパッケージに入り、ディスプレイされる。


ービースリーの購買層は。
井元  機能がポイントの商品なので、私たちとしてはターゲットを決めているわけではありません。20代でも80代でも、ラクでキレイに履けるパンツを求めておられる方にお買い求めいただいています。
ーあちこちで目にするあのマネキンボディは印象的ですね。
井元  ビースリーは知らなくても、ボディは見たことがあるというお声も頂戴します。あのボディも他にはない、オリジナルなんですが、実はあのポーズ、お辞儀をしているんですよ。お客様への感謝の気持ちを表現しています。あとは筒型のパッケージと赤いソファが目印になっています。一目でビースリーと理解していただけるよう、全店舗統一させています。
ーほぼ全国にありますよね。通販などでも買えるんですか。
井元  現在、数県を除いて、全国に209店舗出店しています。通販サイトもご用意していますが、見た目重視の商品ではないので、実際に店舗で試着して、体感いただくことが大切だと考えています。そのために全国に約千人のパンツフィッティングのプロ「パンツ・フィッター」が在籍しています。ビースリーの商品特徴、着こなし、お手入れ方法などをご納得いただき、お買い求めいただいています。
ー好調なビースリーですから、その技術を生かして上着やスカートへも領域を広げていく予定は。
井元  こういったご要望はたくさんいただくのですが、私の信条は「パンツ道を極める」なんです。「ハード、ソフト、ハート」、つまり商品(品質)を究め、情報を極め、接客を極めることで、究極のパンツ専門店を目指しています。そのため、今のところほかのものを手掛ける予定はありません。
ーパンツ道を極めるための方策は。
井元  商品の品質や安全性を高めることで、お客様に安心を感じてもらえるブランドでありたいと思います。そのためにビースリー「美脚研究所」を神戸市に作りました。ここでは、ひとりひとりの体型に合うパンツのシルエット開発だけでなく、素材の検証や品質チェックなども行っています。全ての商品で家庭洗濯ができて、しかも型崩れせず、長持ちすることが基本条件。我々にとっては、大変である上、次の商品をご購入いただける可能性が少し先になってしまうのですが…。お客様に本当に満足いただける商品を提供し続けることが、パンツ道を極める秘訣でしょうか。
ー社会貢献にも努めていますね。
井元  特別に社会貢献をしようというつもりはないのですが…。会社の利益が上がれば社員に分配する、株主に配当を出すなど、色々と使い道があります。お客さまからいただいた利益(ご褒美)ですから、その使い道の一つが社会に還元することだと思っています。
ー神戸本社には何かこだわりがあるのですか。本社機能を東京へ移す企業も多いですが…。
井元  私自身は特にこだわりは持っていません。この本社ビルもたまたまこの場所だったのですが、他所から来られた方には、「海と山が見えて神戸らしいですね」と言っていただいています。情報収集という意味では首都圏の方が有利だと思いますが、神戸や東京というよりは、今後、東アジアを一つの大きな商圏と考えた場合、本社機能を日本に置くべきなのかという思いは持っています。
ースケールが大きいですね! 人気のビースリーが神戸生まれというのは神戸っ子たちにとっても自慢です。日本全国から世界へと増々の発展に期待しています。
井元  ありがとうございます。

井元 憲生(いもと のりお)

株式会社 バリュープランニング
代表取締役社長
1953年5月12日生まれ。兵庫県出身。1976年大学卒業後、婦人アパレル入社。1994年株式会社バリュープランニング(婦人アパレル)設立、代表取締役に就任。

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