7月号
神戸のカクシボタン 第四十三回 憧れ続けた男のロマンを求めて
幼少の頃、ソファに腰かけくつろぐ祖父の手には年季の入ったパイプがあった。それを借りては「大体やね」と竹村健一氏の真似をした記憶がある。
元町通りにある老舗の純喫茶「マルオー」では、パイプに魅せられた人たちが集う。1973年創立「神戸パイプクラブ」は、画廊主や新聞記者ら文化活動に携わる5人のメンバーで発足。パイプ喫煙愛好家集団の連合組織である「日本パイプクラブ連盟(PCJ)」に加盟しており親睦と普及に努めている。取り組みの一環として行われているのが「パイプスモーキング」と呼ばれる競技の練習である。持参したパイプに3gの葉を詰めマッチ2本で点火。そのまま火種を消さず喫い続けられるか(ロングバーニング)を競う。葉のほぐし具合やタンパーと呼ばれる器具での詰め具合で勝敗が分かれる。世界的規模で大会も実施されており最高記録は213分6秒である。私も実際に挑戦してみたがマッチ2本では着火ができない。大量のマッチを使用し…人手を借りて…ようやくスタート。まぁ、厳密には失格である。各々、くつろいでいるように見えるが真剣勝負。ちなみに私のタイムは40分8秒だった。昔から憧れ続けたパイプは、ヤミツキになる面白さと味があった。4代目会長の呉春明さんにお話を伺った。 「会長に就任して20年になります。現在は、10名程度が毎月1回のペースで集まり練習をしております。記録も大事ですが楽しみながら集まるのが一番の目的です」。 男のロマンと形容されるパイプだが最近は女性の参加者も増えている。堂々と喫えない世の中だが神戸の背景にマッチした嗜好品といえる。
■お問い合わせ
日本パイプクラブ連盟 http://www.pipeclub-jpn.org/
■岡力(おか りき)コラムニスト
ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「のぞき見 雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)