8月号
伝統がかもし出す美味しい珈琲
萩原珈琲株式会社 代表取締役社長 萩原 孝治郎さん
―1928年創業以来80年あまり、守り続けていることは?
萩原 美味しいものを売るというのが先々代、先代と受け継がれてきた基本です。その手段として、祖父がパンを窯で焼いているのを見て始めたのが「炭火焙煎」です。萩原珈琲は特別に炭火にこだわっているわけではなく、最終的にお客様の口に入った時に「美味しい」と言っていただくための手段としてずっと炭火焙煎を続けています。
―「商売は大きくするな」という教えもあるそうですね。
萩原 それは守っています。祖父が亡くなってから炭火焙煎はあちこちでブームにもなり引き合いが多くありましたが、お断りさせていただきました。受けていればもっと伸びていたかもしれません。しかし日本全国に自然と広がり、40年以上の取引先もたくさんある今となっては、間違いではなかったと考えています。
―神戸の美味しいコーヒーとして有名ですが、その秘密は?
萩原 いい豆を使い、例えばブラジル、コロンビア、エチオピアなどそれぞれの国の味を萩原の技術を使い、変わらず作り続けていることだと思います。豆を焼く手段としては炭火を中心に考えています。
―炭にもこだわりがあるそうですね。
萩原 ずっと焼いてもらっていた兵庫県宍粟市の炭焼き名人が引退後、良い炭が見つからず…、たまたま秋田に炭博士がいると聞き、どういう炭が欲しいかをお話しして炭焼き窯を探していただきました。現在は、ジワっと焼けて長持ちする炭、一気に温度が上がる炭など4種類を使い分けています。同じ色目まで焼き上げるにしても、焼き方や時間で味が変わってきます。炭の加減を管理するのが焙煎職人の技です。
―1982年、ブラジルとコロンビアを訪ねて開発されたHAGIHARAブランドとは?
萩原 ブラジルでは、豆を指定農園で作るわけではありません。お米と同じでコーヒー豆にも表作と裏作があり、毎年出来が違います。現地で、粒が揃っていて品質の良い豆をブレンドして萩原珈琲に合う「HAGIHARA18」を作っていただくことになりました。コロンビアでは2000年にオリジナルの豆を作っていただくことになりました。
―コーヒー豆のほかには、どういう商品を扱っていますか。
萩原 喫茶材料の卸売業ですので、コーヒーをたてる器具から食材まで喫茶店に必要なものは一通り扱っています。美味しいと思えるものしか販売していません。こだわり過ぎて価格は高くなっていますが、「萩原で買うものは美味しくて、品質に間違いがない」と言っていただければいいと考えています。
―直営店については?
萩原 それぞれ趣きの違う4店舗を出しています。お客さんにも「こんなお店づくりはどうですか」とご紹介できますので、良い場所があれば今後も出店は考えています。
―コーヒー豆は劣化するといわれますが、家庭で美味しいコーヒーを飲むコツは?
萩原 豆がいつ焙煎されたかが問題です。回転が良くて、新鮮なコーヒー豆を売っている店で、少しずつ買うのが良いでしょうね。
―最後に、萩原珈琲が今後目指すところをお聞かせください。
萩原 まず、会社を存続させて100周年を迎えなくては(笑)。でも嫌いな言葉は「老舗」です。炭火焙煎の技術は守っていくべきですが、販売方法などは時代に合わせて変えていかなくてはいけません。かと言って、価格競争に紛れ込むことなく、お客様に萩原の味を信頼していただき商売を続けさせていただきたいと考えています。
萩原 孝治郎(はぎはら こうじろう)
萩原珈琲株式会社 代表取締役社長
1972年、兵庫県立御影高校卒業。1976年、関西大学経済学部卒業。1976年~1978年、石光商事㈱東京支店。1978年、萩原珈琲㈱ 大阪支店営業部入社。1981年、本社勤務と同時に取締役企画部長。1985年、専務取締役。1997年、代表取締役社長、現在に至る。