5月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第175回
垂水区役所・垂水区医療介護サポートセンター・NPO法人エナガの会
市民フォーラム「裕次郎さんの食改善!」について
─垂水区の市民フォーラムは2025年で何回目になりましたか。
久保 2011年からスタートし、コロナ禍の中止を経て昨年11月30日の開催で11回目となりました。演劇というスタイルになったのは2013年からです。
─今回はどんなテーマでしたか。
久保 「裕次郎さんの食改善!~(仮称)たるみSIO6(ロク)プロジェクト&医療・介護の食支援6条!~」と題し、垂水区が推進する減塩プロジェクトの紹介を軸に、健康的な食生活を主題にしました。今回も大入り満員でした。
─(仮称)たるみSIO6プロジェクトとは何ですか。
若松 脳出血の予防や高血圧の減少を目指し、区民のみなさまと一緒に考えて取り組む垂水区独自の減塩プロジェクトです。まだまだ浸透していないので(仮称)としていますが、定着してきたら外す予定です。「SIO」は「塩」、そして「Salt Intake and Origin from general foods」の略で、「6」は1日の塩分目標摂取量の6gからきています。
坂 現在、日本人の1日あたりの塩分摂取量の平均は男性が10.5g、女性が8.9gで、厚生労働省による目標摂取量は男性が7.5g未満、女性が6.5g未満、高血圧治療中は6.0g未満となっています。垂水区では高血圧治療中の方と同じ6gを意識するという目標を定めました。
─なぜ垂水区で減塩プロジェクトを進めているのでしょうか。
坂 75歳以上の生活習慣病の入院状況について令和3~5年のデータをチェックしたところ、神戸市の平均と比較して垂水区は糖尿病や脂質異常症などによる入院患者の割合は少ないのに、脳出血だけ突出して高いことに気付いたんですね。それで、高血圧での通院状況も調べてみると、これも神戸市の平均を上回っていたのです。塩分摂取量の比較データはありませんのでこれに基づくものではないのですが、塩分の過剰摂取が習慣化すると高血圧に結びつき、高血圧が重症化すると脳出血を起こしますので、生活習慣を見直し食生活を改善することが脳出血予防に一定の効果があるのではと考え、減塩プロジェクトを提案しました。
─そもそも脳出血とはどのような病気なのですか。
久保 脳の血管が破れて血液が脳内にあふれ出し、固まった血液が圧迫して脳細胞を破壊する病気で、運動麻痺になることが多いだけでなく、血管性認知症になるケースもありますので、発症すると要介護の状態になる可能性が高くなります。
─減塩が脳出血の予防になるのですか。
久保 血中の塩分濃度は一定の割合=0.9%に保たれています。塩分を過剰に摂取すると血中の塩分濃度が高まりますので、それを一定に保とうと水分を取り込みます。すると血液の量が増えます。送り出す血液の量が増えると、心臓は圧力を高めて押し出しますので、血圧が上がります。高血圧は脳出血の大きな要因ですので、減塩には一定の予防効果があると言えるでしょう。それだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、腎臓病といった重篤な病気も高血圧によってリスクが高まりますので、適正な塩分摂取は健康寿命を保つためにも大切です。
─具体的なプロジェクトの内容を教えてください。
若松 保健福祉課の坂からの提案を受け、区としても対策が必要と考え、2025年度からプロジェクトをスタートさせました。垂水区民全員の減塩意識の向上を図るべく、地域団体と協力した健康教育の実施や減塩食品の普及啓発、ホームページなどによる啓発、減塩ランチ会の開催、区内スーパーでの減塩食品の販売、飲食店における減塩メニューの提供、こども食堂や給食サービスでの減塩を意識した給食の提供、減塩推進協力店マップの配布などを実施しています。
坂 区内でも特に脳出血での入院割合が高い塩屋地区では、住民との協働で食改善や健康づくりにも取り組んでいます。
若松 そして今回の市民フォーラムもプロジェクトの啓発の一環として、食生活の改善をテーマにしたんですよ。
─今回の演劇はどんなお話でしたか。
久保 神戸市医師会副会長の久次米健市先生演じる主役の裕次郎さん、区長、坂さんが黒服で「白い粉」を前にヒソヒソ話をしているのを見た自治会長さんが通報し、警察官が駆け付けるシーンからスタートしました。この「白い粉」は塩なんですけれどね(笑)。その後、自治会長さんは塩分を摂り過ぎ脳出血で倒れて救急搬送され入院、退院後は多職種連携で生活を支えます。裕次郎さんも健康診断で血圧が高いという結果が出て、家族ぐるみで食生活改善に取り組み、最後は減塩食の食事勉強会を行うというストーリーで、ポイントは「SIO6でおいしく減塩、健康に」など6つの川柳でまとめました。なお、演劇の動画はエナガの会のホームページでご覧いただけます。
若松 血圧が上がる様子を塩分さんや水分さんが表現したり、自治会長さんの搬送の際に安心シートやマイナカードが役に立ったり、信玄と謙信の「敵に塩を送る」コントで塩の重要性や減塩の工夫を伝えたり、観客参加型の減塩クイズがあったりと盛りだくさんの内容でしたね。今回は約80名が出演し、歌声を披露した児童合唱団「ティンカーベル」のみなさまを合わせて100名ほどが舞台に立ちました。甲南女子大学・神戸学院大学の先生や学生、本物の警察官や救急隊員も出演しました。
─若松さんはだいぶ台詞が多かったみたいですね。
若松 稽古の成果を出せたと思います!いろいろな職業の方が集まるので、稽古は毎回夜8時から遅くまで行いました。私も公務で一度欠席した以外は毎回参加しましたが、みなさん熱心なんですよ。このような場で心をひとつにして「顔の見える関係」をしっかり築くことが、地域包括ケアシステムや災害時対応など多職種連携に大いに役立つでしょうね。
─次回のフォーラムも楽しみですね。
久保 次回はまだ未定ですが日時やテーマが決まり次第、広報紙やホームページなどでご案内しますので、次回もぜひご参加ください。
─最後に、(仮)たるみSIO6プロジェクトの展望を。
坂 区民のみなさまの協力が不可欠ですので、自治会など地域団体との連携を深めつつ減塩の意識付けを進めていきます。減塩メニューを提供する飲食店をもっと増やしていきたいですね。
若松 息の長いプロジェクトに育てて、結果を出していきたいですね。垂水区から全国へ、減塩と健康の輪を広げていくことができればと思います。

前垂水区長 若松 謙一 さん(左)
垂水区医師会会長 久保 清景 先生(中央)
垂水区保健福祉課保健担当課長 坂 賀由子(かよこ)さん(右)

11回目となった垂水区の市民フォーラム。今回は垂水区が推進する減塩プロジェクトの紹介を軸に、健康的な食生活を主題に開催

今回の演劇では、塩分を摂り過ぎ脳出血で倒れた自治会長さんを多職種連携で生活を支え、主役の裕次郎さんも家族ぐるみで食生活改善に取り組む
















