10月号
~会長からのメッセージ~ 神戸の経験を東北の未来へ
神戸慶應倶楽部会長
中日輪船商事(株)代表取締役社長
佐井 裕正さん
いま、神戸だからこそできることを
関西合同三田会は、毎回開催地を変えて行っております。その趣旨は、福澤諭吉先生の
「同窓の辭」
「我社中の如きは天下到る處同窓の兄弟あらざるの地なしと云うも可ならん、人間無上の幸福と云ふ可し、我輩既に此幸を得たり豈偶然ならんや、されば今後とても此兄弟なる者益相親み、益相助けて、互に善を成し、互に惡を警しめ世に阿ることなく世を恐るゝことなく、獨立して孤立せず、以て大に爲すあらんことを諸君と共に願ふ所なり。」
によるものではないかと思います。
前回の神戸での大会は1999年、阪神・淡路大震災の4年後でした。その時は式典を松方ホールで、懇親会を客船コンチェルトでおこないましたが、500名を超える多くの方に参加していただきました。
今年は奇しくも、3月11日に東日本大震災が起こりました。私たちも16年前に阪神・淡路大震災を経験しました。現在東北地方には、本当に厳しく辛い避難生活をおくられている方々や、心に大きな傷を持って暮らされている方々が多くいらっしゃいます。その方々を勇気づけ、励ます為にも、私たちの経験を伝える必要があると考え、「神戸より震災を考える」というパネルディスカッションを行う事を決めました。東北の復旧はこれから進むと思われますが、復興についての明確な青写真は、まだ出来ていない状況です。そして、インフラ等の整備は国が行うとして、被災に遭われた方々の心の復興は私たち阪神淡路大震災を経験し、現在見事に復興した神戸っ子だからこそできると考えたのです。
神戸慶應倶楽部の華麗な歴史
神戸慶應倶楽部は、本年で88年を迎えます。設立時の同窓会特別号を見ますと、設立の趣旨として、「大正10年以降卒業の若い塾員が組織して、相互の親睦を図ると共に全塾員を挙げて一団とする立派なクラブ設置を目的とする」と記載してあります。
その後、昭和6年には、元町にビリヤード台や、ゴルフの打ちっ放し、囲碁や将棋台、バーも併設したクラブハウスを設立致しました。その頃から、夏はサマーハウスを須磨に開き子どもたちに来てもらえるようにご家族を招待し、春は岡崎邸で桜の会やつつじの会、秋はお月見の会を開いたそうです。
現在はクリスマス例会とサマーパーティをポートピアホテルなどで開催し、たくさんの家族のみなさんにお越しいただいています。親子で慶應という方も多いです。親子どころか、我が家は既に3代に渡り、慶應にお世話になっております。
躍進する中国・アジアの造船業とともに
弊社は大正4年に貿易会社として祖父が創業しました。戦後、父の代に川崎造船の戦前最後の社長を務められた鋳谷正輔さんがたまたま隣に住んでおられた関係で、川崎造船に中国や香港の船主さんの新造船や修繕船を仲介する商社として第二の創業を致しました。
現在は、舶用機器、舶用塗料を主に取り扱っています。
昨今、中国との取引はすごく伸びています。2002年を境に中国の造船業界は急成長しています。最初は、川崎重工業株式会社とCOSCOが設立した、NACKS(南通中遠川崎船舶工程有限公司)向けに、南通事務所を作りました。その後に、船興利貿易(大連)有限公司を設立し、大連に本公司を置くと共に南通事務所を分公司としまして、昨年4月には更に上海に事務所を設立致しました。
中国以外にも取引先は韓国、シンガポール、ベトナムにも広がっています。今後は、アジアとヨーロッパを結ぶトルコに造船業が発達するのではないかとみています。
神戸、そして慶應 その良さを生かして
現本社所在地は、創業の地である神戸市中央区です。日本の舶用製品のメーカーはほとんど瀬戸内や長崎・佐世保にあります。神戸にいると東京と瀬戸内両方に近いというメリットがあります。そしてアジアも近い。
神戸は開港以来の歴史もあり、また、伝統に縛られることなく自由闊達な気風もあります。こどもの頃から外国のいろいろなものと接することができました。街は程良い規模で、海や山があり、郊外にも近い、素晴らしい街だと思っています。
高校、大学と慶應に学び、良かったと思う点は、3つあります。
まず、第1は、本当に多くの友達を得ることが出来たことです。慶應には人間味のある先生方や魅力的な学生がたくさんいます。校風として、友達を作りやすい環境があります。第2は、慶應には落ちこぼれがいないという事です。例え成績が悪くても極端に言えば、落第しても尊敬される強者もいます。スキーがカッコいい、酒がやたらと強い、語学のスピーチが抜群、滅茶苦茶モテる、ギターがプロ級など、この世には学問以外にも大切な楽しい事がいっぱい有るんだという事を学びました。これ、福澤先生が聞かれたら、怒られると思います。第3は、塾生としてプライドを持てと。そしてどんな辛い時も誇りを持って生きろと教えられた事です。
これらは、今日の企業経営にも勿論、生きています。
佐井 裕正(さい ひろまさ)
神戸慶應倶楽部会長
中日輪船商事(株)代表取締役社長
1951年生まれ。1974年慶應義塾大学商学部卒業。同年、中日輪船商事株式会社入社。
1985年同社代表取締役社長に就任、現在に至る。(社)日本舶用工業会・評議委員、神戸経済同友会・常任幹事、神戸ロータリークラブ・幹事を歴任。2008年より神戸慶應倶楽部会長。親子3代にわたり慶応義塾大学に学ぶ。