3月号
福祉のまちを目指して シリーズ The welfare city “KOBE”
「3.11」から「1.17」が学ぶこと
お話をうかがった方/村井 雅清さん(被災地NGO恊働センター代表)
―東日本大震災から一年です。
阪神・淡路大震災のとき、それまでのボランティア観が大きく変化しました。年間で137万人のボランティアが集まり、そのうちの約7割が初心者で「何かできることはないか」といって全国から集まってきました。今回、東日本大震災でその経験が生かされたかというと、私はほとんど生かされていなかったと思います。ひとつには、震災直後に「初心者のボランティアがむやみに行っても混乱を生むだけだ」という自粛論が広まってしまったからです。阪神のときは何も混乱は無かった、むしろ、多数のボランティアがいたおかげで、きめ細やかな対応ができたといえます。がれきの処理や、避難所のお手伝いはもちろん、ただそばにいてたわいのない話をしてくれるだけでいいと言う被災者も多数います。被災者が必要としていることは様々ですから、ボランティアは「何をするもの」と決まっているのではなく、多彩性、多様性が必要です。「自分は何ができるかを考える」ことが大切です。誰でも何かできるんです。
―被災地NGO恊働センターでは実際にどんな活動を。
これは阪神の震災後から行っている活動の一つですが、タオルで「まけないぞう」という製品を作る「被災者の生きがいづくり」支援があります。今もたくさんの人が参加し、また作り方を広めていますが、やはり物を作るといういきがいと、それによって少しでも収入を得るということは、前向きな気持ちにつながっていくようです。
それから「足湯隊」。これは避難所などに足湯を設け、そこで温まっていただくとともに、スタッフが被災者の方とお話しします。つらかったことや日々のことなど、話を聞いてもらうだけで心がほっとした、という方が多く、「心のケア」にもつながっています。またこの足湯でのお喋りは、被災者からの生の声として、のちの復興計画などに役立てられます。阪神の震災後、仮設住宅で被災者から寄せられた「つぶやき」が、その後『市民がつくる復興計画』という本にまとめられました。今回も東北の「足湯のつぶやき」は、まとめられて東大の支援ネットワークで分析してもらい、政府・行政に対する政策提言につなげていこうと今取り組んでいます。「市民の生の声が大事である」ということは、我々の活動で一貫してきた考えです。対面でアンケート用紙を持って意見を集めるとどうしても構えたものになってしまいますが、こういったつぶやきは本当の生の声が集められることが多いのです。「足湯隊」は、今回、神戸大学や神戸学院大学の学生たちを中心に活動がスタートしましたが、今では他府県の学生や東北の地元の学生も参加し、広まっています。この2つの活動はこれからも続けていきます。
―私たち一般市民は何ができるのでしょうか。
ひとつは「まけないぞう」を購入することで、被災者支援につながります。400円のうち100円が寄付されるので、わかりやすいと好評です。材料になるタオル(新品)の寄付も募集しています。
もうひとつは、手紙を出すなど「被災地を忘れていない」ということを発信することも大切かと思います。中でも「KOBEからの応援」というのは、同じ被災地として、東北の皆さんにとっても大きな励みになるようです。
先ごろ『岩手日報』が市民に「今後、ボランティアに何をしてほしいか」のアンケートをとったところ、第一に「心のケア」、第二に「経済活動の支援」という結果が掲載されていました。ボランティアを取り込んだ地域のビジネスも広がっていますから、今後はそういった要求も増えるのかもしれません。
先日、気仙沼でまちづくりに関わっている23歳の若者が、「年末からやっと住民の意見を集め始めたところなのに、行政の方ではすでに方向性が決定しているようだ」と、「神戸の人が17年間がんばってきたことが、こっちで活かせなかった」と言っていました。私はそれを聞いて、1・17を3・11に活かすのではなく、逆に、1・17は3・11から学ばなくてはいけないと思いました。我々は17年間何をしていたのか、そして今私たちは何ができるのか。ただそういった熱い想いの若者がいることは、非常に嬉しかったですね。今回の震災でも、高校生や大学生などの若者たちが多数ボランティアに参加していましたし、今も多彩な活動を続けています。
被災地NGO恊働センター
TEL.078-574-0701 (まけないぞう専用TEL.078-511-8698)
http://www.pure.ne.jp/~ngo/