9月号
草葉達也の神戸物語
ゲスト: 桂 文之助さん
(落語家)
神戸出身の落語家さんは何人かいらっしゃいますが、今一番頑張っていらっしゃるのが桂文之助さん。このたび三代目・桂文之助を襲名。お話を聞いてきました。
草葉 どちらのご出身ですか?
文之助 長田区です。ちょうど兵庫高校の辺りですね。
草葉 どんなお子さんでしたか?
文之助 あんまり活動的な子どもやなかったですねー、見ての通り(笑) 家からちょっと行くと会下山っていう公園がありまして、今は知りませんが当時はハゲ山で何もないところでしたが、あそこなんかはよく遊びに行きましたね。冬は凧揚げしたり、まだどこも地道でしたのでビー玉をしたり、メンコしたりね。
草葉 まぁごく普通の子どもさんですね(笑) でも兵庫高校御出身ということで、お勉強はかなり?
文之助 いえいえ、そんなことは(笑)
草葉 どちらかというと文学青年みたいな感じで。
文之助 そんなこともないです。少年野球なんかもやっていましたし。ただ私は昭和三十一年生まれでちょうどテレビ黎明期みたいな時代でしたから、ぼつぼつ各家庭にテレビが普及し始めた頃で、その頃は漫才落語の寄席や、松竹新喜劇、吉本新喜劇のような演芸番組が多くて、そういう番組は好きでよく見ていましたね。
草葉 私も一緒ですよ。こんなチャラチャラした格好していますが(笑) 落語や演芸好きで、新開地の松竹座にはよく通いましたよ。
文之助 松竹座はねー、私も行ってるんですけども、あんまり記憶に無くて、どちらかというとテレビやラジオの方がよく見てましたねー 逆にこの世界に入ってから、師匠について松竹座は行きました。もうその頃は新開地も寂れてましたけど。
草葉 昔は松竹座で正月の生放送なんかもありましたね。
文之助 ありましたね。
草葉 米朝師匠が大喜利の司会で、枝雀師匠が当時まだ小米で大喜利に出ていたのを観たことがあります。
文之助 そうですかー、そんな時代もありましたね。
草葉 何がきっかけで落語家に?
文之助 まぁー演芸が好きで、その中でも落語が好きでしたから、学校出たら落語家になろうという感じでなりました(笑)
草葉 なぜ枝雀師匠に入門されたのですか?
文之助 米朝師匠が好きでしたが、米朝師匠の所はもう何人も弟子がいて、うちの師匠はまだ少なかったですし、枝雀師匠の弟子になるということは、米朝師匠の孫弟子になるわけですから、米朝師匠にも教えてもらえるなーと。
草葉 (笑)
文之助 ある種入門は就職活動と思っていた部分もありましたが、うちの枝雀師匠はマクラが斬新であったのと勢いがあったので、子ども心に何か打たれるものがあって、それで入門しました。
草葉 今回襲名ということですが、もう文之助と呼ばれるのは慣れましたか?
文之助 ずっと雀松でしたから、電話に出ても『雀松です!』って言うてしまいますが、最近ようやくそれが取れてきました(笑)。
神戸の名門高校の一つである兵庫高校出身の文之助さん。お話しさせていただいても、端々に真面目さが伝ってきました。上方落語を守っていく一人ではないかと思いました。
桂文之助独演会
9月20日(土)14:00開演
【会場】新神戸オリエンタル劇場
【料金】S席 ¥3000/A席 ¥2000
【お問い合わせ】新神戸オリエンタル劇場
TEL.078-291-1100
桂 文之助(かつら ぶんのすけ)
1956(昭和31)年生まれ
1975(昭和50)年桂枝雀のもとに弟子入り。
南光、雀三郎につぐ三番弟子「雀松」として初舞台。気象予報士の資格を持つ。
くさば たつや
神戸生まれ。作家、エッセイスト。
日本ペンクラブ会員、日本演劇学会会員
神戸芸術文化会議会員、大阪大学文学部研究科
阪南大学国際コミュニケーション学部非常勤講師
ひょうご老舗会実行委員長