2015年
8月号
8月号
海文堂最後の店員がまとめた 『海の本屋のはなし−海文堂書店の記憶と記録』出版
一昨年、本の虫に惜しまれながら閉店した、元町3丁目の海文堂書店。その創業時からの歴史と、99年の歴史に幕を下ろすまでの顚末を、元書店員である平野義昌さんがまとめた『海の本屋のはなし』が苦楽堂から出版された。少ない資料から掘り起こされた創業時のことから、「われわれはよい書籍を出版しよう」という言葉を残した岡田一雄の人となり、ギャラリーを開設した島田誠さんの時代を振り返り、最後には閉店までの平野さんの日記を綴る。「やめんのん?」「さびしいなあ」などと、お客様から寄せられた言葉や、名物店員たちの仕事ぶりも。
出版を記念して、ギャラリー島田では、本に関するアートを集めた『本への偏愛』展が開かれた。「海文堂の店員たちは、本や、売り場の棚に対してのこだわりが強く、それは愛情というよりもっと深い『偏愛』というべきものでした。そんな書店がなぜここまで愛されたのか、という秘密が、この本には書かれています」と、島田さんは話す。
「書店の仲間たちや海文堂を愛してくださったお客様に読んでいただきたいのはもちろんですが、書店に限らず接客業、販売業の皆さんにもお読みいただければと思います」と平野さん。「と言っても、努力が足りず店を潰してしまった側の我々なのですが、私たちの仕事ぶりから、もう少しお客様とお話しをしてみようかなとか、明日からのお仕事のプラスになれば幸いです」と。
(1900円+税/全国の書店にて発売中)