2015年
8月号

デビュー作で直木賞候補 時代小説の新星!新作『人魚ノ肉』を語る 木下 昌輝氏 独占インタビュー

カテゴリ:文化・芸術・音楽

─前作『宇喜多の捨て嫁』は、デビュー作で直木賞最終候補という快挙でした。ご感想は。
木下 最初に聞いたときはちょっとびっくりしましたね。けれど、今は出版不況なので、ひそかに狙っていました(笑)。物語として面白いというのを、東野圭吾さんに言ってもらったのは嬉しかったですね。

─「もう一作みてみたい」という声もあったようで、今回の作品はずいぶん期待されていますね。
木下 『人魚ノ肉』の構想は直木賞候補に選ばれる前からありました。前作が宇喜多直家のことを書いたので、続編としてその息子の宇喜多秀家の話を書こうとも思ったのですが、読者の感想を見ていたら結構おどろおどろしい表現を気に入ってくれる人がいたのですよ。ですから「怖さ」を出した作品にしようかなと。そこで、新撰組とホラーを合わせてみました。新撰組は変な話が多いんですよ。作品にも書いていますけれど、介錯するのを失敗してから首が曲がってしまった人とか、左目が見えないのにその見えない側から攻められたらめちゃ強くて、見える方から攻められると弱いというわけのわからない浪士もいたりして(笑)。ホラーとの相性が良いのではないかと思ったのです。

─構想から物語に仕上げるまでにどのような苦労がありましたか。
木下 京都の文化を書くのが難しかったですね。もともと、新撰組を怪物に仕立てたら京都の文化を書けるのではないかと考えていたのです。京都の文化を普通に歴史小説に書いても面白くないんですよ。それをメインにしたら幕末のダイナミックな動きを書けないし。けれど、荒唐無稽なモンスターを入れたら面白く書けるのではないかと思って。

─モンスターというのは人魚のことですか。
木下 いえ、人魚の肉を食べたらみんなモンスターに変わってしまうという内容にしたんです。最初の話では坂本龍馬が人魚の肉を食べたという設定にしていますが、私の母親の出身も龍馬と同じ高知なんです。子どもの頃はよく高知の浜で魚や貝を獲って食べたりしていました。高知にはお遍路さんもよく来ますし、狗神様という変わった宗教もあるし、怖いし面白いところなんです。もしかしたら龍馬も子どもの頃魚や貝を食べていて、その中に人魚の肉があってもおかしくないのではと。また、高知にも八百比丘尼という不老不死の人魚の伝説があり、須崎という街に八百比丘尼の建てたという石塔が残っているんです。須崎は海援隊も船を着けているので、龍馬もその伝説は知っていたはずだし、接点があるのではと。

─新撰組ですので京都がメインだと思いますが、神戸や兵庫に関することは盛り込まれていますか。
木下 京都と兵庫は近いからか、浪士には兵庫県出身の人が多いですよね。「妖ノ眼」という短編は、先ほどお話しした片眼の浪士、平山五郎という人の話なんですけれど、彼は兵庫県、播磨の出身なんです。最後は故郷に帰ろうとするけれど…結末はぜひお読みください。あと「骸ノ切腹」で採り上げた河合耆三郎も兵庫県の人です。

─読者のみなさまにはどこに注目してもらいたいですか。
木下 今回も連作短編で、それぞれの話が繋がっています。まずは人魚の肉を食べた人がどういう怪物になるかというところですかね。あとは京都の文化を織り込んでいますので、そこもぜひ読んでほしいですね。

─『人魚ノ肉』の次の作品の構想はありますか。
木下 今書いているのは宮本武蔵の、敵から見た連作短編です。武蔵は兵庫県出身という説がありますね。あとは米沢彦八という上方落語の祖とよばれた人物の話を考えています。関西の文化を書いていけたらと思っています。

7月に発売された新刊『人魚ノ肉』(文藝春秋社:税別¥1,550)[左]と、直木賞候補に選ばれたデビュー作『宇喜多の捨て嫁』(文藝春秋社:税別¥1,700)[右]


木下 昌輝(きのした まさき)

1974年生まれ、奈良県出身。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞受賞。2014年に受賞作に書き下ろしを加えた『宇喜多の捨て嫁』でデビュー、同作が第152回直木賞候補となる。高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。旅行ペンクラブ会員。

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

〈2015年8月号〉
神戸の粋な店 アルポルト神戸
特集 ー扉 神戸グローバルスタイル
外国人も 暮らしやすい街・神戸 フリッツ・E・レオンハートさん
オフィスも住まいも、 作り込まない〝ラフ〟な空間が 好きです 星加 ルリコさん
家族一緒に過ごせる時間と空間を大切にしています MEMEさん
人にも真珠にも、神戸の山と海、自然の光がとてもいい チョウドリー・ケタンさん
外国人が必要とするものが揃っている キラン・S・セティさん
その美、その壮、実に名状べからず かつて、東洋のウォール街とよばれた「栄町」
カミネ HUBLOT FAIR
特集 ー扉 KOBE Tor Road
トアロードとは 北野と居留地を結ぶ緑の坂道
トアロードを語る トアロードに店舗を持つ意義 「婦人帽子 マキシン」
トアロードとともに
Queen of Hoot(クイーン オブ フート)
自己研鑽し、親睦を深め、 友情のエネルギーを 社会に役立てよう!
淡路島でマツダブランドを「体歓」! 神戸マツダ ファンフェスタ 2015
国際ロータリー第2680地区 神戸西ロータリークラブ 心の「四季節」便り
連載コラム 「第二のプレイボール」Vol.6
ようこそ、 榎忠(エノキチュウ)の世界へ ー 扉
高野山開創1200年特別企画展 「いのちの交響 ~空海の地で会う日・韓現代美術~…
戦争するのは、人間だけ
高野山開創1200年特別企画展
「エノチュウ」の作品に思うこと
団地共同組合神戸木工センター 伝統ある「神戸洋家具」の技術を伝えたい
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第五十二回
耳よりKOBE 日本・ハンガリー交流のより一層の充実に向けて 駐日ハンガリー大使…
海文堂最後の店員がまとめた 『海の本屋のはなし−海文堂書店の記憶と記録』出版
デビュー作で直木賞候補 時代小説の新星!新作『人魚ノ肉』を語る 木下 昌輝氏 独…
神戸のカクシボタン 第二十回
神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第68回
第十八回 兵庫ゆかりの伝説浮世絵
触媒のうた 54
神戸のバーめぐり KOBE OLD & NEW vol.9
[神戸百店会NEWS]ミラノ万博「日本館」の制帽をマキシンが制作