1月号
キュレーターが震災を語り継ぐ 1月17日よりスタート
「阪神・淡路大震災20年・語り継ぐこと/リレートーク」
1月17日より、阪神間の美術館など9施設が参加し、「阪神・淡路大震災20年・語り継ぐこと/リレートーク」を開催。震災を語り継ぐことを目的に、各館の企画展示だけでなく、各館の企画担当学芸員(=キュレーター)によるリレートークを実施する。企画を立ち上げ、運営するのは各施設の企画担当者「アート系女子」たちだ。
―今回の企画が生まれた背景は。
江上 今回の企画は、学芸員同士のつながりからスタートしました。私たちは仕事の上での協力や、個人的な意見交換など、従来の『館と館』『組織と組織』といった枠組みにとどまらない交流を行なっており、そのネットワークを活かし、自分たちにできることから、できる範囲でという思いから始まりました。
―テーマである「震災」は、やはり皆さんにとって大きなテーマですか。
江上 兵庫県南部は美術館、博物館、アートセンターなど文化施設が多い地域です。20年前の震災では、施設もそこで働く職員たちも被災し、その後の仕事の中でも私たちは震災と向き合ってこざるをえませんでした。この地域の文化施設にとり、「震災」はこれまでも、これからも考え続けねばならないテーマだとも言えます。阪神・淡路大震災から20年の節目に、それぞれの施設独自の視点での展示が重なり、共通するトピックをリレー形式のトークでつないではどうだろう、ということになりました。
とみさわ 現代アートやファッション、デザインの施設が参加されたことで、ジャンルの幅が広がったこともおもしろいですね。またキュレーターたちも、震災当時から仕事をしていた者、まだ中学生だった者、県外在住だった者など、立場は様々です。私たち自身も震災に向き合う時には迷い、悩んでいることも含めて語り継げれば、と。
―今回の、それぞれの施設でのトークテーマをご紹介ください。
松本 デザイン・クリエイティブセンター神戸でのトークは、震災直後から現在までのクリエイティブ分野の支援活動をリサーチしてまとめた「阪神・淡路大震災+クリエイティブ タイムライン マッピング プロジェクト」の紹介と、作家を招き当時を振り返る公開インタビューを行う予定です。
和田 神戸ファッション美術館では、「ファッションとアートの繋がり」と題して、震災以降のアートとファッションにおける取組みをマッピングプロジェクトと展示作品から辿り、表現や背景について探ります。
大槻 芦屋市立美術博物館のテーマは「ここから、これから/わたしたちの生活(くらし)」。震災を機に芦屋市立美術博物館が行った活動の内容を振り返りながら、南芦屋浜やHAT神戸などの復興住宅を例としてアートと衣食住について考えます。
小野 兵庫県立美術館では「救うこと、残すこと-『作品』と『思い』」というテーマで、芦屋市立美術博物館、兵庫県立近代美術館が関わった「文化財レスキュー」の活動を例に、被災作品や資料を救い次世代に残すことの意味を考えます。
宮本 BBプラザ美術館では、2000年に兵庫県立近代美術館で開催された「震災と美術-1・17から生まれたもの-」展を振り返りつつ、開催中の展覧会「震災から20年 震災 記憶 美術」の展示作品を前に、震災と表現について考えます。
田中 神戸ゆかりの美術館のトークは、「枠組みを超えた関係作り」がテーマです。震災後の記録を辿るとともに、地元の芸術・文化を普及するための文化施設同士の関係作りについて考えます。
高橋 C・A・P・でのトークは4月なので内容は未定ですが、1月には「震災後20年 神戸の音の記録展『あの時、聴いた音は』」と題し、〈音〉から神戸の街を見つめなおす展示やシンポジウムを開催。また4月にも、東日本大震災に関する展示を予定しています。
伊藤 神戸アートビレッジセンターでは5月に、周辺のまちあるきを企画しています。その時にトークも行う予定です。
東 明石市立文化博物館では、8館で実施されたトーク内容を踏まえ、文化施設が行ってきた震災支援・発信・継承を今一度見つめ、このリレーを締めくくります。
―会場となる館の担当者から担当者へと「伝えたいこと」を、対話形式でバトンリレーのようにつないでいく、今までにない企画。ぜひ多くの方々に、ご参加いただきたいですね。