2015年
1月号

神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第61回

カテゴリ:文化・芸術・音楽


剪画・文
とみさわかよの

特定非営利活動法人 国際音楽協会 理事長
張 文乃(ちょう ふみの)さん
 
異国の曲ながら、哀調を帯びた旋律にどこか懐かしさを感じる中国音楽。その普及に人生を捧げる、音楽家の張文乃さん。張さんはかつて難病で再起不能と宣告されましたが、奇跡的に回復し復帰を果たしたそうです。「“できないと言ってはだめ、懸命に向かっていくことが人生で一番大事”と言う母と、悪天候でも毎日登山を続け“一度決めたら何があってもやり遂げる”と言う父。そんな両親に育てられたから、病気に負けなかったのでしょう」とおっしゃる張さんに、お話をうかがいました。

―音楽の道に進まれたきっかけは?
 神戸中華同文学校時代、音楽の先生がオルガンを弾く姿がとても素敵で、そうなりたいと憧れまして。6歳の時に病気をした時、注射を嫌がる私に母が「好きなものを買ってあげるから」と言うので、オルガンを買ってもらいました。とにかく音楽が好きで、中学時代はハーモニカ部と合唱部に入り、中国の歌劇を公演して評判になりました。高校時代も合唱を続け、音楽大学へ進むつもりでした。

―音大では、声楽を専攻されたのですか?
 ところが入試直前に喉を痛め、ピアノ科を受験したところ合格して…。でもこれが幸いしましてね、歌の伴奏を頼まれてはいろいろな先生のところへ行き、発声の指導も十人十色なことがわかり、視野が広がりました。音大オーケストラのピアニストも務めましたし、本当に充実した学生時代でしたよ。

―そして卒業後、夢かなって母校で音楽を教えることになったのですね。
 お給料をはたいて楽器を買って鼓笛隊を創ったり、鳳蘭さんに指導を頼んでバトントワリングをやったり、型破りな先生だったと思います。でも授業は苦労の連続でした。小学校3年生から中学校3年生までをひとりで受け持つのですが、教科書が無い。当時は国交正常化前ですから、資料もありません。伝手で入手しても「数字譜」なので、これを五線譜に改めねばなりませんでした。最初の頃は、ガリ版で楽譜を刷り続けましたよ。その後日本の音楽教科書を見ながら、中国の音楽教科書を作りました。今も母校では、その教科書を改訂しながら使っています。

―その後も音楽による国際交流を推進するNPO法人を設立するなどして、中国の音楽を紹介する様々な活動に取り組んでこられました。
 国際音楽協会は、毎年6月に「中国音楽コンクール」、そして日本と中国で2年ごとに交互に開催する「中国音楽国際コンクール」を主催しています。「中国女声合唱曲集」「中国歌曲集第一集」「中国歌曲集第二集」などの楽譜も出版、コンサートも開催してきました。日本の方が歌えるように中国語のイントネーションと発音を付け、読み方のCDも添えました。中華同文時代の、楽譜作りの経験が生きましたね。歌曲集だけでなく、「中国鋼琴(ピアノ)曲選」(全6巻)も出版しています。

―「音楽による日中友好」は、お母様の願いでもあるとか。
 私の父は中国人、母は日本人です。母は私に「日本の事を知らないまま日本に居てはいけません、日本の所作を学んできなさい」と、日舞を習わせました。私の歌う中国歌曲を「きれいな曲!」と褒め「あなたは日本に中国の音楽を広めなさい」と言ってくれたのも母。それが私のライフワークになったのですから、母の存在は大きいです。

―神戸で、これからしたいことは何でしょう?
 そうですねえ、今していることをきちんとやって、中国の音楽が日本に根付いてくれれば、そしてこの活動を継いでくれる方が居られたら、とても嬉しいですね。日中友好と言っても、私のしてきたことは草の根の活動。日本の人たちに中国の音楽が広まればという、その思いが一番です。   (2014年11月29日取材)

病を乗り越え、今日も仲間と活動する張さん。小さなことにも感謝の心を忘れない、優しい笑顔が素敵です。

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。

〈2015年1月号〉
特集 ー 豊かな自然と住環境を 市民自ら守る街、芦屋を歩く
芦屋を歩く(2) 日本料理 ふる里
芦屋を歩く(3) 山海百味 一駛 (ひとし)
芦屋を歩く(4) 日本料理 あめ婦
芦屋を歩く(5) レストラン あしや竹園 (ホテル竹園芦屋 直営レストラン)
芦屋を歩く(6) PAN TIME (パン タイム)
芦屋を歩く(7) アンリ・シャルパンティエ 芦屋本店
芦屋を歩く(8) 芦屋 田中金盛堂
芦屋を歩く(9) Pantry パントリー芦屋店
芦屋を歩く(10) 芦屋神社
[対談]神戸の明るい未来をめざして
阪神・淡路大震災 20年に寄せるメッセージ 2015年1月17日 神戸から
キュレーターが震災を語り継ぐ 1月17日よりスタート
新連載コラム 「第二のプレイボール」Vol.1
芦屋と平田町 そのあゆみと価値
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祖父母との思い出を紡ぐ「芦屋の中の京都」平田町 《ギャラリー開雄》
“上等な”暮らしではなく、“幸せな”暮らしがある 《稲畑邸》
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