1月号

芦屋を歩く(8) 芦屋 田中金盛堂
卵・粉・砂糖だけを使い職人が焼く伝統の味「玉子せんべい」
大正13年、初代・田中金治さんが神戸市灘区で手焼きせんべいの「田中金盛堂」を創業した。昭和35年、二代目で次男の幸男さんが暖簾分けして大枡町に店を構えたのが現在の芦屋「田中金盛堂」。創業から数えて90年、芦屋で55年、昔ながらの製法にこだわり続け、地元はもちろん、全国から注文がくるほどの人気店だ。
二代目である父の背中を見て育った三代目・克志さんが店主として跡を継いだ。店舗の奥、ガラス張りの向こうの作業場で寡黙にせんべいを焼き続ける克志さんは、「集中していないと、微妙な火加減で焼き上がりにムラが出てしまいます」と職人の顔から普段の顔に戻り、ニッコリと話してくれた。
一枚一枚丹精込めて焼き上げられていく約20種類のせんべいが店内に並ぶ。創業以来の伝統の味「玉子せんべい」の原料は卵・粉・砂糖だけ。それ以外は何も使わない。中でも、卵の黄身だけを使って焼く「芦屋の四季」は薄くて軽い、贅沢な味。7種類全て手焼きする「吹き寄せ」、刻印がかわいい一口サイズの「だるませんべい」等々。オリジナル焼き印入りの玉子せんべいは、芦屋神社の焼き印を始め、地元の学校や団体の記念品、個人のお祝いの品にも対応している。

芦屋神社宮司の山西康司さんと、二代目・幸男さんの奥様・百合子さん、三代目・克志さんと奥様の直美さん

店内には手焼きせんべい、同じく手焼きの人気定番「ABCカステラ」のほか、あられや豆菓子、飴、珍味などが並ぶ

芦屋神社の玉子煎せんべいに使う焼き印型。「おせんべいは、お正月にお参りいただいた方にもお配りします」と山西宮司

「芦屋の四季」芦屋川の桜・松、会下山遺跡。姫路の職人さんの手による焼き印型は、創業直後から50年使い続けても擦り減ることはない。「楽しそうに作ってくれました。こんなきめ細かな仕事をしてくれる職人さんはもう居ませんね」と百合子さんは創業当時を振り返る

玉子せんべいを焼く三代目・克志さん。明るくて清潔感あふれる作業場


田中金盛堂
芦屋市大桝町7-5
TEL:0797-22-2573
営業:8:30-19:30
休業:第1・第3日曜日