7月号
神大病院の魅力はココだ!Vol.56
神戸大学医学部附属病院 放射線診断・IVR科 村上 卓道先生に聞きました。
診断をして治療の方針決定を担い、さらにIVRという治療も担っている放射線診断・IVR科。どんなことが行われているのでしょうか?村上卓道先生に伺いました。
―放射線診断・IVR科とは?
診断には、聴診・打診・触診や心電図検査などの理学的検査、採血して調べる血液生化学検査、そして画像診断という3本柱があります。また治療には、外科的治療、内科的治療、精神療法、放射線治療、IVRという5本柱があります。診断3本のうちの画像診断と、治療5本のうちのIVRを担っているのが放射線診断・IVR科です。
―神戸大学病院で画像診断の対象となる患者さんは?
主に、院内の外来・入院患者さんを対象に、中枢神経、胸部、循環器、腹部、骨盤部、軟骨部、小児、核医学など、幅広い領域の画像診断に応じています。また、神大病院は特定機能病院ですから、地域の医療機関では対応が難しい高度な医療や専門的な診断を必要とする患者さんも多く受け入れています。かかりつけ医や他院の先生からの紹介状を持って受診される方や、院内の各診療科から依頼を受け、画像診断を含めた先述の3つの診断方法でさらに詳しく検査をして診断が決まれば、次は5つの治療方法の中からどういう治療を、どう組み合わせて、どのような順番で進めるのかなど、専門医が集まって相談します。
―画像診断とはどういうものですか。
放射線を使う方法として、レントゲンなどのX線検査、体を輪切りのようにして詳しく見るCT、体内に微量の放射性薬剤を入れてその分布を体外カメラで映し出す核医学検査(SPECT・PET)があります。磁気を使って詳しく調べるMRI、体表から観察する超音波(エコー)は放射線を使わない検査です。症状の原因検索や、疾患の確定診断・重症度評価、治療方針決定・経過観察を主な目的として、ほぼすべての患者さん対象に画像診断が行われます。
―検査方法はどのように使い分けるのですか。
たとえば、骨折や肺炎には放射線を使うX線やCTが用いられますが、放射線は骨のカルシウムに吸収されやすく白く映ってしまい、骨の中に隠れているものの情報量は減ります。一方、磁気は骨のカルシウム影響を受けず、骨の中の組織までたくさんの情報が得られるので、骨に囲まれた脳や脊椎・関節、骨盤内にはMRIが使われます。心臓や腹部の一部には超音波が第一段階として使われますが、骨や空気などのガスで超音波がさえぎられたりするので、骨に囲まれている脳や空気が多い肺などには不向きです。がんや臓器の形態や広がりなどの解剖学的評価にはCTやMRIが有用であり、それらの機能評価には核医学検査が有用です。それぞれに長所短所があり、病気の種類や調べたい臓器に応じて主治医および放射線科専門医によって最も適した方法が選択されます。
―核医学検査とはどういうものですか。
微量の放射線を出す薬(ラジオアイソトープ)を注射・内服・吸入などで体内に入れ、その薬が臓器や病変に集まる様子を、体の外から各部位の放射線を測定して画像にする検査です。CTやMRIが主に臓器や病変の形態を見るのに対し、核医学検査は臓器の働きや病気の活動性を調べるのが得意です。ラジオアイソトープの取り込みは、各臓器の機能などに依存するので、例えば肝臓や腎臓、心臓などで機能しなくなった部分には取り込まれず、その部分の画像が抜けてしまいます。中枢神経、呼吸器、消化器、泌尿生殖器、循環器、骨・関節、内分泌など、さまざまな臓器の機能評価に用いられ、CTやMRIなど他の画像検査と組み合わせながら総合的に診断しています。神戸大学病院では国内導入施設が限られるPET/MRI装置が稼働しています。これは世界的にも導入台数の少ない珍しい装置で、PETによる機能の情報とMRIによる精細な形態の情報を一度に重ね合わせて評価でき、より詳しい診断に役立っています。
―どんな患者さんが核医学検査の対象になるのですか。
たとえば、がんの有無や広がりを調べたい、また治療効果や再発の評価が必要な患者さん、心臓の血流や心筋の状態を詳しく知りたい、脳血流や認知症の評価が必要、骨転移や骨の異常を調べたい患者さんなどが対象です。さらに核医学は検査だけでなく治療(RI治療)にも応用されています。検査時よりも多くの放射線を出す薬を病変部に取り込ませ、病変部を放射線で治療します。神戸大学病院では神経内分泌腫瘍や前立腺がんの一部の患者さんに対してRI治療を行い、病気の状態に応じて体の内側から病変を狙う治療を提供しています。
―IVRとはどのような治療法ですか。
画像診断の装置を使って低侵襲(体に優しい)治療をするのがIVR(インターベーション・ラジオロジー)です。超音波やX線透視をガイドにして、カテーテルや針などを、病変部など体内の目的の場所に安全な経路で送り込み、低侵襲に治療をします。血管性IVRとしては、特殊な風船のついたカテーテルを血管が細くなったところに送り込んで膨らませて広げる血管形成術や、血管が細くなったり太くなったり、もろくなったりしている部分に血管の内側から金属製の裏打ちを留置するステント留置術、出血している血管にカテーテルで塞栓物質を送り込んで出血を止める塞栓術などがあります。
―主に血管に関わる手術ということですか。
鑑別診断のためなどで、特殊な針を病変に刺して組織を採取する生検、体内にたまった膿などの液体に管を挿入して吸引・排出するドレナージ、先端から弱い電磁波などを出して組織を焼いてしまえる針を腫瘍に刺して焼灼するラジオ波焼灼術などの非血管性IVRの手技も行っています。
―すべてのIVRを放射線診断・IVR科で担っているのですか。
広義では心臓や脳の血管内治療もIVRに含まれますが、循環器内科や脳外科で心臓インターベーション、脳血管内手術などという呼称で行われています。IVR科では心臓や脳(外頸動脈領域を除く)以外の領域を担っています。その守備範囲は広く、熟練の技術を要する手技です。すべての患者さんにIVR治療が適応になるわけではありません。各診療科とのカンファレンスを通じて適応を決め、患者さんの意向も聞きながら治療方針を決定しています。
エビデンスに基づく医療が求められる現代、きちんとした画像診断ができているかが、その後の治療の質に大きく関わってきます。医療における放射線科専門医の役割と責任は今後ますます重要なものになると考えています。

村上先生にしつもん
Q.村上先生はなぜ医学を志されたのですか。
A.高校生のころは特に何になろうなど考えず、父親と同じ工学部に行こうかなと思っていました。受験のために来てもらった家庭教師の先生から勉強というよりは、勉強の仕方を教えられ、すると成績がどんどん上がり、担任の先生からは医学部受験を勧められ、何も分からないままに医学部に進学することになりました。自慢できる話ではないですが、今となっては、人のためになり、やりがいのある仕事に就けるように促してくれた先生には感謝しています。
Q.放射線医学のどのようなところに魅力を感じ、専門にされたのですか。
A.私が学生のころ、アメリカでは放射線科専門医は〝doctor of doctor〟と言われ、医者をバックアップする存在と聞きました。当時、日本の放射線医学はアメリカにかなり遅れをとっていましたが、いずれは追いつくだろうと思ったのが専門にした理由です。それが今、現実となり、忙しく、充実した日々を送っています。
Q.日頃、患者さんと接するにあたって心掛けておられることは?
A.患者さんにとって最善の診断、治療が選択できるように、コミュニケーションをしっかり取り、押し付けるのではなく、納得してもらえるよう心掛けています。
Q.学生さんや後進の先生方と接するにあたって心掛けておられることは?
A.常に患者さんの気持ちになること。他科の先生方との研究やいろんなやり取りにおいては、あなたが8割あげたとき、相手は五分五分と思っている。あなたが五分五分と思っているとき相手は8割とられたと思っている。そういう気持ちでいるようにと伝えています。
Q.ご自身の健康法、ストレス解消法は?
A.忙しくて寝不足、不摂生の塊というのが正直なところ。休日は十分な睡眠をとればいいものを、早朝からゴルフに出かけ、筋トレにも励んでいます。これがストレス解消になっているので、健康のためにはいいのかもしれませんね。












