6月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第176回
宝塚医療福祉市民フォーラム
「これからの医療・介護はどうなるか!」
について
─宝塚医療福祉市民フォーラムとはどのような催しですか。
安本 医療や介護などについて市民のみなさまとともに考えるフォーラムです。宝塚市医師会は主催者の宝塚市医療推進協議会の一員として、フォーラムの運営に深く関わっています。
─2025年度はいつどこで開催しましたか。
安本 今回で第13回となりました宝塚医療福祉市民フォーラムは、2026年2月7日に宝塚ホテル「琥珀」の間で開催しました。定員を上回る来場申込があり、当日は230名ほどが来られてほぼ満席でした。多くの市民のみなさまにご来場いただき感謝いたします。
─今回のテーマは何でしたか。
安本 「これからの医療・介護はどうなるか!」をテーマに据え、昨年4月に就任した森臨太郎宝塚市長を招いて講演していただきました。実は、森市長に講師をお願いしようと提案したのは私なんです。森市長はもともと小児科の医師で、国内のほかオーストラリアやネパールで医療に従事した後、英国国立医療技術評価機構やWHOなどで保健医療や福祉、少子高齢化などの政策に関わられた経歴をお持ちなので、実際に経験されたことや幅広い見聞から海外の事情などのお話が聴けるのではないかと思い、講師を依頼しました。
─講演はどのようなテーマで、どのような内容でしたか。
安本 「宝塚市における医療・介護福祉行政の展望」を演題にお話しいただきました。まずはご自身の経歴と、これまで日本をはじめオーストラリア、イギリス、バングラデシュ、モンゴル、タイ、ブータンなど数十の国や地域の医療政策に関わってきたことなどを紹介されました。その上でまず、医師としてのオーストラリアやネパールでの経験を振り返られ、制度や文化が医療と深く結びついていることを肌感覚で感じ、人口密度が低くても合理的に医療提供体制が構築できることや、医療的介入を最小限に抑えつつ効率的・効果的な医療提供ができることを学んだと述べられました。
─海外の保健医療政策については、どんなお話がありましたか。
安本 英国では国立医療技術評価機構でリサーチフェローとして活動された経験から、治療より予防の方がはるかに費用対効果が高いということを学ばれたそうです。発展途上国については、WHOの任務などで現状を目の当たりにされたそうで、バングラデシュでは日常的な賄賂などで政治や行政に不信感がありそれが医療や社会の悪化を招いているというお話がありました。また、医療を担う人材が先進国へ流れていき、国内では人材不足といったいびつな構造も、現地でないとわからないでしょうね。一方、モンゴルでは広く浅い保健レベルでも効率よく保健指標を高められているそうです。タイやブータンでは急速に少子高齢化が進んでいるとのことで、少子化対策が効果的ではないことを実感されたと話されました。海外、特に発展途上国の医療や福祉の状況を知ることができ、とても興味深かったですね。
─日本の医療についてはどのようなお話がありましたか。
安本 さまざまなデータを示し、世界的に見ても非常に優秀な医療提供体制であるとのことでした。一方で、急激な少子高齢化により、医療費などの社会保障費が右肩上がりだと指摘されました。
─そのような状況の中での社会保障のあり方について、何か言及はありましたか。
安本 高齢者ではない人が高齢者を支えるという高齢者人口指数の視点よりも、健康な人が健康ではない人々を支えるという依存人口指数の考え方が鍵になるということでした。日本は高齢者人口指数が約0.5、つまり現役世代が1人あたり0.5人の高齢者を支えており、これはアメリカのほぼ倍の数値ですが、国民の健康度で調整した依存人口指数は約0.8人で、アメリカとほぼ同じ値になるそうです。ゆえに、若年層への教育投資による社会全体の貯蓄や労働生産性の向上や、ジェンダー・家族支援施策および柔軟な働き方による出生率の緩やかな変化と働く女性の増加に加えて、生涯を通じた健康増進施策によって健康寿命の延伸を目指しつつ、柔軟な勤務体制で高齢者が元気に活躍できる社会を構築することも、高齢化社会の経済的持続性のための戦略として有効ではないかと提言されました。
─宝塚市の医療や介護、福祉政策についてはどのように展望されましたか。
安本 社会保障費の適正化を図り持続可能性を担保すること、市立病院をはじめとする医療提供体制の最適化、病気を治療し弱者を救済する古典的な福祉から病気を予防し弱者をつくらない新しい福祉への転換の3つをポイントとして掲げられました。特に宝塚市では市立病院の新病院の整備事業が進行中ということもあり、この新病院を中心として市の公的な医療機関を包括的に連携させて経営効率を高めるとともに、医療・福祉・介護・保健の連携も強化する「たからづかモデル」の構築に意欲を見せておられました。
─来場者の反応はいかがでしたか。
安本 講演についてはお話がわかりやすかった、もっとお話を聞きたかったという声があり、とても好評でしたね。来場者のみなさまは市立病院のあり方や新病院の整備について特に関心が高く、質疑応答で時間いっぱいまで質問が相次ぎ、フォーラムの終了後にも市長が別室でていねいに答えていらっしゃいました。
─次回の宝塚市民健康特別講演会はいつですか。
安本 日程やテーマは現在調整・検討中ですが、決まり次第、宝塚市医師会ホームページなどでお知らせしますので、ぜひご来場ください。

「これからの医療・介護はどうなるか!」をテーマに据え、昨年4月に就任した森臨太郎宝塚市長を招いて講演。森市長はもともと小児科の医師で、世界数十の国や地域の医療政策に関わってきた経歴をもつ

講演では、「宝塚市における医療・介護福祉行政の展望」を演題に講演。急激な少子高齢化により医療費などの社会保障費が右肩上がりの社会状況の中で、高齢化社会の経済的持続性のための有効戦略について提言をおこなった森市長

制度や文化が医療と深く結びついていることを肌感覚で感じ、人口密度が低くても合理的に医療提供体制が構築できることや、医療的介入を最小限に抑えつつ効率的・効果的な医療提供ができることを学んだと述べられた












